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スポーツジムのトレッドミルで一日100km走ってみた話

 トレイルランニングをしている私は、ジムのトレッドミル(ランニングマシン)で、16時間かけて100km走ったことがあります。今回はその経験を書いてみます。

〇なぜジムで100Km走ったのか。

 この春に、富士山の周りを164km走るトレイルランニングレース(ウルトラトレイル・マウント・フジ=UTMF)に出る予定でした。冬の間中、このレースのためにトレーニングを積んでいました。

 ただ、年末に痛めた膝がなかなか治らず、本番に近い距離のロング走の練習がなかなかできない状態でした。長い距離が走りたい、でも膝が痛い、でもレースが近づいてくる、だから長い距離走りたい、でも膝が悪化したらどうしよう。。

 そんな逡巡を繰り返していたある日、思わずひらめきました。膝へのダメージの少ないトレッドミルなら、長い距離走れるかも?そんな仮説が頭をよぎった木曜日、行動まではす早く、予定の空いていたその週の土曜日に決行することにしました。

 なるべく本番に沿った形で走りたかったので、UTMFのコースを分析し、傾斜や地形をもとに、どの地点をどのスピードで走るかの計画表をつくりました。

 トレッドミルで本番をバーチャル体験する企画。全コースを細分化し、区間ごとに距離とスピードと傾斜と想定時間を決める。その区間をつなぎ合わせると、164kmになるように計算してみました。

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 我ながら、悪くない計画だとほくそ笑みながら、土曜日を迎えました。


〇ジムに迷惑をかけないための自主ルール

 計画では、22時間弱の走行時間となりました。

 それだけの時間、ジムのトレッドミルを占拠できるのか。人に迷惑をかけてもしょうがないので、自主ルールと撤退の基準も設けました。

・1区間終わったら一度トレッドミルから降りて周り状況を確認する。(1区間は30分~95分で計画)。トレッドミルが混んでいるようなら休憩するか、継続をあきらめる。

・長時間使用をジムスタッフや利用者に指摘されたら走行継続をあきらめる。

・最低3回は中断し、ジムの外に出る(エイドタイム=食事や水分補給の休憩時間をとる)

・なるべく利用者がすくなそうな、夕方から翌日の午前中までの時間を使う。

 幸い、ジムの1階がコンビニでした。コンビニの存在は自主ルールの徹底にしても、補給の観点でもありがたかったです。

〇あえてチャンレジを公開してみる

 計画してみたものの、ジムで100マイル走るのは正気の沙汰ではありません。外を走るのと違って、位置自体は1センチも動きません。モチベーションがつづくのか、それが最大の敵でした。

 そのためには、私はあえてこの挑戦をSNSで公開することにしました。特に、知り合いばかりでおそらくみな優しくコメントしてくれそうなFacebookをメインに告知しました。

 友人たちは、驚きながらも予想通り温かいコメントで応援してくれました。モチベーションもあがり、また情報公開したことで逃げることができなくなりました。まさに背水の陣を敷き、ジムにマシンの上に降り立ちました。


 さて、いよいよスタートです。第一区間の傾斜とスピードを設定し、スタートボタンを押しました。いつもの振動音が、心地よく響きます。

 私以外にトレッドミルを使っている人は一人くらい。それもすぐにいなくなりました。このあとずっとトレッドミルを使用しているのは私だけとなります。

 100マイルのペースというはそれほど早くありません。それだけの距離なので、最後まで走りきるためには適性のペースがあります。つとめてリラックスして走りだしました。先は長い。1区間1区間の積み重ねだと自分に言い聞かせて。

 持ち込んだiPadで動画を見たり、途中経過をFacebookに上げたりしながらゆっくり進んでいきました。

 経過としては、1時間ほど走るとやはり膝が痛み出しました。ただ、深刻な状態にはならないレベルです。痛みはなかったことにして走り続けると、騙しながら走ることができました。

 また、30キロあたりの長い上りでは、胃が少し痛くなりました。もともと長い距離を走ると胃痛になるタイプです。ここでもペースを緩めて対処しました。

 50キロ地点到達。少し休みます。実際のレースでも50キロ地点に大きなエイド(補給・休憩地点)があります。胃が、なかなか厳しい。。。


〇自宅から300mのジムで、這いつくばってもだえ苦しむ経験

 66キロ地点のエイドでも休みます。コンビニでいろいろ買って、補給しました。コンビニ、ありがたい。



 長距離を走ると胃が痛くなるのは、血液や栄養分や動いている手足に優先的にまわり、内臓にいきわたらず機能不全を起こすからと言われています。胃痛がすすむと、なにを食べても吐くようになり、補給ができなることで走行不能になります。実際私も胃痛でレースを何度かリタイアしています。

 66キロエイドのあと再度走り始めましたが、これ以上計画より遅れたくないと、プラン通りのスピードで走り続けました。まだ変な意地があったようです。この結果、胃が完全に壊れます。

 78キロのエイドあとは、もはや地獄です。

 歩いたり、止まったり。トレミから降りて座ったり。トイレに行ったら記憶が飛んでいたり。

 それでもまたトレッドミルに戻って、とにかく進みます。もはや、傾斜をつけることはままならず、100マイルもあきらめました。目標を100kmに切り替えて、フラットなランベルトを牛歩のごとく進みます。それでも胃は限界。区間と区間の間では、ジムの更衣室に入って横になったりしていました。

 あたりまえですが、自宅から300mのところで、這いつくばってもだえる経験ははじめてです。すぐ近くには、自宅のベッドもシャワーもあるのに。。。近くて遠い、自宅と家族。。

 このチャレンジを公開していたこともあり、せめて100kmには到達しないとやめられないという心理状態でした。

 空が白み始めました。とぼとぼ進んできましたが、なんとかゴールが見えてきました。トレミの利用者もちらほら増え始めましたのでちょうどいいころ合いです。

 100km到達。結果、16時間半かかりました。体は限界をこえてトランス状態に陥っていました。



〇トレミで100kmの学び

 今回の経験の学びをメモしておきますね。

・膝痛でもトレミなら走れる:もともと膝に負担をかけない長距離トレーニングが目的でしたが、その課題は見事にクリア。

・内臓には容赦ないトレッドミル:膝痛を吹っ飛ばすかの如く発生した怒涛の胃痛。トレッドミルでも、これだけの距離を走ると体調に異常をきたすのですね。要は、筋肉や関節には優しいが、内臓には容赦ないのがトレッドミルさんでした。

・ひらめいたらすぐ行動!の功罪:今回、即行動!を実践したのですが、これにはメリットデメリットありますね。普通、100km以上走る場合は最低でも1週間前から体調や睡眠、食事などあらゆるケアと準備をしてのぞみます。今回は急すぎてその時間を取れませんでした。それが、胃痛という結果に表れています。トレッドミルをなめていたのでしょうか。

・チャレンジの情報公開はすべし!:納得できる距離まで走り切れたのは、情報発信して背水の陣を敷いたから。今年の目標がアウトプットと発信だったので、これは予想通りよい結果をもたらしてくれました。ただ、胃痛でもだえている最中は、なんで人目を忍んでこっそり走らなかったのか、自分を呪いましたが。。。


 以上です。みなさんもトレミで100km挑戦してみてくださいね。いろんな発見があると思うので、ぜひシェアしてください。

ちなみに、目標としていたウルトラレースUTMFは、コロナの悪化で中止になってしまいました。

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