【パワポ研の決算資料探訪29】ベイカレント社の決算説明資料は、コンサル風?
様々なパワーポイント資料について解説するこのシリーズ。
毎回大変好評をいただけておりまして、おかげざまでシリーズを重ねております(好評だった初回Goodpatch様の記事は以下)。
今回も見どころあるパワーポイント資料について紹介させていただきます。
対象とするのは、ベイカレント社。気鋭のコンサルティングファームです。
それでは早速見ていきましょう。
表紙
自社ロゴの形に写真を「抜いた」画像を配置。それ以外は最低限の情報を記載しています。というより、他社よりも情報が少し少ないですね。例えば他社の例では、証券コード、上場している市場、会社の正式名称(この場合では、株式会社ベイカレント・コンサルティング)などは概ね記載されています。そのため、かなり情報を削ぎ落した表紙と言えます。
AGENDA
目次ですね。表紙で利用した写真の元となる画像を利用しています。たくさんの写真を用意する必要がないため、別のページで形を変えて写真を使いまわすのは、お手軽な方法と言えるでしょう。背景があるため若干文字の読みづらさはありますが、白色の文字を使っているので読むことは可能です。
上期ハイライト
ワードスライドです。凝った作りにしようと思えばいかようにも装飾が施せますが、「■」と太字下線だけで、他は一つのテキストボックスに入れ込んでしまっています。こえでも言いたいことは十分に伝わるので問題ありません。
箇条書きで補足事項を字下げして行頭の記号を変える(入社数……の一行)のは、これはコンサルっぽい仕草だと思いました。MECEに拘るとこうなります。
業績サマリー
非常にシンプル。タイトルと表……というよりももっとシンプルなものが並んでいるだけです。でも言いたいことは「増収増益」とパッと見て分かるのでこれで問題ないでしょう。「百万円」という単位が小さく書かれているのも、見やすさのポイントですね。いわゆる「引き算」の美しさです。
業績概要
ほぼエクセルベタ貼りの表です。これも労少なくして、さりとて見づらいわけでは決してないので、効率的な一枚です。言いたいことは下部に少し小さい文字で書いてあります。コンサルっぽいスライドですと、上部にメッセージが書いてあることが多いので、(前のページに引き続き)コンサルっぽいスライドではないように見えます。
プロジェクト紹介1
少しコンサルっぽいスライドですね。
コンサルっぽいと感じた理由は、「上部にタイトルとメッセージがある」「左中右と3ブロックに分かれている」「MECEな箇条書き」「(なくても話が成立する)イメージ画像」などでしょうか。いずれも必須用途ではないですが、いわゆる構造化するためには、便利なアイテムではあります。
プロジェクト紹介2
これも同様に、上記で説明したような要素が多く見られるため、コンサルっぽい事例スライドになります。事例スライドとは、何かを説明するためにその例を引用することで、その説明の補足とするスライドです。
プロジェクト紹介まとめ
上記2枚のスライドは、このスライドのための事例だったわけですね。
このスライドは「紹介しまーす」というスライドなので、メッセージはあるとすれば「いろんなBIGなプロジェクトやってまーす。順調でーす」ということになりますが、それを直接書くとちょっと押しつけがましいので書いていないのかもしれません。
株主還元
ここは、メッセージ≒ボディということで、メッセージを書いていないスライドと思われます。あえてメッセージを考えるとすれば、「株主還元もがんばります!」ということになりますが、上のスライドと同様そういうことを書かない文化なのかもしれませんね。
右下の写真(の一部)は、少し寂しいスライドへのアクセントです。負担にならなければ、こういうものはあってもよいですね。
成長戦略の基盤
もっと読みやすいスライドにすることはできると思いますが、労力を省いた結果こうなったのでしょう。吹き出しというのは大変便利なオブジェクトですが、矢印が長すぎたりすると、少し工夫をしないと不格好になることもあります。例えば、吹き出しの尖った部分と文字の部分で別のオブジェクトとし、尖った部分の角度をキリのよいもの(45度とか30度とか)とするなど。
もっとも、そんなことをせずとも機能的には何の問題もありません。
人数増加状況
このスライドは、個人的にはメッセージがあってもよいかと思いますがいかがでしょうか。スペースの余裕もあるので、例えば「引き続き人員数を増やし、扱える案件を増やす」など。無論、「人数が増えたからなんなん?」と尋ねる人はいないと思いますので、あったほうが親切かもしれない、という程度ですが。
中期経営計画の進行状況
このスライドも、メッセージがあると良いですね。少し文字が多いのでどこを見ればよいのか一瞬とまどうかもしれません。メッセージを付けるならば「種々の施策により、売上・EBITDAの達成に大きく近づく」として、数値のところを赤枠などでハイライトすれば、労少なくして見やすくなるかもしれません。もっとも、作者には別の意図があったかと思いますので、こうしたアウトプットとしているのでしょう。例えば、あまり大体的に「かなりいい感じです!!!」と(結果は出ているのにもかかわらず)言いたくないタイミングというのは往々にしてあるものです。
プロボノプログラム
このスライドのように、アピールしても問題ないと作成者が判断すれば、メッセージが強く書いてあります。また、このスライドは縦軸と横軸があるボックスになっているので、コンサルっぽい整理の仕方のように見えます。
まとめ
総じて言えば、世間の人がイメージするような「コンサルの人っぽい」スライド」と、そうでないスライドが入り混じっていた資料でした。最小限の労力で、うまく言いたいことを伝えている資料でしたね。
コンサルというのはもっと気合の入ったパワポを常に作り続ける……と世間の方は思っているでしょうが、それは違います。コンサルの価値というのは、お客さんにどれだけの(良い)インパクトを与えたかで決まります。そのため、別段パワーポイントが必要以上に綺麗である必要はないですし、ましては決算説明資料というクライアント向けではない資料は、必要下限の労力で、伝わりさえすればOKとも言えます。そういう労力という資源投入判断の結果なのかと思えるような、そんな資料でした。
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