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決算説明会資料を集めて「パワポ採点ランキング」を作ってみた(機械業界編)

みなさん、こんにちは。
資料デザインのリサーチや分析に取り組むパワーポイントのスペシャリスト、パワポ研です。

今日は「上場企業の決算説明会資料として公開されているパワーポイントを、パワポ研独自の観点でスコア化し、分析してみた」シリーズ第四弾です。今回の調査では、日本の機械業界の東証一部上場企業のうち、「TOPIX1000」にノミネートされている28社を対象としています。

各会社によってスライドの枚数、レイアウト、コーポレートカラーなどがバラバラなので、パワポのデザインや内容に関する採点基準を作ったうえで点数を付与しています。

第一弾(時価総額TOP20)、第二弾(鉄鋼・非鉄)、第三弾(化学)の採点記事はこちら。

それでは、早速見ていきましょう。

1位 栗田工業 【73.5点】

キャプチャ

栗田工業社は、各スライドの完成度が高く総合的に減点が少ない資料となっています。特にイメージ画像の使い方が上手く、あくまでメッセージを伝える手助けにとどまっている点が高評価のポイントでした。では具体的に見ていきましょう。

■シンプルだがメリハリのある表紙

画像41

栗田工業社は、水処理薬品事業などを手掛け、産業と生活の基盤に深く根付いたサービスを提供しています。戦後の創業時は、大型船舶の汽缶技術を活用したボイラ薬品の販売から始まり、ボイラの洗浄方法やその技術を生かした土壌浄化事業を行い、業績を伸ばしてきた企業と言えます。表紙は、文字サイズにメリハリがあり、レイアウトに関しても均衡のとれたスライドになっています。

まとまりはあるが、内容をより明瞭にできるサマリスライド

サマリ

サマリはスライド中心に表を大きく配置し、下側にメッセージを置く構成になっています。この構成は頻繁に目にしますが、デメリットとして「メッセージが一見注釈のように見えてしまう」という点があげられます。また、文字サイズも比較的小さく設定されているので、視認性にも少し問題があります。表だけでも内容は伝わりますが、メッセージのサイズを上げてスライド上部に記載すると、より丁寧なスライドになると言えるでしょう。

■配色は綺麗だが「メッセージ」が欲しいグラフスライド

グラフ

事業利益の増減要因を示す滝グラフを一面に配置したスライドです。配色は青とオレンジの対比が非常に明快で、伝わりやすくなっています。適度に余白もあり、レイアウトとしては高得点と言えます。一方で、タイトル部とグラフの間に「メッセージ」が一言でもあれば、栗田工業側として何をどのように評価しているのかというポイントが表現できて、より株主への説明として完成度の高いスライドになるのではないでしょうか。もちろん、決算説明会の口頭説明で、補足するという前提も十分に考えられますが・・・。

■表そのものは見やすいが、ポイントを明確にしたい表スライド

表テキスト

表そのものは、配色やテキストサイズを含めて非常に見やすいのですが、スライド右部の説明に「メッセージ」と「注釈」が混同されており、ポイントが不明瞭になっています。太字や文字色を変えるなどの工夫を取り入れて、ポイントを絞ったほうが読み手としては、メッセージを受け取りやすい構成になるでしょう。

2020年3月期決算説明会資料より引用

2位 DMG森精機 【72.5点】

キャプチャ③

DMG森精機社は、「レイアウト」以外の項目は非常に高得点となっています。レイアウトに関して、大きく影響をしているのは「余白の広さ」でした。どのスライドも配色やオブジェクトの質は高いのですが、余白が狭く、窮屈な印象を与えるスライドが多かったです。それでは、具体的に見ていきたいと思います。

■少し味気のない表紙スライド

画像33

DMG森精機社は、多業種にわたるメーカーに製造用機械の販売、自動化ソリューションを提供している企業です。航空産業や宇宙産業などの高い精度の求められる製品の製造を幅広くサポートしていると言えます。表紙に関しては、そこまでこだわらずに情報を伝えるべきものと割り切って作成されております。

■余白は無いが、内容はまとまっているサマリスライド

サマリ

スライド上部に実績を記載し、その実績に基づいた計画値がスライド下部に記載されています。内容はポイントが明確になっており、上手くまとまっていると言えます。一方で、余白がほとんどないため、どうしても圧迫感が強い印象を受けてしまいます。

■対比の明確なグラフスライド

グラフ

配色に関して、灰色を上手く活用しており、メリハリの利いた見栄えの良いスライドになっています。スライド全体としては、下記2点が改善点として挙げられるでしょう。

・タイトル部とグラフの間にメッセージが欲しい
・営業利益率は折れ線グラフで表現された方が、推移を確認できて読み手には優しい

ポイントは、やはり「何を伝えたいか」という点に尽きると思います。このスライドで考えると、売上・営業利益が前年比で減少している原因等を記載すると非常に高評価なスライドになるのではないでしょうか。

