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M山木の*怪盗(8)

(註)本文に登場する地名、人名、団体は実在のものとは一切関係ありません。

読者の皆様こんにちは狂わしの*です。皆々からはア怪と呼ばれているわ。
気分が朗らかよ。梅干しの種を飲みこんでしまって一時はどうなるかと思ったけれど。酸っぱい経験もときには糧となるものね。視覚聴覚触覚味覚嗅覚。どれひとつとして捨てられないわ。
第六感という言葉があるけれど第七感や第八感というものもあるのかしら。すべて理屈で説明できると思ったら大間違い。手探りで勘所をまさぐって刺激してあげないと男は悦ばないわ。

嗚呼、盗み足りない。世の中の男子学生を根こそぎ奪ったところで私は満足できるかしら。複数回肌を重ね合わせるなんて考えられない。
好きこそ物の上手なれということわざがあるけれど下手こそ物の上手なれの間違いじゃないかしら。
下手だからいい。一生懸命だからいい。一心不乱な姿を観察していると共鳴して私の躰も濡れてくる。植物のように水分が切った先から出てきて一時的に失うことになっても新たな生命の息吹をそこにみることができる。

時々泣き足りないんじゃないかとも思うの。
笑うのと同じくらいに泣くことを大事にしてて行為の終わったあとに夜の街で嗚咽を漏らして消えていく。専門家だから行為の最中は楽しませることに徹して男の性を植えつけることに必死だけど終わるとそこはかのない満足感と途方のない悲しさが心の周りを渦のように掴んで離さない。
泣いて泣いて笑って笑ってみんな幸せになる。

私は愛を与えることができているのだろうか。
私は性を与えることができているのだろうか。

盗むだけが怪盗の仕事ではない。
職業の妥当性についてア怪は日頃から思案を怠らなかった。

断捨離を推し進めた結果、男の子が寄ってこなくなりました。