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M山木の*怪盗 (22)

(註)本文に登場する地名、人名、団体は実在のものとは一切関係ありません。

●前回までのあらすじ●
M山木に*怪盗あり——
年齢不詳、容姿端麗、神出鬼没。
先祖代々大怪盗を生業にしてきた*怪盗ことア怪が盗むのは、無垢な男子学生の初めての経験。歩柴青年は草むらのなかで女と出会った。
ア怪とK都府警、聖年探偵団を交えた性の交錯はどこを目指して進むのか。

●主要登場人物●
https://note.com/potaro/n/nd1841ffbe7df

疲れたわ。ア怪は夜空に向かって呟いていた。
生み出すということに。否。私は何も産み出せない。欠陥だらけの身体なの。だから年頃の年少者を実験体にして排泄装置を出産装置と見立てて疑似交尾をしていたの。

浪漫溢れる怪盗なんだから夢を壊すなって。興醒めするから正体明かすなって。人の勝手でしょ。貴方は私を高値で買ってくれるの。歴史の一幕なんて詰まらないものなのよ。人の叡智なんてたかが知れているものなのよ。私なんかに構わないで頂戴よ。感情の羅列ほど醜いものはない。対話のない独白ほど不必要なものはない。
あたしは天涯孤独なの。うちはいつでも自由なの。あっしは葛飾柴又の酔いどれ狸の生まれなの。思ったことを吐き出さないと生きていけないの。窮屈な私にはだだっ広い空間が必要なの。
学生宿舎や下宿の狭い一間から心を開放してあげるのが生業なの。年なんて重ねたくない。失敗ばかり取り沙汰されたくない。三流新聞の醜聞に耳を傾けたくない。張型の鋳型では満足出来ない。

どうして彼と結ばれることがなかったのだろう。老けていくから。徴にOILを塗ってみようかとは言ってくれなかったから。後悔してもしょうがないじゃない。公開してももっとしょうがないじゃない。
止めることが出来ない。寸止めに耐えられない。快楽だけで生きてきたから。ぬくぬくとすることに嫌悪を抱いてきたから。貴方は私を受け入れてくれる。ねえ優しい人。答えてよ。

断捨離を推し進めた結果、男の子が寄ってこなくなりました。