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M山木の*怪盗(6)

(註)本文に登場する地名、人名、団体は実在のものとは一切関係ありません。

読者の皆様ご無沙汰芳しの*です。皆々からはア怪と呼ばれているわ。
嗚呼、毎日が退屈だわ。およそ怪盗らしくもない空っぽの部屋で空想三昧の毎日。私に収集癖があれば今頃は精液の瓶詰めが所狭しと部屋を覆い尽くし栗の匂いが一日中充満しているのね。それも悪くないわ。形のないものばかり愛してしまって日常の輪郭がぼやけてしまっているみたいなの。

無能な警部どもはいつまで経っても証拠を掴むことが出来ないだろう。
ふっふ。御目掛けに敵う男子学生も性交渉率の減少で一時的には増加傾向にあるようだけれども。M山木が学生の供給を増やしてくれないと商売上がったりだわ。少子高齢化や都市部への人口流出。うかうかとしていられないわん。顔の整った薄味の子も増えてきた。味付けのしがいはあるけども奥手奥手とこられちゃ寂しくなるのが人情というもの。ときには身を任せて貪り搾り取られるような一途さを欲してしまいそうになるわ。

芸術品のようでいて生活に根差した血の通った交流。
一期一会で感じる温もりは何事にも変えられないの。人はどうして穴を通して人生を宿すの。虎穴に入らずんば虎子を得ず。危険を冒すことで得られる緊張は生きている実感として快楽を絶えず脳に注入する。

哲学者にでもなるのかしら私は。
時間だけは有り余るから人と触れ合いたくてしようがないのだわ。外の世界に出ることもめっきり減って美肌だけは保ち続けているのだもの。

色仕掛けの技術だけは誰にも負けないわ。胆力だってある。
身体だってまだまだ現役よ。

危険と隣り合わせのようで好敵手も見つからず、ア怪は日々鬱憤を蓄積するのであった。

断捨離を推し進めた結果、男の子が寄ってこなくなりました。