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化学屋から見たきれいなアジサイ

【簡単な自己紹介】
バックグランド:有機合成化学.
現在:リチウムイオン電池関連の仕事をしております.

 今回は趣旨を変えて,アジサイの話題についてつぶやきたいと思います.

(撮影地:北関東 栃木県 栃木市 太平山(おおひらやま)あじさい坂)

(撮影時期:数年前)

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   少し遅れましたが,アジサイがきれいな季節が今年もやってきました.青,紫,赤,白といろいろな花が目に入ってきます.また,途中から花の色が変化していくことも多くの方がご存知だと思います.今までの研究結果から,土壌の酸性度によって花の色が変化することがわかっていました.しかし,それ以上の詳細は化学的に解明されていませんでした.なんとなくわかったような,分からないような気持ちで,もやもやしていらっしゃる方も多いではないでしょうか.(個人の感想です)

 最近,名古屋大学大学院情報学研究科の吉田久美(よしだ くみ)教授が,アジサイの青色色素の構造と色の変化の仕組みを化学レベルで解明しました.その記事が月刊『化学』の2021年6月号に掲載されました.この記事を読んで,有機化学のバックグランドをもつ者として,やっとすっきりしたような気がします.詳細は記事をご参照ください.
 記事の内容を要約すると,アジサイの花の色素は3つの要素から構成されます.(1)アントシアニン色素,(2)3種類の助色素,(3)3価のアルミニウムイオン(Al3+),の三種類です.

化学式は次の通りです.

あじさいアントシアニン

                                       アントシアニン色素(1)


あじさいクロロゲン酸

                                助色素 クロロゲン酸(2)


あじさいネオクロロゲン酸

                                  助色素 ネオクロロゲン酸(3)


あじさいマクロオルキナ酸

                         助色素 5-O-p-クマロイルキナ酸(4)


あじさい青色

        青色はアントシアニン色素(1)とネオクロロゲン酸(4)を配位子とするAl+3価イオンの1:1:1錯体だそうです

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青色のアジサイの花


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赤色のアジサイの花

 一方,赤色色素は(4)の代わりに(3)が関わっているようです.また,酸性度とAl+3価イオンの濃度によって色が青,紫,赤および中間色と変化することもわかりました.

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 紫色の花には,青,赤,紫色の細胞が混じっているようです.液晶パネルの発色原理と似ていると思われます.この記事を読んだ後,再度アジサイの花を見ると,1つの花に数種類の色が混じっているのが見えるような気がしました.

 これからアジサイの花をご覧になるときには,ぜひ一つの花の中の色にもご覧になってください.また,色素の構造式を思い浮かべてください.
 今回はこの辺で失礼します.
 引き続きよろしくお願いします.

月刊化学2021_06


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