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アンジュルム『全然起き上がれないSUNDAY』のMVを観て僕の中の乙女回路が叫んでる

アンジュルム『全然起き上がれないSUNDAY』のMVが公開されたので、歌詞の考察をしてみようと思う。

僕が初めて聴いたのは先日のパシフィコ横浜のアンコールだった。リリイベでは披露されていて、振り付けというか演出で全員がステージに寝るシーンがあるというのは知っていた。「全然起き上がれない」感の演出だろうとは想像していたが、聴いてみて衝撃受けた。「寝転がる」という演出はこの曲には必然だと思えた。いまだかつて、こんなにも曲を聴いて「あー、もうそんな状態だと起き上がれないわなぁ」と細胞レベルで共感出来る歌は無いと思った。

ダウナーなリズムの繰り返しによる倦怠感、その合間に入ってくる「カッカッカッ」という拍子木のような音で無為に過ぎていく時間の経過を演出していく音作りの緻密さ。また、微妙な字余りの歌詞を絶妙にリズムを刻むことで、微睡みと思考停止状態のダラダラした昼下がり感が目に浮かんでくる。

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つんく♂のジメジメした曲はプラチナ期に特に印象的な曲が多いが、その頃の曲でもここまで「あー、もう全部イヤだ。なんもしたくねー」と大の字になってグロッキーになっているものはあまり無い気がする。なんとなく歌詞の世界観的にはモーニング娘。の『悲しみトワイライト』に通じるものもあると思ったけど、それでもあの曲はまだ立ち上がって怒りをぶつけている印象だ。

では何がこの歌の彼女に起こったのだろう?

口付けじゃないわよ
認めない あんなの
私も同い年
悪ふざけ 許さない

Aメロのド頭で出てくる「口付けじゃないわよ」というくだり、具体的に相手にされた事の描写は後にも先にもこれだけだ。

付き合ったわけじゃない
約束もなんもない
ただあの頃は毎日
話したり ふざけたり

2番のAメロでも「付き合ったわけじゃない」とただの友達だという認識を彼女も持っている。

勝手に信じて
勝手に膨らませ
勝手に君の事
独占してた

そう、ただの独り相撲だ。

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たぶん、本当にこの彼は誰にでも分け隔てなく優しく明るくて、みんなに平等に接する人なんだろう。それを勘違いして、ひとりで舞い上がっていた女の子、そう普通は思う。思うんだが、それにしてはこの子は言葉の端々にプライドが滲み出ている。

一瞬たりともキュンした 私がバカだな
こんな出会いがある事に トキメイてバカだった
絶対このまま許さない 何も許さない
あんなにはしゃいだ あの気持ち返してよ 返してよ ね
こんなにも ねぇ? ムカつくのはなんで?
そう かすかに mm 嘘だと思いたいから?

1番のサビだ。

まず「こんな私がトキメイたのに、それをアイツは踏みにじった!」「なんなの!ねぇ!なんなのよ!」という物凄い高いプライドが感じられ「簡単になびくような軽い女じゃない」という断固たる自負に溢れている。

そして全編に渡って特徴的なのがカタカナの多用だ。「カッコだけ」や「バカだな」「トキメイて」「マジこのまま」など強い感情が乗る場所がカタカナになっている。これは強い感情表現をカタカナにして和らげる事で「本気でそこまで思っていない」という強がりを逆に演出しているように思える。

しかし1番のサビの最後「嘘だと思いたいから?」というフレーズ。

この「嘘」も流れ的には「ウソ」と表記して強がっても良い気はする。だが、敢えて漢字表記というのが、この彼女の本心を表現しているんじゃないだろうか?「ウソ」としてしまうと、自分の気持ちまで軽いと思われる。だから「嘘」と表記して自分は本気だったという本音が出ているように思えるのだ。

うーん……これ女の子の気持ちなのかな?

「いいカッコボーイ」とか「描いたバカ子ちゃん」とか、今どきそんな表現を女子がするか?「一瞬たりともキュンした」なんて言うか?

マジこのまま許さない 何も許さない
あんなにはしゃいだ あの気持ち返してよ 「ねえ返してよ」 ね

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最後のこのくだり、こんな怨念じみた地の底からの感情を若い女の子が生み出すかな。なんだか僕はこの主人公は乙女回路を発動させた(戸籍上は)男子の淡い恋のお話に見えてならない。それもアラサーくらいの男子(戸籍上は)の恋なんじゃないかと思うのだ。

なんかね、こんなにウジウジとたった一度のキスだけで妄想が暴走して勝手に突っ走って玉砕するっていうのが普通の女の子でイメージ出来なかった。

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とある晩、雰囲気のいい静かなバーで独りカクテルなんか飲んでた時に出会った爽やかな青年。自分の事を女の子として扱って自然に振る舞ってくれて、周りにも自然体で分け隔てなく接していて、そんな飾らない態度に惹かれて何度かバーで友人を交えて会う度、少しずつ気持ちが傾いて。

「ああ、こんな私にも素敵な出会いがあるんだ」

なんて思ってたら、ふいにキスされて。

だから私は一瞬で恋に落ちた。でも、なのに、アイツは「ごめん、ごめん」と笑って済ませた。私が本気だと気付いたから?

気まずそうにしている顔を見て分かった。

所詮アイツも他の男と同じだった。

分かっていたはずなのに。なんでこんなに舞い上がっちゃったんだろ。

バカみたい。自分がバカみたいで許せない。

ああ、もう何もしたくない。こんなにムカつくのに忘れられないわ。

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そんなイメージが膨れ上がって、僕は仕方ないのだが、これは僕が乙女回路を持っているせいなのだろうか?どこかで僕も自分の中の乙女と同化させて勝手に共感してイメージが膨らんでしまったのだろうか?

これは私のことを歌ってる。

なんて僕の中の乙女が叫んでいるんだろうか。

わかんないから教えて、つんくボーイ。


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