触法高齢者の地域とのつながりを考える(その2)

前回の(その1)では、過去に殺人の罪を犯したAさんの事例を紹介しました。

Aさんのように、家族や地域との縁を断ち切って生活する意思を持った方だと、地域での支援ネットワーク構築は難しかったです。

主治医は総合病院の医師だったため、支援者は私とサービス事業所、そして保護司·民生委員の4人でした。

今回は、地域包括支援センター職員として地域住民と関わってきた経験から、地域住民側の思いを紹介したいと思います。

ただ、あくまでも私が担当していた地域での話であり、他の地区での支援や取り組みを否定するつもりはありません。

私の印象では、地域住民が自然に声かけや見守りをしてくれる要因は、

①支援(見守りを含む)を受ける高齢者が長年その地域で暮らし、町内会などで役職を担い、地域に貢献してきた人。

②役職を担ったことはなくても、近所付き合いを大切にして、日頃から近所の方々と声をかけあっていた人。

このどちらかに当てはまる方であれば、何か生活に困ったときには近所の方々は、

「元気にしてる?」

「何か困ったことがあったら言ってよ」

など、声をかけ合うことが多いです。

反対に、
①他の地域から転居して、間もない方。

②長年同じ町内に住んでいても、町内会に入っていない。また、入っていても活動にまったく参加せず近所付き合いもしていない。

このような方の場合、近所の方々の支援はあまり期待できないと思います。

私たち専門職の支援であれば対象者を選びませんが、地域住民は「それまでの近所付き合いの延長線」と考えられます。

「なんで町内会に入ってない人を助けんといかんのか?」

「高齢者の支援は行政や専門職の役割だろう。町内会はボランティアみたいなもんで報酬も出ないのに」

と、何回同じようなことを言われたか…。

今から高齢期を迎える方々には、

「10~20年後のことを考えて、今から地域の活動や近所付き合いをしましょう」

と呼びかけてきました。

何かあったら、すぐに地域包括支援センターに相談を!

という認識が広がることは大切ですが、支援の内容をすべて介護保険サービスで決めてしまうことで、それまでの近所付き合いを断ち切ってしまう可能性もあります。

週1日集会所での集まりに参加していた曜日を、デイサービスの利用日にしてしまっていた…というのは、よく聞く話ですね😑

そして、町内会の役員さんや地域住民の方々にしか気づけないこと。

「最近、姿を見かけない」

「前までしっかりしてたのに、最近は同じことを言うようになった」

など、早期発見してもらい、

「地域包括支援センターに相談してみようや」

と勧めてもらえれば十分です、と伝えてきました。

「この人と仲良くしなさい」

とは、法律や制度で決められるものではありません。

仮に「触法高齢者差別禁止法」のような法律ができても、差別や偏見はなくなることはないでしょう。

「犯罪を犯した人も社会復帰すべき」

というスローガンには賛成でも、

「あなたの住む町内に社会復帰のための施設を建てます」

と言われれば、反対運動が起きるのが現実。

小学校からの教育? 中学校からの教育?

高校生がボランティア活動で関わる機会をつくる?

何から取り組むべきなのかはわかりません。

「地域共生社会」という言葉だけは広がってますが、現実的には自分たちが住んでいる地域にどんな人たちが住んでいるのかも知らない。見えない。

知った方がいいのか、見えるようにした方がいいのか…

ホームレスが大学生に襲われて亡くなられる事件がありました。

地域との関わりを断って生活したい。

そっとしておいてほしい。

Aさんが思っている背景には、このような事件も関係しているのかもしれないと感じました。

まとまりのない長文になりましたが、ここで終わりたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。