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M山木の*怪盗(13)

(註)本文に登場する地名、人名、団体は実在のものとは一切関係ありません。

張形警部は机で書き物をしていた。
美男子と呼ばれた男が美女に誘拐される物語だった。調書で隠された用紙に時間を見つけては文章をしたためるのだった。

「見つけましたよ〜」無線機が反応して男の子の声がした。
張形警部は美女の言い分に感動し一緒に自首ではなく逃亡を図ることになった美男子に自分を重ね合わせていた。

「歩次朗学園で実地調査してましたよ〜」
男の子が明るい声が美男子の幼年時代を回想させる。
美男子は無難男子だった。地味で古風で噛みしめないと雅なところや奥ゆかさが感じられない文化に造詣がある男子だった。
甲高い声を押し殺すように男子は暗いところを好んでいた。

「女からの無線か」穴掘警部が巨体を寄せてくる。
「無知な警部を騙せちゃった」「ええなあ、張形も隅に置けん奴ちゃな」
「穴掘さんですよね張形警部と同じ穴の」穴掘警部の体が横に揺れた。
「同じ穴て何やねん」穴掘警部の手が張形警部に触れる。張形警部は手を止めると急に顔を赤らめて早口で言葉を発した。
「ア怪の調査を依頼している探偵さん詳しくは後で説明するけど凄腕の方やから信用に足るその筋では有名な偉い人」「俺を遠ざけようとしていないか」「仲良しなんですね〜ア怪情報は要らないんですね〜」「いるいる」
張形警部と穴掘警部は同時に声を張り上げた。小林青年は笑っていた。

断捨離を推し進めた結果、男の子が寄ってこなくなりました。