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夢とキリンと現実と、優しく溶け合う「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」


#ネタバレ


しっかり面白かった、やっぱりおとぎ話はこうあってほしいものよ!!!
のびのびとした想像力をまっすぐな倫理観とユーモアで下支えして、ミュージカルとしてひとつの理想的な形を実現してると感じました、キリン映画としても最高



子どもの頃にそれはそれは繰り返し観た、なんならウンパルンパの歌パートだけリピートしてたティム・バートン版を楽しく思い出しつつ、とはいえ今回は旧作「夢のチョコレート工場」の前日譚だということでそちらもこの機会に初めて観て、なんなら原作も読みまして

いや〜まず旧作はストーリーが充実してることに驚いた、というよりティム・バートン版がどれほど剛腕な変化球だったか痛感した

楽しいミュージカル映画であり、キャラクターの感情や願いを時間かけて描くまっとうなドラマでもあり、終始しっかり見応えがあった…
工場のセットをとことん作り込んだ実写ならではの驚きもあって、単なるレトロ趣味ではなく普通に楽しく観れました


そして監督ポール・キング、これは個人的に絶賛してやまない実写パディントンの監督ということでかなり楽しみにしてた部分でもあって!

この機会に改めて観たパディントン2作、言うまでもなく両方とも大満足の面白さだった、どちらも描き込みの細かい絵本のような映画で

マジカルでカラフル、すみずみまで笑えるユーモアをテンポよく上品に織り込む語りのきめ細かさ、ダレない程度に物事がゆっくり進むテンポ感だったり、とにかく安心して物語に没入できた

ちょうどハリーポッターくらいの程よくダイナミックな画づくりが懐かしいし、あとストーリーの緩急という点でも落とす所はしっかり落とす、そこからの盛り上げも含めて優しくスローなジェットコースターって感じの味わい

そしてそれらをブレない倫理観とメッセージで編み上げる、子どもにも手が届くリッチさで満ちた宝箱という印象でやっぱり好きな映画でしたこのシリーズ
まぁ1は養護施設ネタとか明確に無神経な部分もあったりはして、そこら辺のチューニングはウォンカでも心配だなとは思ったけど


しかしこれ今回のウォンカ、日本での宣伝は困っただろうな…旧作の知名度はティム・バートン版と比べれば大きく劣るのが現状だろうし、とはいえ今の売り方だと戸惑う人が続出するのは避けられないと思う
というか続編のあり方として奇妙すぎるもんなティム・バートン版をスルーするというのは

もしかすると海外だと旧作もしっかり市民権を得てるということなのかもしれない、とは思ったけど



ということで監督の過去作およびウォンカ旧作を踏まえたうえで今回、もうね〜まず冒頭からしっっかり楽しくて!!
話の導入として見事な1曲目、ミュージカル映画として楽しいことはもちろん、ティモシー・シャラメの表現力にも驚かされた

ステッキの振り方ひとつ取っても品の良さが溢れてたけど、とはいえシャラメ感というよりはウォンカ感、ちゃんと物語の主人公としてスッと飲み込めるたたずまいで終始演じてくれたのが嬉しくて

改めてウィリー・ウォンカというキャラクター自体の魅力、とんでもないものがあるなという実感に浸りながらワクワクする幕開けだった


ストーリーについては、個人的には少しだけ子ども向けすぎるかな〜とは感じた!
そのことの是非とかじゃなく対象年齢の絞り方という意味で、大人が驚ける要素がやや少なめではあったかなという感じ

序盤の契約書のくだりは特にそれ、こういうベタ展開も嫌いじゃないけどさすがに退屈さは否めないかな…という部分がいくつかありました

いま何のためにこれをしてるのか、という動機とか目的の部分もどこか散らかってる印象で、パディントンと比べて人間どうしが分かり合う具体的な描写があまり見られなかったのも不満のひとつではあった

加えて今回はウォンカの作るチョコレートが人の感情や行動に影響を与えたりする、単に美味しさというよりはドラッグ的なそれでもあったりするので!!感情移入が少し難しく感じたのはそのあたりも理由なのかも


あとは後半の展開で、「キャラクターが自分の特技や能力を活かすことで成功に繋がる」というパディントンでも特徴的だったやつをまたやってるんだけど

主要キャラクターみんなの個性を活かすことには普通に失敗してるように見えた、これはもう1回観て検証したいな…コメディアンの人とか何してた?

