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マルちゃん焼そば 3人前

大学入学以降ずっと一人暮らしを続けているが、以前は母と二人暮らしだった。
中学生の時に父を亡くし、程なく兄が大学進学をしてからの4年間のことである。
一人暮らし期間の方が長くなった今、二人で過ごした時間は僅かであったことに気付かされる。

思春期真っ只中の私と母の二人暮らしは衝突の連続だったと思う。
心ない言葉で幾度となく傷つけたのはいつも私で、一方的にぶつかっていったというのが正しいのだろうが。
それでも不思議なもので兄と三人暮らしの時の方が私と母の折り合いは悪かった。
どうやっても二人で一緒に生きていかないといけないというある種の諦めもあったのか、コミュニティの中で一番仲良いやつを見つけるみたいなことなのか、いまだに謎である。

そんな二人暮らし時代に晩ご飯でよく食べていたのが「マルちゃん焼きそば 3人前」だ。
ソフト麺3袋入り、粉末ソースの付いた美味しいやつ(麺の小袋が油でべちゃっとするのは改善して欲しい)。

ホットプレートを食卓に出し、まず野菜を炒める。
野菜に十分火が通ったら麺を加えて粉末ソースをかける。
小皿に取って食べる。
調理から食べ終えるまで、母と会話をしながら食卓で完結することがほとんどだった。
毎日仕事で遅く帰ってきて、気がついたらソファで寝ている母と会話する機会が少なかったこともあり、ホットプレートを囲んだことは苦い思い出が多い二人暮らしの中で楽しい記憶として残っている(そう言えるのはきっと今現在の距離感も関係している)。
母はどうだろうか。

今もたまに「マルちゃん焼きそば 3人前」を買うことがある。
量が多いので必ず二日間かけて食べることになるが、それでも買ってしまうのは値段の安さ以上のことがあるのだと思う。
毎度の買い物でそんな繊細になっていられないけれど、過去の大事な時間をたまに思い出すくらいは許されるはずだ。

いつかは親の立場から焼きそばを振る舞うことがあるのだろうか。
今のところ全く展望はないのだが。

#家族の物語

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