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川村文乃に見る坂本龍馬的ベンチャースピリットと人心掌握術
大抜擢である。
5月25日千葉県文化会館で行われたアンジュルムのコンサートで和田彩花卒業後の2代目リーダーに竹内朱莉の就任とサブリーダーには中西香菜が留任、そして新たにサブリーダーとして川村文乃の就任が発表された。
長くハロプロを見てきた人間からしたら信じられない出来事だ。確かに、アンジュルムヲタの間では「かわむーがサブリーダーにならないかなぁ」とか「リーダーでも良いんじゃね?」なんて話は到るところで上がっていた。だが、あの「良い意味でも悪い意味でも年功序列を是とする」アップフロントが、2期から5期までを飛び越して6期メンバーである川村文乃のサブリーダー就任を推奨するとは思えなかった。
なぜ、こんな大胆な人事が出来たのか?
ひとつは卒業する和田彩花の強烈な後押しがあった事は間違いない。彼女は何かあるたびに川村文乃の有能さを絶賛していた。そして全アンジュルムヲタもまた、イベント毎に彼女が自主的に発信する情報の数々(ただ発信するだけではなくデザイン性も秀逸)に「公式よりも有能かつ有益」と大絶賛していたくらいだ。
もうひとつはアンジュルムというグループの特性だろう。リーダーである和田彩花の提唱するグループのダイバーシティ化は、例えばモーニング娘。では簡単には出来ない事かもしれない。ハロプロにおいてモーニング娘。は老舗の大企業で、アンジュルムは和田彩花を中心に立ち上がった社内ベンチャー企業のようなイメージがある。
社内ベンチャーは成功しないと言われる事もあるが、それは結局ひとりひとりの独立心と向上心が必要で、また大企業に対する依存心を捨てられる存在がどれだけ居るかが肝なんだと思う。その辺り、アンジュルムには独立心と向上心の塊である和田彩花を筆頭に個を明確に持ったメンバーが集まっている。足りなかったのは後ろ盾に依存しないで自ら発信出来る人間だった。
和田彩花の盟友、福田花音による『夢見た 15年』でも
規律 しきたり そんなもんは
塗り替えなくちゃ
カルチャーショック起こすほどに
時代を変えよう
という歌詞がある。これこそアンジュルムにあるベンチャースピリットであり、それが体現化された存在こそが川村文乃なのだ。
例えばこんな事があった。
リーダー和田彩花がアンジュルムのマンネリ化に悩んでいた時「いつかリリースイベントをメンバープレゼンツにしてやってみたい」という趣旨の長文メッセージが加入したばかりの川村文乃から送られてきたらしい。ハロプロのイベントは基本的にマネージャーが中心となって事務所主導で企画が作られる。それを全て自己プロデュースにしたいという意見に和田は感銘を受け、すぐに事務所に直談判して実現させた。
和田彩花の実行力のおかげでもあるが、彼女を駆り立てたのは川村文乃に他ならない。自身のラジオで後に和田彩花はその時の事を熱く語っていた。
また、ひとつ先輩の上國料萌衣もイベントで
「先輩に対して言いづらいことも『失礼にあたるかもしれませんが、今のアンジュルムのここがダメだと思います』と、はっきり言ってくれる」
そう川村文乃を評価していた。組織を良くする為には忌憚のない意見が言える環境も必要だが、その中で実際に声を発する事が出来るというのが素晴らしいではないか。
人たらしのはちきんさん
高知県で生まれ育ち、地元で「はちきんガールズ」として一定の地位を築いたのに「ハロプロが好きだ」という思いを捨てきれず卒業し、何の保証もないハロプロ研修生に入ったという経緯。そしてその強い気持ちで努力を重ね、意外と技術や実力には容姿や人気とか関係なく厳しいハロヲタすら彼女は認めさせ、事務所からも正当に評価されてアンジュルムに加入した。まさに彼女は「はちきん=後ろを振り返ることなく前進し続けるといった頑固さや行動力あふれる高知の女性」である。
そしてまた彼女は、出会ってきた人たち全員が彼女の人柄と思いに触発され様々な手を差し伸べたくなる天性の才能も持っていた。
ハロヲタであり翻訳家の大森望さんは、同郷という縁から川村文乃を知り、はちきんガールズだった頃に自身が主催したハロショイベントに彼女をゲストとして招いている。
ハロショ千夜一夜で川村文乃さんに関する西口さんのアンケートに答えた内容です。 pic.twitter.com/gB5ZJCyVeX
— 大森望 (@nzm) May 22, 2019
同じくハロヲタでタワーレコードの社長である嶺脇育夫さんも、はちきんガールズの頃から彼女を見守り続け、自身の番組にも何度も登場させている。
あれ?なんだか似ている。そう、彼女は土佐を脱藩し、先見の明を持って駆け回った天性の人たらし坂本龍馬にそっくりなのだ。
坂本龍馬と川村文乃
サブリーダー就任が発表された日、某所で「川村文乃は豊臣秀吉のようだ」というコメントを見た。確かに地方の足軽でしかなかった秀吉が立身出世していく様と似ているかもしれない。だが、僕は組織内の出世レースの末に天下を取った秀吉のように段階を踏んで成り上がったのとは少し印象が違う気がする。
どちらかというと、やはり元々の所属先から脱藩して自らの才覚と人脈を使って一気に表舞台に現れた革命児、坂本龍馬に似ていると思うのだ。
そう考えると和田彩花という存在は、大きな組織にあって、外へ外へと目を向けて進もうとしていたハロプロの勝海舟なんじゃないかと思える。そして勝海舟という師に出会うことで坂本龍馬の才能が開花したように、和田彩花の元に辿り着いた事で川村文乃の持っていた才能や特性が爆発的に覚醒したように思えてならない。
ガラパゴス化が強いハロプロにあって、グローバル化の必要性と時代の急速な変化への柔軟な対応力が必須な事を肌感覚で理解し、組織を優位に立たせる戦略を生み出す感性と実行力を持ち合わせたベンチャースピリットの持ち主は稀有な存在だ。
坂本龍馬は道半ばにして時代から消されてしまった。今でも「坂本龍馬が生きていたら」というifが多く語られる。その、もしかしたらあったかもしれない未来を見せてくれるのが和田彩花卒業後のアンジュルムと川村文乃なんじゃないだろうか。
「アンジュルムの夜明けぜよ」
6月30日の福岡ドームでお披露目される新体制のアンジュルムにおいて2代目リーダー竹内朱莉を参謀として支える川村文乃に刮目せよ!と気が早いが言いたい気分である。
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