読書記録 - 道尾秀介 「カラスの親指」
無理ですよ、このどんでん返しから逃げるのは。
噂に違わぬ名作
2009年 第62回日本推理作家協会賞 (長編及び連作短編集部門) 受賞作。
僕はあんまり本 (特に小説) を読むのが速い方ではないんですが、この本は特に中盤以降、スラスラ読めてしまいました。
というか、止まらないんですよね……いやぁめっちゃ好きだわこれ。
推理小説としては読まない方が良い?
ですが注意点として「これのどこが推理小説なの?」ってくらい、推理要素はありません。
そもそも大雑把なストーリーとしてはこうです。
「詐欺師とスリと無職が手を取り合い、闇金業者に仕返しするお話」
「誰が」過去の主人公たちを陥れ、「誰を」ターゲットとして仕返しするのかが、あらかじめ読者にも明かされた状態でストーリーが進行していきます。
なので推理小説としてじっくり読むというより、単純に "詐欺師 vs 闇金の復讐劇" として読む方が楽しめるんじゃないでしょうか。
「そんなのつまらん。俺は推理したいんじゃ!」という方。
いやいや……そんなことしなくても十分面白いから。
どこが面白いかっていうと……
軽快な会話劇が気持ち良い!
なんというか、リズムが良い。会話の。
軽快でユーモアもあって、登場人物の性格や関係性が手に取るようにわかります。
「具体的に他の作家とどこが違うのか」と言われるとちょっと困ってしまうんですが、何かが違っていて、それが非常にしっくりくるんですね。
時折繰り広げられるこの会話劇は、一見の価値あり。
後半の痛快さがクセになる!
とはいえ、前半はかなり重い話が多くなっております。
主人公たちが詐欺師であったり、スリの常習犯として落ちぶれるきっかけとなった過去が語られる前半部分。
人が多重債務で追い込まれて死ぬシーンなんかも含まれるので、そういうのが苦手な人にとってはちょっとキツいかもしれません。
しかしそれを乗り越えると一転、痛快な復讐劇に転調します。
前半で力を溜めて、後半で一気にジャンプするみたいな。
これがめちゃくちゃ快感でしたね。
明るめのストーリーが好きな方も、前半はちょっと我慢して読み進めてみてください。その価値は十分あります。
ラスト40ページのどんでん返し!
推理要素はほとんど無いと言いましたが、物語のエピローグにあたるラスト40ページ、嵐のような伏線回収が行われます。
果たして「本当に騙されていた」のは誰なのか。
そして訪れる、嵐の後の清々しい晴れ模様。
これはもう、文句無しの名作だ。
次に読む本
次に読む本として『カエルの小指』という続編が用意されています。
『カラスの親指』を楽しめたなら、そっちを読むのが順当な歩き方。
もうちょっと違ったテイストの作品が読みたいという方は、道尾秀介オフィシャルサイトの「オススメ作品検索」にアクセスしてみましょう。
心理テストみたいな感じで、あなたにピッタリの道尾作品を提案してくれます。結構楽しい。
ちなみに僕は『N』という本をおすすめされました。こちらも近々読ませていただきます。
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