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決算説明会資料を集めて「パワポ採点ランキング」を作ってみた(化学業界編)

みなさん、こんにちは。
資料デザインのリサーチや分析に取り組むパワーポイントのスペシャリスト、パワポ研です。

今日は「上場企業の決算説明会資料として公開されているパワーポイントを、パワポ研独自の観点でスコア化し、分析してみた」シリーズ第三弾です。今回の調査では、日本の化学業界の東証一部上場企業のうち、「TOPIX1000」にノミネートされている42社を対象としています。

各会社によってスライドの枚数、レイアウト、コーポレートカラーなどがバラバラなので、パワポのデザインや内容に関する採点基準を作ったうえで点数を付与しています。

第一弾、第二弾の採点記事はこちら。

それでは、早速見ていきましょう。

1位 宇部興産 【73.0点】

採点シート

宇部興産は文字やグラフが少なく、表スライド中心の構成であったため、比較的減点が少ないくなっています。ただ、同じ構成のスライドが多く、単調な印象を与えてしまっているため、化学業界の中では1位ですが、Deck全体の点数はそこまで伸びませんでした。

■ミクロな世界を感じさせる表紙

宇部興産_表紙

表紙スライドは化学メーカーらしくミクロな世界を連想させる構成になっています。
宇部興産は化学メーカーですが、世の中に提供している製品は多岐にわたります。化学品以外では、セメントや珪藻土バスマットなどの建設資材も製造しており、工業用粉砕機(ミル)などの機械をグローバルに販売しています。

■最低限の情報だけに焦点を当てたサマリスライド

宇部興産_サマリ

サマリスライドは、タイトルと表だけの構成になっています。情報量がかなり絞り込まれており、必要な情報にフォーカスされているので、最低限の完成形かとは思います。ただ、あまりにシンプルすぎるので、「メッセージ」はあった方が良いでしょう。例えば、「大幅に減収減益。要因は・・・・」などの形で数字の根拠を投資家に伝わるよう説明する必要があります。

■結果の伝達にフォーカスした表スライド

宇部興産_表

営業利益から当期純利益の詳細を記載したスライドです。このスライドもメッセージがないため、数字を自ら読み取る必要があります。営業外損益の内訳を伝えたいのか、参考資料程度に営業利益~当期純利益までの数字を記載しているのかといった解釈の余地を残さないよう、「明確なメッセージ」が必要になるでしょう。

■表と同様にシンプルな構成のグラフ

宇部興産_グラフ

売上、営業利益の前期との差分を表したスライドです。配色は青色をベースに区別されており、内容を上手く伝えていると言えます。グラフ右横に差分の分析結果が記載されておりますが、この内容は「積み上げグラフ」でグラフとして反映させるとより内容としては伝わりやすくなるでしょう。

2019年3月期決算説明会資料より引用

2位 デンカ 【71.5点】

さいてんシート

デンカ社は全体として、バランスの取れたスライドとなっています。テキストのハイライトや各スライドのレイアウトにより、メッセージが上手く伝わる構成となっています。Deck全体の得点が低くなっているのは、メッセージの位置にばらつきがあった点と、ディバイダーがなくセクションの区切りが分かりづらかった点に起因しています。

■化学系の企業であることが伝わる表紙

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表紙はシンプルな構成となっており、スライド上部のイラストが印象的です。
デンカ社は、インフルエンザワクチンや検査試薬などの健康増進に役立つ化学製品を製造している企業です。その他にも接着剤や雨どいなどの建築資材なども手掛けており、こちらも幅広く事業を展開しています。

■計画比を表したサマリスライド

採点シート

デンカ社はサマリスライドとして計画比の実績を示すスライドを選択しています。2019年度は計画未達に終わってはいますが、スペシャリティー化率は順調に伸びていることが見て取れます。スペシャリティー事業というのは「ヘルスケア」「環境・エネルギー」「高付加価値インフラ」へ経営資源を集中していくといった、いわば中期経営計画です。デザインの観点では、オレンジ色とその補色である青色を上手く使うことで視認性の高いスライドとなっています。

■ハイライトの状況が理解できるテキストスライド

テキスト

このスライドでのメッセージは、スペシャリティー事業での具体的な内容の列挙なので、デザイン的な工夫の余地は少ないですが、オレンジ色と青色はやはり相性がよいことが分かります。読み手はまず3つの大きなポイント(①コロナへの貢献、ヘルスケアの新事業、③環境・エネルギー分野の製品供給)を頭に入れたうえで、具体例を参照できるため、配色の効果を実感できる一枚です。

■繰り返しの主張を反映したグラフスライド

グラフ

サマリでの内容と重複しますが、グラフスライドも配色としては、青×オレンジで構成されています。真ん中に一本矢印を通すことで、今期までは順調にスペシャリティー事業を加速させてこれているので、来期も継続的に力をいれていくという意志表明が見て取れます。

