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弱小アマチュアが日本の「コード至上主義」に噛みついてみる

前口上

プロもアマも上級者も初心者も、作曲してる人は音楽が大好きということに変わりありません。

じゃあどこが違うか、というと、「お金をもらえるだけの力があるか」ということになるわけですが、その力の尺度が日本と海外ではだいぶ違うのではないか、更にはこのままでいいのか? という話です。

たぶん、これまで何千回と議論されてきた話だとは思いますが、自分なりに思うところを書かせて頂きます。

コードは道具である、と思う、たぶん

まずは

ざっくり自分のスペックを記します。

→楽器はアコギを少々(メロディは弾けないヘタレ)
→DTMを本格的に始めてから5年ほど
→ボカロ曲を多数制作するも、数字的には木っ端ミジンコ
→AudiostockにBGM、効果音を登録。毎月のサブスク収入は牛丼一杯程度。時々お買い上げ頂くことも(本当にありがとうございます)

たぶん自分のルーツは米国ロックで、一番好きなバンドはR.E.M.です。
(海外に比して、日本での知名度が不当に低いので宣伝に一曲張り付けます。世界が震えた名曲。現時点で再生回数なんと11憶回越え。どうだ、凄いだろう)

…と脇道にそれて少々吠えてみました。

自分が作曲する場合

自分の場合ですが、

→アコギでシンプルなコード進行を繰り返し弾いて
→浮かんだメロディをウソ英語で歌い
→それをボイスメモに録音
→後日、恥ずかしさに身もだえしながら録音したものを聞き
→「お、これはいいやん」と思ったものをピックアップして肉付け
→歌モノの場合は、後から歌詞をのせる

…というやり方で曲を作っています。

インスト曲だとちょっと違ってきますが、両者ともコードはあくまでシンプルです(洒落たコード進行してたら、プラグインやアシスト機能のおかげです)

なぜ自分はコードにこだわらないのか

端的に自分の考えを述べると、4つのコードで十分曲は作れる、と思っています。
もちろん3コードでもOK、ちょっと幅を持たせたいと思っても、転調しない限り、6、7コードあれば無問題です。

TwitterのTLを眺めていると定期、不定期でコードの話が出てきます。
その中には、「コードとどう向き合うべきか」「コードの勉強は必要?」といったトピックもあります。

そして大抵は、

「出来上がった物はシンプルでもいいけど、使えないのと、使えるけど使わない、は大違い。色んなコードを使いこなせるほうが断然良い」

という結論に落ち着いているような気がします。

ぐうの音も出ない正論ですね。

でも正論が正しいとは限らないのが世の常でありまして。

僕の場合、複雑なコードが良く分からないというのもありますが、そもそも

 コード進行にあんまり興味がわかない

というのが一番心情に近いと思います。

コードに対して興味が薄い理由は以下の通り。

(1)シンプルなコードでも曲が作れてしまう
(2)コードは手段であり道具、それ以上のものではない、と思う
(3)自分が好んで聴いてきた曲(主に洋楽)がそもそもコードがシンプル
  (Hiphopとか基本ワンコードですしね)
(4)世界で売れている曲の多くが、シンプルなコード展開

だいたいこんなところでしょうか。

「ここは日本だ」というご意見は分かる

さて。
上記のようなことをつぶやいたところで、「ここは日本で、J-POPは複雑なコード進行に複雑なメロディが好まれるから、コードできないとダメだろ、はい論破」と言われてお終いなのは承知しています。

でも、「コード至上主義」はビジネス的にも以下のような弊害があると思うのです。

・日本人に好まれるところだけを狙い続けても、収益は頭打ちになる
・メロディセンス、リズムパターンなど他の部分で魅力あるクリエイターが、コード進行のシンプルさを理由にふるい落とされて埋もれてしまう

ここで一例を挙げます。

僕はDTM関連のコンテスト、コンペにはなるべく参加するようにしています(残念ながら結果は出ていませんが)

コンテスト、コンペって、応募した側からすると分かるのは結果だけで、「なぜ選外だったのか」というのは他の受賞曲から推測するしかないのが現状です。

そんな中、選考基準を明確に示している、とあるコンペがありました。
「おお」と思いました。
チャレンジャーに優しい主催者だ、と感激しました。

で、その選考基準を見ていったところ、(全部は覚えていませんが)「展開」「メロディ」などと共に「コード」というのがありました。
僕はその時点でテンションが下がり、結局パスすることにしました。

