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鬼ハンデビュー

中学1年生の頃、深夜に学校から自宅に電話がかかってきた。
母曰く「〇〇さん(私)の自転車がゲームセンターに停まっているのですが、〇〇さん大丈夫そうでしょうか?」のような内容の電話だったらしい。
授業中にノートの端っこでパラパラ漫画を描いたり、ディズニーランドのガイドブックを読んだり、窓側の席だったので空の様子をアホみたいに眺めたりしていたせいで、入学してすぐのテストの日程を知らずにいたら、テストの結果が眉毛全剃りのタバコを吸う感じのスタイルのヤンチャな男の子と並ぶくらいの成績だったために、私もその道に片足突っ込んでいるのでは、と心配されたらしい。

〈ヤンチャフレンズを率いる私〉

電話があったのが金曜日だったので、次の日のお昼頃、一人でゲームセンターまで私の自転車を迎えにいった。恐らく、私の家に停めていた自転車を、ヤンチャスタイルに進化したかつての友人が勝手に深夜のゲームセンターに乗り捨てて行ったという流れだと思われる。
ゲームセンターの駐輪場に行くと、私の字で私の名前が書かれた自転車が、鬼ハン仕様に進化していた。正直、意外とイケてるじゃん、と思った。少しの間鬼ハンの形を眺めてから、鬼の角みたいに上に曲がったハンドルを直そうとしたら、なかなか元通りにできなかったので、仕方なく私は鬼ハンの形態のまま自転車を漕いで家まで帰った。やっぱり恥ずかしかった。私が鬼ハンの自転車に乗っているというのは、例えば「全校集会で校長先生が全身タイツでお話をする」とか「校長先生がホッピングを子供からぶんどって遊び出す」とか、変な例しか思いつかないが、

〈全身タイツで全校集会をする校長〉
〈ホッピングにハマる校長〉

とにかく奇妙な光景なので、鬼ハン自転車に乗っているのが私であるということを隠すためにいつもよりガニ股で自転車を漕いで、顔も眉間に皺を寄せていつもより人相悪めにしておいた。

〈鬼ハン自転車で帰る私〉

月曜日、学校に行くと「お前、鬼ハンで自転車漕いでたよね」と友人に言われた。
ただガニ股の変な顔した私が鬼ハンの自転車を漕いでいたという光景だったことに気づいて、恥ずかしさを自分で倍増させて終わった。

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