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【パワポ研のパワポ資料探訪34】安野たかひろ氏のマニフェストはスライドの使い分けが上手

様々なパワーポイント資料について解説するこのシリーズ。
毎回大変好評をいただけておりまして、おかげざまで引き続きシリーズを重ねられております(好評だった初回Goodpatch様の記事は以下)。

今回も見どころあるパワーポイント資料について紹介させていただきます。
対象とするのは、東京都知事候補者の安野たかひろ氏のマニュフェストです。

【公開】東京都知事選2024安野たかひろマニフェスト(詳細版)v1.0

それでは早速見ていきましょう。
なお、当記事は特定の候補者を特段に応援するものではなく、あくまで資料という観点で紹介するものとなります。ご了承ください。

表紙

決算資料などと異なり、特段やフォーマットや記載すべき情報などが定まっていないたぐいの資料になります。その中で、「誰が」「なんのために」「どんな資料」を作ったということを知らさなければなりません。今回は「安野たかひろ氏」が「都知事選のマニフェスト」を「テクノロジーで誰も取り残さない東京へ」ということを知らしめたいわけで、それはこの表紙で十分にクリアしています。カラーリングも微妙なグラデーションを入れていて、見ていて楽しいものになっています。画像もいわゆる「東京」感がでていてよいですね。

目次

格式ばらない感じがよいと思います。読みやすいですね(ちょっと背景の色が濃い気もしますが)。

資料の紹介

100ページあって長いというのは事実です。そのため、別途サクっと見ることができる資料を用意するというのは、例えばメディア向けにも有効だったりします。プレスキット(=メディア向け資料)の用途などでこのような手法が使われることもあります。

現状認識

まず現状認識のスライドです。タイトルが「現状認識」で、メッセージが「現在の東京は、ビジネス・人・文化にて高い評価」ということになっています。そして、下にそのメッセージを支えるボディとして各種評価であったり、あるいは東京のもつポテンシャルが記載されています。

このスライドは、ビジネスの場面でもそのまま通用するようなフォーマットになります。タイトル、メッセージ、ボディ。非常にわかりやすいスライドです。少し嫌な言い方をすると、「ちょっとかしこまった」スライドかもしれません。

現状認識

これも同様に、現状認識のスライドです。タイトルとメッセージがあり、ボディがそれを支える。今回のボディはどちらもグラフのようになっており、これもかしこまったスライドと言えます。とはいえ、ビジネスの場で用いられるものよりも、直感的に言いたいことがわかるようになっています。例えば、左のグラフはビジネスの場面なら表としてもっと細かいデータを延々並べるところですが、矢印一本で「下落」ということがわかりやすくなっています。正確性も担保しながら、より「一目でわかる」ということを重視されているようです。

過去の実績

そして毛色の違うスライドが出現しました。メッセージの部分がとても大きくなり、ボディがより端的になりました。印象に残りやすい形式のフォーマットで、これまでの事業会社風のスライドとは様子がだいぶことなります。

ボディの部分についても、カクカクしないで角をそぎおとした形にしており、キャッチーな雰囲気をうまく作っています。

安野たかひろのお約束

そして文字だけがバーンっと大きいスライドです。このあってもなくてもよいようなスライドは、ソフトバンクの資料などで時折使われますが、ビジネスシーンではあまり使われません。ほかのスライドに統合したら? ということになるためです。この例では、この前のスライドの下部やメッセージに混ぜ込むことも十分に可能ですが、あえて分割したスライドということになります。これにより改めてメッセージが強く伝わる、というわけです。マニフェストならではの効果的な一枚と言えます。

政策5つの柱

またフォーマットが変わりましたね。まずキャッチーな画像がずらりとならびました。最近こういう画像では「いらすとや」が全盛を誇っていますが、エンタメを含むいろいろな場面であまりに使われすぎているため、少し安っぽく見えてしまうことがあります。そこでこういう場面でワンオフの画像を使うことで、「きっちりしていますよ」感が出ます。市役所の冊子のようなイメージですね。

その画像の上にしっかりと文言で5つの柱を説明しています。このスライドのあとに、この政策の説明が来るんだろうなということを予感させます。

1. 新産業で、所得倍増

実際、次のスライドでは1つめの政策の説明です。そしてこの説明はスライドの余白が多く、伝えたい内容が絞られているように見えます。

この次以降のスライドで、この政策について様々な角度から実施意義やその達成方法などが細々述べられていますが、まずはっきりと短い文言で言いたいことを伝える、というスライドになっています。フォントが太く大きいのもよいですね。

経済|現状認識

このように、続くスライド群で補足説明が入ります。イラストをうまくつかって、かつ文字も太字や段落分けを多様して、読み手が飽きないようなスライドかつ、飽きても最悪メッセージとイラストだけ視界にはいれば意味が通るような構成になっています。誰しもが全てのスライドを細かく見てくれるわけではないので、多様な層に向けたスライドはこのような工夫が大切になります。

逆に言えば、ビジネスシーンでも「よく読み込んでくれる人」と「さらっとしか読まない人」が対象の資料では、作り方を変えるべきとも言えます。

この資料がすごい点は、どちらの人も満足できるようになっており、かつそれでも読み飛ばしたい人向けに「サマリ版」も作っているという、読み手にかなり寄り添っているという、その構成です。

経済|サマリ

そしてこういったサマリのスライドもあります。左側に「現状認識・課題意識」とあり、右側に「マニフェスト」が文字ベースでまとまっています。5つの政策のついて同じフォーマットでこのようなサマリのスライドがありますので、読み手にも優しいといえます。同じようなフォーマットが続くと飽きてしまいますが、全く新しいフォーマットばかりではそれはそれで疲れるものです。適宜同じフォーマットを使いまわしてくれるようが読みやすいのです。

選挙の歴史が変わる!新たな3つの取り組み

以上が政策についてのスライドですが、そのほかのスライドも充実しています。
例えばこのスライドですが、QRコードを掲載して別のソースにアクセスできるようになっています。意外とこのやり方は、ありそうでなかったところです。決算資料などビジネス関係の資料でQRコードがついていること、あまりないですよね? 名刺にQRがついている人はたまにいますが、資料でついているのはあまり見ません。このやり方はどのようば場面でももっと採用してよいように思えます。

ラストメッセージ



最後の2枚のスライドです。いろいろなフォーマットのスライドがありましたが、最後に文字がドーンと来るのは印象的です。「結局この資料で言いたいことは何なのか」と問われたときに、このように端的にメッセージを答えられるようにするのは大事です。ビジネスシーンでこのようなスライドを用意する必要はないかもしれませんが、答えられるように準備はすべきでしょう。そのメッセージはこんなに格好良いものではなく、例えば「〇〇という商品を買ってください」でもいいですし、「何千万円出資してください」でもいいです……が、もうちょっと格好良いほうがいいかもしれません。もしこの資料の最後が「私に投票してください」だと、ちょっと格好がつかないと思いますので。

とにかく、資料全体で伝えるべきメッセージを用意すべき、ということでした。

まとめ

硬軟織り交ぜたいろいろなフォーマットのスライドが出てきて、非常に楽しい資料となっていました。最近ではスマートフォンを横向きにすればパワーポイントやPDF資料でも簡単に読むことができますので、情報発信がこのような形式でどんどん進むとよいとパワポ研は思っています。

なお、繰り返しになりますが本記事は特定の候補者を応援したり、あるいは政策の内容を議論するためのものではありません。ご了承ください。

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