なぜ楽曲の良しあしを決める際に、コードが一つの基準になるのか、僕にはいまだもって分かりません。

使われたコード数や、コード進行の複雑さで曲のクオリティ&人気が決まるのであれば、J-POPは世界で覇権を握っているはずです。
が、そうはなっていません。

ちょっと無理やりだが「世界」「海外」との比較

はじめに回答編

↑こちらのブログに分かりやすくまとめられていました。
読みやすい。
ありがとうございます。

世界、海外というくくり方が雑ですが

世界、海外といってもたくさんの国があり、それぞれに文化があるので、「日本と世界」「日本と海外」という語り口には無理があるとは思います。

とりあえず、世界のミュージックシーンをけん引する音楽大国であるアメリカ&イギリスと日本との比較を軸に語っていきたいと思います。

使用コードの数比較

・セブンスや分数コード等も1としてカウントしました
・選んだサンプルは思いつきです
・できるだけ幅広い年代を意識しました
・多少のずれはあると思います。目安とお考え下さい。
・転調がある場合、転調後のコードはカウントに入れていません

まずはJ-POPから。

back number 「高嶺の花子さん」    19種類
YOASOBI  「夜に駆ける」       8種類
ゴダイゴ  「ガンダーラ」      18種類
Mr.Children 「名もなき詩」      17種類
AKB48   「ヘビーローテーション」  15種類
はしだのりひことシューベルツ 「風」  5種類
米津玄師  「レモン」         9種類
吉幾三   「雪國」          9種類
Official髭男dism 「ミックスナッツ」  15種類
あいみょん 「マリーゴールド」     7種類

↑この中で印象的だったのは「ヘビーローテーション」
基本は5つくらいのコードで回してるのに、オーラス前のブリッジ部分で洒落たコードをこれでもかと投入。
なるほど、こういうやり方もあるのか、と思いました(コードにはこだわらない、と言っておきながら、少し感心した自分がいる)
 

次はアメリカ、イギリスのアーティストの楽曲から。

R.E.M.                                 Losing My Religion               9種類
Lizzo                                   About Damn Time               10種類
Katy Perry                           Firework          5種類
Whitney Houston               I Will Always Love You         12種類
Post malone                       Circles                                      7種類
Ed Sheeran                         Perfect                                     7種類
The Beatles                         A Hard Days Night               10種類
Dua Lipa                             One Kiss                                   5種類
Oasis                                  Wonderwall                               5種類
Duran Duran                      The Reflex                              10種類

↑選曲はランダムと書きましたが、Hiphop系やEDM系は意図的に外しました

コード数比較の寸評

僕はリサーチを整えてから記事を書いているわけではありません。
なので、上記の使用コード数比較についても、「米英は日本に比べてめっちゃシンプル。ほらね!」という結果が得られるかな、と思ってざっと調べてみましたが、結局曲次第、という結果でした(まあ、そりゃそうだ)

ただ、平均(または中央値)を採ってみれば、米英の方が日本に比べて、コード進行があっさりしていることは間違いないでしょう。

次に曲の構成、展開

これについては、データではなかなか比べられないので、二つほど例を挙げさせてもらいます。

2014年頃だったと思いますが、UKやEU中心に(日本風に言えば)Aメロと間奏だけで構成された超シンプルな曲が流行りました。
そのうちの一曲がこれ。

天才DJ&プロデューサー、ロビン・シュルツが手掛けたこの曲。
世界中で大ヒットしました。
僕も鬼のように聴きまくりましたが、日本では全くの無風だったように記憶しています。

もう一例はこちら

ファーギーの「ロンドン・ブリッジ」、堂々の全米ナンバーワンヒットです。
僕は音色を絞り込んだ、グルーブ重視の曲が大好物なんですが、こういうタイプの曲は日本でなかなかお目にかかれません。

欲しいのは勝ち負けのジャッジではなく多様性

さて、そろそろ締めに入りたいと思います。

僕は洋楽を聴くことの方が多いですが、日本のポップ、ロックも聴きますし、好きなアーティストもたくさんいます。
ただ、推しのアーティストの中には、なかなかセールスに恵まれず苦戦している人(バンド)もいます。
なぜこの才能が評価されない、という人(バンド)が結構います。

おそらくですが。
僕を含め、J-POPと洋楽の比較を行って、「洋楽はもっとシンプルだよ」と力説している人間は、別にJ-POPをけなしたいからそう言っているわけではありません。
J-POPも好きだけど、もっと多様な日本語曲を聴きたいし、せっかくなら日本人アーティストがもっと世界で活躍してほしい…そう思っているからこそ、コード進行、メロディ展開が複雑なほど「プロの技」と評価される日本の空気は変えていくべきでは、と考えているわけです。

タイトルの割にはマイルドな着地点に落ち着きましたが、以上で本稿を終わりにしたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。




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