別に特有の個性を発揮することだけが正解とは思ってないけど、でも劇中で何度も「このメンバーだから成功する」みたいなこと言うんだもんな〜それはその気分で観ちゃうって

でもこれ「全員活かす」のに失敗してたというだけで、成功してる部分はやっぱりベタと思いつつ感動しちゃうもんなーーずるい、文字を教えてもらったから!のくだりとか最高



あとはミュージカルという件でもう一点、最近よく予告編でやってるような、ドアとかの物音でリズムを刻むやつ、あれをミュージカル以外でも本編の至るところでやってたわけだけど!
これがね〜「夢は世界中に満ちている」ということの表現方法としてまた見事だったなという感動がありまして、これテーマにも繋がる大切なポイントという気がしてて



ミュージカルパートとそれ以外の非ミュージカルパートのふたつに分けるとして、その境目をあえて曖昧にすることは、言い換えれば夢と現実の境目が曖昧になるということでもあると思うのだけど

そのバランスのおかげで例えば「この現実の延長線上に夢がある」とか「嘘みたいなことが現実になる」みたいないわゆる夢物語、フィクション上の大嘘にも一定の説得力が増すということだと思うんよね!信じてみたくなる

例えばあの警備員と女性との電話でのやり取り、単なるギャグのひとつとして終わらせて全然問題ないところをああいう展開にしてるのはきっと作品全体のメッセージとも呼応する部分だからなんだろう、作中で最もくだらないエピソードなのにしっかり泣ける


さらにはキリンのかわいさとかね、誰でも知ってる動物だし特別何かデフォルメしてるかんじでもないのに!こんなにもかわいい、この驚きもまた夢と現実を優しく混ぜ合わせてくれた

あとは劇中で流れるどの曲も素晴らしかったけど、とりわけ旧作でも印象的だった「ピュア・イマジネーション」の使い方ね!!!

旧作だとチョコレート工場を案内する時に歌う曲、工場がどれだけ豊かなアイデアとイマジネーションに満ちてるか歌うみたいな場面だったと思うんだけど

今回これがねーーー最後のあれ、アイデアもイマジネーションも根底には愛と分かち合いがあるということをあれほど美しく、しかも夢ではなく現実として描くのはちょっといくらなんでも見事すぎた、そこに至るまでの雑なサスペンス要素とか全部吹っ飛ぶくらいには感動してしまった

しかし旧作でも思ったけどこの曲ちょっと素晴らしすぎる、歌詞の内容もさることながらどんだけ美麗なメロディーなんだ



とはいえまぁ感動的なテーマに関してはその弊害と言うべきか、苦労した割にいつの間にか解決してたりする出来事もけっこう多くあったような気がして、納得感が低めな要素も含まれてたのは間違いないとは思う…
これはもう一回観れば解消できるくらいには作り込んであるはずとも思ってるけど

このあたりは冒頭からウォンカが帽子の中からティーセット出したりして、もうそういうリアリティーの世界ですよと言ってくれてはいるからね、気にしたら負けなんだろうけど


そういえばCGの使い方に関しては、良くも悪くも普通って感じだったかな

過去2作がセットの見事さで楽しませてくれる作品だったことを考えると、お菓子はともかくセットとウンパルンパのCGっぽさが強調される部分は少し物足りなかったかも


「分け合う」ことの大切さについての取ってつけたようなメッセージも、もう一度観れば何か丁寧な作劇に気づけるかもしれないと思えるくらいには!
やっぱり根底に流れる優しさが心地良い映画だったし、分け合うためのチョコレート工場という繋げ方も好きでした



なんやかんや五感で楽しく心にもあたたかい、いろんなものが溶け合って優しい甘さと香りに満ちた、現代にふさわしい素敵なおとぎ話だったと思います!!続編やる余地も全然あるだろうからどんどんやってほしい



#映画 #ウォンカ #ウォンカとチョコレート工場のはじまり #感想

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