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なくなって、いる

二〇一七年十一月十三日月曜日

晴れ

あの場所へやって来てお線香をあげるころは機嫌がよかったけれど、はじまるころから「あっぺい」と彼女は言いはじめた。気配を感じて、みえないをみていたのかな。のんさんはぜんぶわかって感じているというようすだった。

ひいおじいちゃんがここではないところへ向かっていること、もしかしたらのんさんに握手しにきていたのかもしれない。

おじいちゃんのまわりに花を置いてゆく。のんさんも「どうぞ」とむらさきのお花と胡蝶蘭を置いた。口角が上がっているわけではないけれど花を置いてゆくときから微笑んでいるような表情に見えた。おじいちゃんの頬はやわらかくむにゅっとした。

だいたい一年前のおばあちゃんのお葬式のときおじいちゃんはたくさん口に頬張って食べることを止めなくてお父さんたちにもういいよと言われていた。おじいちゃんは生きようとしていたなあと思う。食べて生きようとしていた。たらればさんが寄り添うけれど、おじいちゃんは微笑んでいたことは覚えておこう。

のんさんは「じゃんぷうー」と、やっと地上から足が離れるようになった、そのやり方を確かめているのか、よろこびなのか、繰り返し飛んでいた。いろんなひとと手をつなぎながら火葬場へ向かうときも納骨する場所へ向かうときも跳びはねていた。

晩ごはんは、青梗菜としめじの炒めもの、味噌と酒粕煮込みうどん (鶏肉、ごぼう、大根、長葱、しめじ)。


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