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M山木の*怪盗(14)

(註)本文に登場する地名、人名、団体は実在のものとは一切関係ありません。

夜が来て鏡を見ると腐ったような面が不気味な笑みを浮かべている。
「鏡よ鏡よ鏡さん」世界で一番美しくて強欲なのは誰かしら。
鼻歌混じりに呪文を唱え唇を突き出して紅をひく。ア怪は声色を変えて爪を眺め十本の指を交互にびらびらとさせた。
「貴方ほど慈悲深く多くの男児を救ってきた御方は他に存じ上げません」
私は誰かって聞いているのよん。別段怒っているようでもなさそうだった。指輪をはめようとするも肉が邪魔をして奥に進めることが出来ないでいる。光物は刺激が強すぎるかしら。流行歌を口ずさんでア怪は指輪を床に投げ捨てた。自動式の掃除機が異常を検知して直ちに指輪を吸い込む。
「一瞬の無駄もないわ」
本当の私はどこにいるのかしら。愛を与えてばかりいる。すり減ることを知らない少年への興味と好奇心。受信機から艶のある若い男の声が聞こえた。

愛なんかなくていい
マーンハント マーンハント

さういえば。丸越百貨店の外商にとびきりが配属されたのだったわ。今度お試ししてみようかしら。とびきりの珈琲でおもてなしが必要ね。
体なんて入れ物に過ぎない。取り替え出来て更新出来て満足させて緩んだ顔をみるために鍛錬は怠らない。楽しくなんかないわ。ふっふん。
夜の街は静けさに包まれていた。特上の一品を求めてア怪は暗闇を彷徨う。



断捨離を推し進めた結果、男の子が寄ってこなくなりました。