2019年3月期決算説明会資料より引用

3位 旭化成 【70.0点】

採点シート

旭化成社は、「メッセージ」と「余白」がないため、レイアウト項目で大きく減点となっています。余白を丁寧にとることで見た目の違和感を無くし、各スライドにメッセージを付け加えることで、バランスの良いスライドになるでしょう。

■シンプルな色合いでまとめらた表紙

旭化成_表紙

旭化成グループは、アンモニアや硝酸などの基盤マテリアルからサランラップなどの身近な製品、そして集積回路であるLSIまでをも手掛ける企業です。表紙はイスラエルの国旗を彷彿とさせるような青色を中心としたシンプルなデザインとなっております。

■ワード感は残るが、最低限の内容が伝わるサマリスライド

旭化成_サマリ

テキスト中心ですが、構造化されており内容は十分に理解できます。一方で、下側と右側の余白に余裕がなく、文字の存在感が際立ってしまっています。また細かな点ですが、「減収」を赤色で「増収」を青色にハイライトするなどの工夫があれば、さらに読み手の伝わりやすさが改善されるでしょう。

■コロナウイルスによる影響を伝えるテキストスライド

旭化成_テキスト

サマリと重複しますが、下側の余白がとても狭くなっております。また、本文にハイライトなどの強調表現がないため、読み手に圧迫感を与えている印象を受けます。太字、文字サイズの違い、テキストカラーなどで変化をつけ、スライドのすべてを読み込まなくても内容の理解できる形にすることが理想だと言えるでしょう。

■柔らかい配色でまとめられた表スライド

旭化成_表

配色に関してデフォルト感はありますが、視認性を高める色が使われています。一方で、増減額、増減率の欄が比較的小さく、視認性が低いです。表の中で強調すべき項目については、テキストサイズや太字で強調するよりも、赤枠などで囲む形のほうがより効果的でしょう。

2019年3月期決算説明会資料より引用


--採点シート--

3位 積水化学工業 【70.0点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

5位 ADEKA 【69.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

6位 ファンケル 【68.0点】

採点シート

2019年3月期決算説明会資料より引用

7位 ライオン 【66.5点】

採点シート

2019年3月期決算説明会資料より引用

7位 日本パーカライジング 【66.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

9位 住友ベークライト 【65.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

9位 東ソー 【65.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

11位 日本触媒 【65.0点】

採点シート

2019年度3月期決算説明会資料より引用

12位 大陽日酸 【64.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

12位 日本ゼオン 【64.5点】

採点シート

2019年3月期決算説明会資料より引用

12位 コーセー 【64.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

12位 ポーラ・オルビスHD 【64.5点】

採点シート

2019年12月期決算説明会資料より引用

16位 花王 【64.0点】

採点シート

2019年12月期決算説明会資料より引用

17位 アイカ工業 【63.5点】

採点シート

2019年3月期決算説明会資料より引用

18位 資生堂 【63.0点】

採点シート

2019年12月期決算説明会資料より引用

19位 エフピコ 【62.0点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

22位 クラレ 【61.5点】

採点シート

2019年3月期決算説明会資料より引用

22位 日立化成 【61.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

22位 小林製薬 【61.5点】

採点シート


2019年12月期決算業績報告より引用

25位 トクヤマ 【61.0点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

25位 三井化学 【61.0点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

25位 ダイセル 【61.0点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

26位 昭和電工 【60.0点】

採点シート

2019年12月期決算説明会資料より引用

27位 ユニ・チャーム 【59.5点】

採点シート

2019年12月期決算説明会資料より引用

27位 日本化薬 【59.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

29位 JSR 【59.0点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

29位 東京応化工業 【59.0点】

採点シート

2019年12月期決算説明会資料より引用

31位 カネカ 【58.5点】

採点シート

2019年度3月期決算説明会資料より引用

32位 富士フイルムホールディングス 【58.0点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

32位 住友化学 【58.0点】

採点シート

2019年12月期決算説明会資料より引用

32位 DIC 【58.0点】

採点シート

2019年12月期決算説明会資料より引用

35位 エア・ウォーター 【56.0点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

35位 東亞合成 【56.0点】

採点シート

2019年12月期決算説明会資料より引用

37位 日本ペイントホールディングス 【53.5点】

採点シート

2019年12月期第4四半期決算説明資料より引用

38位 三菱瓦斯化学 【52.0点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

39位 日油【51.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

40位 セントラル硝子【50.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

41位 三菱ケミカルホールディングス【50.0点】

採点シート

2019年3月期決算説明会資料より引用

42位 日産化学【41.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料より引用

まとめ

今回の記事では、化学系の企業を対象として、独自の採点基準をもとに決算説明会資料を分析してきました。結果、化学業界は第一回の時価総額TOP20、第二回の鉄鋼・非鉄業界に比べ、ややスコアが低いことが分かりました。
スコアが上位の企業のみならず、下位の企業も紹介することで、上場企業全体のレベル感や決算説明会資料作成のポイントについて再考するきっかけになればと考えております。
採点基準については精査を重ねておりますが、主観的な判断をせざるを得ない点があることもご理解いただけると幸いです。

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