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【パワポ研の決算資料探訪⑤】HENNGE社の決算説明資料はモノトーンで強い主張を行う

企業の決算説明会資料について解説するこのシリーズ。前回大変好評をいただけましたので、おかげざまでこの度シリーズ5回目を迎えることができました(好評だった初回Goodpatch様の記事は以下)。

今回も見どころある企業の決算説明資料について紹介させていただきます。
対象とするのは、「HENNGE株式会社」。SaaS認証基盤などを商材とするITベンチャー企業です。なお、名前の由来は「変化」。同社HP曰く、

「日本生まれのIT企業として、世界中をワクワクさせたい。そんな存在の象徴として「HENNGE(へんげ)」と名付けました。「HENNGE」には、変化(へんげ)、そして変化(HENNKA)、挑戦(CHALLENGE)の意味が込められています」

ということだそう。

2021年9月期 第1四半期決算説明会資料
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS92184/83bee349/7ddc/406d/9ae9/7213eaeebe1f/140120210209460212.pdf

それでは早速見ていきましょう。

表紙

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始めからモノトーン一本ですね。黒い部分が企業ロゴで、それを何十も紙面いっぱいに移したものをロゴとしています。他の企業でこれほどロゴを散らしたものを見たことはありません。独自性が出ていますね。

なお、ロゴの由来はHP曰く、

HENNGEの頭文字Hと、変化を起こすビッグバンの広がりのイメージを重ねたデザインとなります。4つ並べた円の中央に円を重ね、その中心にロゴがおさまるようにデザインされています。円の中心(日本)から世界の大陸を目指す、そして皆様とのとご縁(円)が生まれますようにという決意と願いを表現しています。

だそうです。

営業費用の構造

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さて、ここから本領発揮。このグラフでは6つの項目が表示されていて、そのすべてがモノトーンで区分されています。センスが悪いスライドなら6種類の原色に近い色(赤、青、黄、緑、紫、水色など)で区分し、お作法を分かっているスライドなら例えば青系統3色、緑系統3色などで留めるところを、かなり強引にモノトーン一本鎗。でも以外に悪くない。確かにどこに着目すればよいか分からない、という欠点もあるかもしれませんが、これはこれで見やすい。色覚異常を抱える人にとってはむしろよいかもしれません。経産省など省庁の資料は色覚異常の方に配慮する色構成にした結果、色合いが少しケバケバしくなっていますが、モノトーンにするとシックに落ち着きますね。

従業員の状況

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これも同じです。円グラフですとなおさら色を入れたくなる(多分、紙面に占める面積の割合が大きいから)ところを、やはりモノトーンで統一。でも、意外に読める。これは大きな発見ですね。毎度色の調合に手間をかけてしまっている人にとっては、明度だけで調整するというシンプルなソリューションは、不必要な苦悩を減らすという意味においては悪くない選択肢のように、このスライドからはうかがえます。

2021年9月期第1四半期決算(事業)

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もちろん、所謂ディバイダーもモノトーンの例外ではありません。これなら30秒くらいでスライドは作れそうですね。他社を見ると写真を貼ったり、手の込んだスライドを作っています。ディバイダーは特段内容を求められないので、社風やセンス、目指すところをアピールする場になっていることも多い(何も考えてないところももちろん多い)のですが、ここでは「ムダなことはしない」という確固たる主張が伝わってきます。

売上高と営業費用の推移

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さて、スライドの順番若干前後しますが、10ページ目にしてようやくささやかながら色が出てきます。面白いのが、ここでは頑張ればモノトーンで処理できるところを、敢えて赤色を使っているということです。つまりは、資料全体のデザインの目的が「モノトーンにこだわる」ことではなく、「楽に見やすい資料を作る」ということである、ということが分かります。要すれば、決算資料というのは読んでもらわねば、読みやすい資料でなければ意味がないということが、この資料をデザインした方、ひいては企業が分かっているということ。本質が見えているということですね。自己陶酔に浸るだけならモノトーンでよいところです。

新プログラム

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そのため、他の企業のロゴは当然カラーです。おそらく、「モノクロ印刷ですよ」という主張をすれば、このロゴ群もモノトーンで統一できたはず。でもそれはしない。それは、自社の都合に合わせて他社を振り回すのが本意ではないからです。けだし本質ですね。

HENNGE One KPIのハイライト

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そして、モノトーンだけでは当然読みづらくなる面もあります。しかし、上記のスライドのように文字の大きさや色を限定的な範囲で工夫することで、読者に負担がないようにしています。もちろん、カラーの方が見やすい場合もあるでしょう。しかし、自社の主張と天秤にかけた結果、こういったアウトプットにしています。カラーにするのは簡単。でも、伝えたい何かがあるということですね。

月次契約率の推移

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もちろんモノトーンで統一することのリスクはあります。実際のところ、例えば上記のスライドは少し見づらかったりもする。カラーにしたり、あるいはもうひと手間加えることで劇的に分かりやすくなったりもする。しかし、同社の主張するところを推測するならば、やはり天秤にかけた結果その決断をしないということなのでしょう。我々は意図を完全に掴み切ることはできませんが、なにがしかの主張があり、繰り返しになりますがその結果のアウトプットです。

なお、決して読めない、というわけではないので、スライドとして問題はないでしょう。もっと見づらいスライドは世の中に溢れていますので。

月次契約率の推移

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最後に、無論彼らのプロダクト全てがモノトーンというわけではありません。例えば、上記の新サービスはシンプルながら色が使われています。もしもこれがモノトーンでしたら、UI/UXに当然大きな(悪)影響が出てしまいます。要すれば、TPOの問題ですね。

まとめ

これまでもパワポ研では極めてシンプルな決算説明会資料を紹介してきましたが、HENNGE社はその中でも出色ですね。読みやすくする余地はあり、その能力はあるにもかかわらず、ある主張によってそうはしない、と言うところに並々ならぬ拘りが見られます。群雄割拠のITベンチャー企業界において生き残り、そして成長してきた裏付けとみて良いのではないでしょうか(ちょっと深読みしすぎかもしれませんが)。

いずれにせよ、資料を作るというのは単純にきれいなものを作るだけでなく、別の観点からの主張も必要だということです。HENNGE社以外では、例えば三井住友銀行は自社のデザイン部門をフル活用することで、同業他社と比べて圧倒的に美しい決算資料を我々に提示します。言葉で伝えるよりも、拘りや主張が見える、というところも決算資料の裏メッセージとして面白いところでしょう。

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