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影の濃さ、信じることの裏表「屋根裏のラジャー」

#ネタバレ


幸運にも試写会で観れたのが先月のこと、なかなかまとまらず放置して今という感じで

設定まわりにいろいろ思うことはありつつ、最後までしっかり面白く観れる作品ではあったしなんなら泣いた、人によってはとんでもない深さで刺さるんじゃないかな〜!



人間の想像から生まれたイマジナリーフレンドたちを中心として進む物語、ちょうどトイストーリー(特に3)とインサイド・ヘッドを足してリメンバーミーで割った感じの!完全にピクサー型のストーリーではあったので既視感はかなりのものだった、物語の起伏込みで


設定周りの説明がけっこう多くて理屈っぽい作りなのはね、「子どもたちの自由なイマジネーション」という主軸とやや相性悪い感じはしたかな

しかしと言うか!だからこそ、ラジャーが生まれた理由はさすがに強烈だった、、、3ヶ月と3週間と3日、健気にも程があるし名前まできっちり回収するのは見事、イマジナリーフレンドの悲しい側面をこれでもかと掘り下げてる


そういう切実さがあればこそ、「子どもから想像力を根こそぎ奪うもの」としての悪役が存在感ばっちりに暗躍することにも納得感があり

単に物語上の役割としての悪役、と言うよりは明確に児童虐待とかの子どもをおびやかす悪意そのものという感じがした、その悪意が「食べる」という手段で達成されるのもまた生々しくて気色悪い

ホラー的な恐怖演出もけっこう本気で、観客を怖がらせることに手を抜いてないと思ったな〜

あとは寺田心の驚異的な演技力、これはキャリアと実力の成せる技だよねーーーすごかった、他のキャラクターも声の演技に違和感を覚える部分はなかったな


アニメーションとして、という点ではやっぱり影のつけ方が特徴的だった、立体感と言うよりはむしろ絵本のような2D寄りの風合いで

シリアスな要素の多い作品である分、絵のおとぎ話感が強まるのはバランスとしてちょうどいい気はするけど、あまり見たことない奇妙さもあって不思議な余韻がある

ただこれパンフによるとこれは描いたわけではなく、最新技術で後から付けたデジタルの影だそうで、これからもっと進歩していくということみたい

であれば今後はさらに自然な影がつくようになっていくのかな?それはそれで退屈な気もするけど、作り手の効率化ということにはなるのかも

そういう影のこともあって絵本っぽくリアリティ低めな映像ではあるので、イマジナリが絡んで現実と想像を行ったり来たりする伸びやかな描き方はむしろ実写映画で見たい感じだったかも



リアリティという点では!やっぱりどうしてもノイズになったのは日本語と英語の使い分け、これはどういう基準で決めたんだ…

セリフにおいては別にね、英語を話してるけど便宜上は日本語のセリフということでいいんだと思うし、お母さんのセリフ回しから察するに恐らくは洋画の日本語吹き替えっぽいイメージなんだろう

でも文字は!!!!!英語と日本語の混ざり方がすごく気持ち悪い、英語の看板・日本語の手紙・英語の本、どうやら日本出身とかそういう設定もないみたいだし、であればどっちかにしてほしい

これはこっちが勝手に前提を作ってしまうからなんだろうか、それこそピクサー映画でひらがな・カタカナが出てきてもそれはそういう配慮としてスッと受け取ってきたけど

日本のアニメという前提がゆえにここまで気になってしまうのか…?イマジナリという存在があることで現実と想像の境界が揺らぐ、ということとは全く別問題な気はする、とにかくノイズだった

他にも例えば怪獣図鑑を読んでる子どもの想像遊びに怪獣が一切出てこないこととか、そういう別にいいけどな噛み合わなさがどうにも気持ち良くなかったりする感じはあった…
「さっき出てきたあの子の!」ってなりたいのに、でもまぁそれは子どもの豊かな想像力と好奇心がゆえということなのかな


最終的にイマジナリーフレンドとの関係性において安易な「卒業」を設定せず、大人も子どもも関係なく、信じる気持ちを持つことの大切さを描いてくれてるのはとても好きな点でした

ましてそれが辛い時の支えになってくれるというのは、信じる対象が現実であろうとなかろうと関係ないことでもあって、そこに説教を挟まない優しさが嬉しかった


信じたいものを信じることが大事、というメッセージは裏を返せばなかなか危険な考え方でもあると思うので、その意味ではやや極端とも言えるけど!
だからこそ強い主軸たりえる明確な思い、これは観客としてもまっすぐ受け取れてよかった

ただそういった強いメッセージの横で、救われなかった命がいくらなんでも救われなさすぎるというのはね…
さりげなく、かつ逃げずに命の不可逆性を描いてるとも言えるけど、でもほらおとぎ話としてはさ!と言いたくなる部分ではあったな、脇役は結局のところ脇役に終始してしまってた


舞台挨拶で「イマジナリはいますか?」的な話題になった時には見てて少し置いてけぼり感あったけど

でも小さい頃にごっこ遊びで怪獣と戦ったりしてた時の脳内リアリティは、確かに今回描かれたような伸び伸びとしたカラフルさとダイナミックさに満ちてた気もするな〜とは思った


これを観て、豊かなイマジネーションに魅了されつつ静かなトラウマを植えつけられる子どもたちが羨ましくもある!

正しく子ども向けであり、それでいて大人にこそ刺さる部分もあるなかなか豊かな作品でした、主題歌も派手すぎず素敵な曲だった


試写会に参加するのは初めてのことだったのでその楽しさもいい思い出になった、ポストカードを「おみやげ」と呼んで渡してくれるのもなんか特別感あったな




#映画 #屋根裏のラジャー #感想

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