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「棒グラフ+折れ線グラフ」をバカみたいに研究して、デザインのコツと正解パターンを洗い出してみた

みなさん、こんにちは。
資料デザインのリサーチや分析に取り組むパワーポイントのスペシャリスト、パワポ研です。

今日は棒グラフと折れ線グラフを組み合わせた複合グラフをテーマとして取り上げ、デザインの優れた企業のパワーポイントを紹介しながら、デザインのコツと正解パターンについて解説していきます。

それでは早速見ていきましょう。

1. 灰色を使って効果的に"強調"

棒グラフの一部の値を強調する際、薄めの灰色をベースカラーにすると、他の色がより効果的に強調されます。灰色は基本的にはどの色とも相性が良く、スライド全体の雰囲気を乱すことがないため、汎用性の高い王道テクニックと言えます。

--BASE

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灰色の濃淡だけ綺麗にメリハリが出ている一枚。棒グラフで使われている2色の灰色と、折れ線グラフの灰色の3種類のみで表現されていますが、地味な印象は受けません。

・売上総利益の推移を表すスライド
・前年同四半期比では+44.6%
・売上総利益=644百万円

という3つのメッセージがすんなり頭に入ってくる構成になっています。

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こちらも同じBASE社の決算資料から抜粋しているものですが、右上のロゴをはじめ、全体のスライドの雰囲気が1枚目のものと異なります。これは「会社としてのBASE=黒」「サービスとしてのBASE=緑」という形で、メインカラーを区別しているからだと考えられます。いずれにせよ、薄い灰色をベースにグラフを組み立て、強調したい部分のみカラーリングするという点は同じであり、2019年4QのGMVや売上高がすぐに目に入ってくる構成となっています。

2019年3月期第4四半期決算説明会資料 より引用”

--snow peak

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snow peak社の「棒グラフ+折れ線グラフ」の特徴は、灰色を基調としながら、前年度の収益悪化をあえて赤色で示し、その対局の水色を今年度のグラフに用いている点であります。また、メッセージ部も合わせて水色にすることで、直感的に「営業利益=9.2億円」が過去最高値であることが分かります。
一方で、今回のグラフ作成のポイントとは無関係ですが、小数点第1位の数字のフォントサイズは、やや違和感を感じるポイントです。

”(2019年3月期第4四半期決算説明会資料 より引用)”


2. 棒と折れ線を同系色でまとめる

資料作成の鉄則の1つとして「色数はできるだけ抑える」があげられますが、組み合わせグラフを作成する場合には、棒グラフと折れ線グラフを異なる色にしなければなりません。
ここでは、コーポレートカラーを用いて、棒グラフと折れ線グラフを同系色でまとめている例を紹介します。

--Sansan  

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Sansan社は青系統の濃淡だけでグラフを区別しています。折れ線グラフにはコーポレートカラーである青色を使用しており、ドットも大きめのものを採用しています。一方、棒グラフには比較的薄い青色を取り入れることによって、各グラフが綺麗に区別できるデザインとなっています。折れ線グラフの数字を2015年と2019年のみ表示していることも、全体としてスッキリした印象を与えるポイントの一つですね。

(2019年5月期 通期決算説明資料 より引用)

--弁護士ドットコム

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弁護士ドットコムはコーポレートカラーであるオレンジ色を採用しており、こちらも棒グラフのオレンジを折れ線グラフに比べて淡くすることによって、両者の区別を図っています。グラフの横幅を目一杯にとることで、全ての数値を表示した際に現れる圧迫感を軽減していることも注目すべきポイントです。

(2019年3月期決算説明資料 より引用)

--McKinsey&Company

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マッキンゼー社の資料は決算説明会資料ではなく、レポートからの抜粋になります。決算資料とは異なり、縦軸と横軸そしてグラフ内の数字がはっきりと記載されている印象を受けます。注目すべきは、タイトルも含めて、色は青系統の3色しか使っていないものの、それほど地味な印象は受けないという点です。色の濃淡と数字の適切な配置だけで見栄えの良いレポートが作成できるという、コンサルらしさの分かる一例となっています。

(2014年2月発表の討議用資料「我が国製油所の国際競争力」より引用)


3. 補色で区別する

「2. 棒と折れ線を同系色でまとめる」では、コーポレートカラーをベースに棒と折れ線を同系色でまとめた事例を紹介しましたが、ここでは折れ線グラフと棒グラフを全く異なる色で区別している例を紹介します。
シンプルな印象を与える同系色組み合わせと比較すると、メリハリの効いた資料になっていることが確認できると思います。色相環でいえば、オーソドックスに対極の関係にある色を使っているスライドが多い印象です。

