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#4 前へならえ

僕は背が低い
どれくらいかって言ったら

学年で一番

身長伸びたらいいなと思うけど、小さくてもいいかな



もうすぐ運動会
だから、行進とか整列とかいっぱい練習するんだ

つまんないよね

でもさ、僕はいつだって先頭なの
いいでしょ

だから、僕は小さくていいんだ




あ、負け惜しみだって思ったでしょ


僕は知ってるよ
みんな僕のことを見下してるの

みんなが見下すのは仕方ないのかな
だって僕の背が低いから

先生だって友達だってお母さんだってお父さんだって
僕と話すためには見下すしかないんだもんね、きっと


でも、僕の家にいるゴマは僕のことを見下さない
ゴマは僕の家で飼ってる犬のことね

僕は世界で一番ゴマのことが大好きなの
見下してこないから
もちろん僕もゴマのことは見下してないよ


何言ってるんだろう?って思った?




じゃあさ、考えてみてほしいんだけど、
みんなは赤ちゃんとか犬とか猫とかと話す時見下して話してる?



そういえば、
この前公園で会ったおばあさんとは目線がいっしょだったな


目線がいっしょっなのって
僕にとっては嬉しいことなんだよね


こんなことでも嬉しいって思えるのは僕の特権


背の低い僕の特権は
やっぱりいつでも先頭に立てるってことだよね

さっきも言ったけど先頭に立てるから小さくていいんだ


やっぱり負け惜しみだと思ったでしょ


他のみんなは僕についてこないといけないんだよ
僕について行きたくなくても
そもそも何も気持ちがなくても
みんな僕についてくるの


偉いよね


僕の後ろの人は
僕の少し低い頭を見ながら歩いて
その後ろの人は
僕の少し低い頭を見てる人の少し低い頭を見ながら歩いて
その後ろの人は

もう言わないけどさ
文句ひとつ言わずに

偉いよね



前へならえ

僕が一番楽だよね
前へならえの時も

僕の後ろの人は
僕の少し低い頭を見ながら腕を前に伸ばして
その後ろの人は
僕の少し低い頭を見てる人の少し低い頭を見ながら腕を前に伸ばして
その後ろの人は

偉いよね



せっかく楽しい運動会も

僕の後ろの人は
運動会が始まる時も僕の頭が目の中にあって
運動会が終わる時も僕の頭が目の中にあるの
その後ろの人も

さすがにしつこかった




僕は背が小さくてよかったと思うんだ




最後まで読んでくださりありがとうございます😊

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