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あの頃は「お月様」って言えなかったよね

「みて、なっち、ほらほら、ここからまんまるいお月様がみえるよ!」

「…あ、おちまー!おちまー!」

2歳をまもなく迎える姪っ子と、十五夜の日にそんな会話をしたことを、7年経った今でも覚えている。

お月様のことを「おちまー」と言って、窓から見える月をチラチラ覗いていた。

わたしが夕食時に言ったもんだから、周りから「よそ見しないで食べようね〜」と促されてしまっていたね。

(あぁごめんなっち、余計なことしちゃったな)
て少し落ち込んだけど、月の見えない方角にお供え物して、暮れた空に手を合わせて、
「つきみえないねー」
て言い合ったから、食卓のわたしの位置から丁度見えた月をついつい見せたくなっちゃった。

満月になる前の煌々としたお月様。

まんまるい顔して、まんまるい目で、
「おちまー…おちまー…」と呟きながら見ていた姿、わたしは十五夜が来る度思い出すよ。


今年9つになる彼女には、もうそんな記憶はないだろう。
もちろん、もうお月様のことを「おちまー」なんて言わない。
可愛い盛りの言葉って、なんて愛らしいんだろう。
無理なのに、(ずっとこのままでいてほしいな)て当時思っていた。


おとなのわたしだけが覚えている、しあわせな思い出。

しょうがないと分かっていても、
ちょっとだけ、寂しいね。


ことし東京から月は見えたかな。
それとも月より団子かな。





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