■他社に比べて圧倒的に質の高いイメージスライド

イメージ

画像イメージの質や使用方法に関しては、今まで多くの決算書を見てきた中でトップレベルではないでしょうか。どんな機械であるのかを知らない人にとっても、それを調べてみたくなるような画像になっていると思います。画像の質が高いことが企業のブランドイメージ向上の効果に資するケースもあり、画像の重要性を再認識したスライドでした。

2019年12月期決算説明会資料より引用

3位 SANKYO 【71.0点】

キャプチャ②

SANKYO社は、落ち着いた配色から配色項目とグラフ項目で高得点となっています。一方で、注釈やフッターなど細かな点での減点がありました。全体として、完成度の高いスライドが多かったので、配色やレイアウトなど参考になる点は多いと思います。

■メリハリのある表紙スライド

画像37

パチンコ・パチスロメーカー大手のSANKYO社の表紙は、シンプルな配色ながら、各テキストのジャンプ率を意識することで視認性を向上させた、非常に完成度の高いスライドだと言えます。

■文字サイズは小さめだが、読みやすいサマリスライド

サマリ

こちらのサマリスライドは、端的に決算のポイントが列挙されており、業績予測に関しては、文字色を変えることで、他の文章を読まずとも内容をくみ取ることのできる構成になっています。見出しの白抜き文字の使い方や英語のフォントサイズなど、メリハリを出すための工夫がなされており、参考にすべきスライドだと言えます。

■メッセージも見やすいグラフスライド

グラフ

グラフスライドもシンプルな構成で、「メッセージ」が明確になっており好感の持てるスライドです。他のスライドとの兼ね合いもありますが、スライド右部の空白は少し大きすぎる印象を受けます。パチンコ市場が減少してきている背景などがあれば、より読み手としては納得感のあるスライドになるでしょう。

■配色、構成ともに完成度の高い表スライド

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表スライドも白と青の2色の組み合わせで非常に完成度が高いと言えます。表スライドはどうしても枠線の数が増えるので、圧迫感が大きくなる傾向にありますが、このように色の違いだけでセルを表現することで、全体としてスッキリした印象を与えることに成功しています。

2020年3月期決算説明会資料より引用


◆採点シート

4位 クボタ 【67.5点】

採点シート

2019年12月期決算説明会資料より引用

4位 三菱重工業 【67.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

6位 セガサミーホールディングス 【66.5点】

採点シート

2020年3月期決算プレゼンテーションより引用

6位 日本精工【66.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

6位 日本製鋼所【66.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

9位 住友重機械工業【66.0点】

採点シート

2019年度決算説明資料より引用

9位 日立建機【66.0点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

11位 IHI【65.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

12位 荏原製作所【65.0点】

キャプチャ③

2019年12月期決算説明会資料より引用

13位 グローリー【64.0点】

採点シート

2019年3月期第二四半期決算説明会資料より引用

14位 オーエスジー【63.5点】

キャプチャ③

2019年11月期決算説明会資料より引用

15位 タダノ【62.5点】

キャプチャ③

2019年度決算説明資料より引用

16位 ナブテスコ【62.0点】

キャプチャ③

2019年12月期決算説明会資料より引用

17位 ディスコ【59.5点】

キャプチャ③

2019年度決算説明会資料より引用

18位 THK【58.5点】

採点シート

2019年12月期決算説明会資料より引用

19位 NTN【57.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

20位 三浦工業【54.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

21位 ジェイテクト【54.0点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

22位 ダイキン工業【53.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

23位 小松製作所【52.0点】

採点シート

2020年3月期決算プレゼンテーションより引用

24位 不二越【50.5点】

採点シート

2019年11月期決算説明会資料より引用

25位 アマノ【50.0点】

キャプチャ

2020年3月期決算説明会資料より引用

26位 SMC【49.0点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

27位 アマダ【48.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

28位 オークマ【46.0点】

キャプチャ③

2020年3月期決算説明会資料より引用

まとめ

今回の記事では、機械系の企業を対象として、独自の採点基準をもとに決算説明会資料を分析してきました。結果、機械業界は第一回の時価総額TOP20、第二回の鉄鋼・非鉄業界に比べ、ややスコアが低く、化学業界と類似した点数構成となっていることが分かりました。
スコアが上位の企業のみならず、下位の企業も紹介することで、上場企業全体のレベル感や決算説明会資料作成のポイントについて再考するきっかけになればと考えております。
採点基準については精査を重ねておりますが、主観的な判断をせざるを得ない点があることもご理解いただけると幸いです。

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