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M山木の*怪盗(28)

(註)本文に登場する地名、人名、団体は実在のものとは一切関係ありません。

●前回までのあらすじ●
M山木に*怪盗あり——
年齢不詳、容姿端麗、神出鬼没。
先祖代々大怪盗を生業にしてきた*怪盗ことア怪が盗むのは、無垢な男子学生の初めての経験。ア怪と明痴の正面対決が勃発。
ア怪とK都府警、聖年探偵団に明痴探偵を交えた性の交錯はどこを目指して進むのか。

●主要登場人物●
https://note.com/potaro/n/nd1841ffbe7df

帝都旅館の茂みのなかで二人の青年が身体を寄せ合っていました。
「静かな湖畔の森の影から」一人の青年が呟くと「男と女の声がする」ともう一人の青年が答えました。
二人の青年は「離」の間を凝視し事の発展が無いことを祈っていました。

K都府警の部隊が帝都旅館に潜入してから少ししたときのこと。帝都旅館の表から一人の女性が出てくるのが歩柴青年の視界の片隅にうつりました。
「誰かいる」歩柴青年は小林青年の太腿を掴んで二人は慌てて明かりのする方向に飛び出していきました。表に止まっている車の扉を開けようとして二人の足音に気づいた女性は青年の方に顔を静かにむけました。
目が明るさに慣れないせいもあり逆光で女性の顔はよく見えません。
「あらあら可愛い子たちだこと」
女性は車のなかからあるものを取り出して跪くと顔を近づけるのでした。
「氷菓子をあげるわ」二人の青年は黙って受け取ると顔を見合わせて笑いました。小林青年の氷菓子がみるみる溶けていくのです。
「あら溶けた。嫌だ。貴方は童貞ではないのね。でーてーではないのね。可笑しいわ。仲睦まじいふりをして先に卒業してしまったのね。二人の友情の間には越えられない一線があるのね。嗚呼美しい。綺麗だわ。見せかけだけの絆とやらは。貴方は楽しい性活を毎日送っているのね。一方の君といったら。退屈じゃないの。新世界を切り開きたくないの。一緒に氷菓子を溶かしましょうよ。お姉さんが手解きしてあげるわ。言いつけを守ってくれさえすればいいのよ。素朴も純朴も捨ててしまいなさい。粗野でいいのよ。不躾でいいのよ。たんまり味わえばいいの。心の髄まで搾り取られて吸い尽くしてあげたいわ・・・神様って決して平等ではないのね。いけないいけないつい饒舌になってしまった。御免なさいね。素敵な二人」
女性は二人の髪を片手でそれぞれ撫でると「また逢いましょうね」と言って車に乗って旅館を後にしてしまいました。

歩柴青年の頭のなかでは女性の「御免なさいね」という声が引っ掛かりました。小林青年が腕を引っ張るまで呆然とした様子で表情ひとつ変えずに立っているのです。
歩柴青年の氷菓子は最後まで溶けることがありませんでした。

断捨離を推し進めた結果、男の子が寄ってこなくなりました。