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M山木の*怪盗(21)

(註)本文に登場する地名、人名、団体は実在のものとは一切関係ありません。

●前回までのあらすじ●
M山木に*怪盗あり——
年齢不詳、容姿端麗、神出鬼没。
先祖代々大怪盗を生業にしてきた*怪盗ことア怪が盗むのは、無垢な男子学生の初めての経験。歩柴青年は草むらのなかで女と出会った。
ア怪とK都府警、聖年探偵団を交えた性の交錯はどこを目指して進むのか。

●主要登場人物●
https://note.com/potaro/n/nd1841ffbe7df

金と権力。双方とも全く興味がない。歳を重ねてようやく手に入れられるご褒美は若さと引き換えにすがりつくには余りにも代償が多すぎる。家柄も美貌も持ち合わせている殿方も面白みがなく退屈よ。

先程出会ったのは実に良く出来た典型的な男だったわ。
私は彼を頂きたいの。否。
世間に磨かれた原石ほど見苦しいものはないわ。磨くのは私の天職だから。女は独り言を空に吐いた。

張形警部と穴掘警部は現場へ急いでいた。
「どうやら現場に林檎が落ちていたそうじゃないか」
張形警部は髪を掻きむしる。
「林檎には歯型がついていたらしいね」
穴掘警部は息切れを起こし巨体が揺れている。
「そうなんだっけ」張形警部は脚を掻いた。
「歯型には虫歯の跡があるらしいよ」
穴掘警部は張形警部との距離を詰めるのに必死だ。
「なんだかなあ」張形警部は耳に手を入れた。
「candy好きに違いない」穴掘警部は勝ち誇ったように宣告する。
張形警部は途方にくれていると穴掘警部は続けた。
「儂は林檎もcandyも好きだ」儂の推理に間違いはないのだと。
「被害者は男子学生なんだろ」張形警部の顔が途端に明るくなる。
「泥棒猫め今度こそお縄を頂戴してやる」
まだア怪とは決まったわけじゃないぞという穴掘警部の声を尻目に張形警部の足取りは更に軽くなるのだった。

断捨離を推し進めた結果、男の子が寄ってこなくなりました。