--UZABASE

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ユーザーベース社は折れ線グラフに赤系統、棒グラフに青系統を採用しており、同系色でまとめていた場合と比較して、区別がより明確になった印象を受けます。結果として、EBITDA率とEBITDAの推移を個別に認識した後に、それぞれの相関を捉えることが可能になっています。決算資料にはよく見られることですが、縦軸など不要な要素は取り払っており、グラフの存在感を消さないような工夫もされています。

(FY2019 FINANCIAL RESULT より引用)

--サイボウズ

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サイボウズ社もユーザーベース社と同様に、棒グラフ青系統、折れ線グラフに赤系統を採用していますが、色のトーンが随分と異なります。棒グラフの青系統はロゴのカラーと合わせており、折れ線グラフの赤系統はやや濃いめのものを採用しています。この色使いから「期末社員数」よりも「離職率」を強調したいということが読み取れます。このように濃淡のトーンをあえて揃えないことで、強調したい要素を明確にするというやり方があることも覚えておきましょう。
また、2019年12月期の離職率のみ、吹き出しで表記していることも特徴的です。メッセージをタイトル下に置くのではなく、グラフの中に埋め込むことで、より視覚的な分かりやすさが増し、全体の流れの中で数字を理解することができる構成となっています。

(2019年12月期決算説明会資料 より引用)

--ニトリ

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ニトリ社のスライドはコーポレートカラーの補色を効果的に使い、折れ線グラフを強調している一例です。このスライドで特徴的なポイントは2点あります。
1点目は、ドットのサイズをかなり大きめに設定していること。メッセージとして売上だけでなく、経常利益も増加傾向にあるという主張が明確となっています。
2点目はグラフのスケール感。縦軸を無くしている上に、横軸は19年分しかないのに「33期連続増収増益」と書いてあります。よく見ると、2010年以前は数値が飛び飛びになっており、1年ごとのグラフではなくなっているのが分かります。論文やシンクタンクのレポートなどでは、このような書き方は当然NGですが、決算説明会資料においては「グラフはあくまでメッセージを補完するためのもの」であるため、こういった形が許容されるケースも多いのです(ニトリ社はレポート屋ではなく、家具屋なので細かいツッコミは受けないですが、レポート屋がこの書き方をすると怒られると思います)。
強調表現として、薄い灰色が使われていることも「お値段以上の」ポイントでしょう。

(2020年2月期決算説明会資料 より引用)


4. 場合によっては数字を省略する

グラフ内に数字を記載したほうが、メッセージを補完する上では効果的であり、実際に数字を記載している企業の方が多いです。しかし、全体的なバランスから数字の記載を省略して、それが逆に見やすさを際立たせることとなっているスライドも存在し、ここではその事例をいくつか紹介していきます。特に欧米の企業ではグラフの数字が省略される傾向が強いようです。

--FedEX

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国際的に運送業を手掛ける米国のFedEx社のInvester Relationsは、情報量が多いにも関わらず、非常にシンプルな構成となっています。左側の縦軸に売上高を取り、二つの棒グラフのスケールを示す一方で、右側の縦軸にマーケットシェアを取り、紫の折れ線グラフで推移を示しています。グラフ内に数値の記載があると、かなり圧迫感の強いスライドとなっていたでしょう
最も全体に占める割合の高い「Total Ground Market Revenue」を灰色にすることで、残りの棒グラフと折れ線グラフが自然に強調されているのもポイントです。

(Investor Relations 2020 より引用)

--shell

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オランダの石油会社、Royal Dutch Shell社のスライドはビビットでカラフルな印象を受けますが、内容自体は非常にシンプルです。一番左のグラフは収益の内訳を緑、灰色、黄色、赤、オレンジで区別しつつ、その推移と単年度の黒字(赤字)幅が視覚的に理解できる構成になっています。加えて、ROACEを滑らかな折れ線グラフで繋ぎ、全体の柔かな印象を保っています。
真ん中、右のグラフを含めても数字は一つも登場しないのですが、メッセージとしてグラフ下のスペースに切り出すことで、全体感と詳細情報の両方が伝えられる構成となっています。あまり日本の企業では見られないような構成であるが、参考までにこのパターンも覚えておきましょう。

(FIRST QUARTER2020 RESULTS より引用)

まとめ

今回は「折れ線グラフ+棒グラフ」の複合グラフについて、公表されているパワーポイントを例に出しながら、その作成のポイントについて解説してきました。
その結果、概ね下記四点について、考慮しながら作成すると良いということが分かりました。

■ 強調
■ 配色(同系色)
■ 配色(補色)
■ 数字の記載

皆様の参考になりそうな事例が一つでもあれば、幸いです。

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