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M山木の*怪盗(23)

(註)本文に登場する地名、人名、団体は実在のものとは一切関係ありません。

●前回までのあらすじ●
M山木に*怪盗あり——
年齢不詳、容姿端麗、神出鬼没。
先祖代々大怪盗を生業にしてきた*怪盗ことア怪が盗むのは、無垢な男子学生の初めての経験。歩柴青年は草むらのなかで女と出会った。
ア怪とK都府警、聖年探偵団を交えた性の交錯はどこを目指して進むのか。

●主要登場人物●
https://note.com/potaro/n/nd1841ffbe7df

帝都の空は薄紅色に染まり賑やかな声が界隈から溢れ出んばかりの頃。
「明痴先生」周囲の視界が急に明るく開け小鳥のような可愛らしい声が響く。小林青年は適度に肌を露出させ改札から出てくる男に視線をおくった。

「ええ、私が痴の巨人、明痴ですとも」以後お見尻おきを。明痴と呼ばれた男は誰に向かうともなく名乗った。読者の皆様お股せしました。
性技の味方である明痴大先生が西洋諸国の遊学から帰ってきたのです。
寂しくて仕方なかった小林青年は頬を赤らめ明痴の肩に手をまわします。

痴力の限界に挑み謎解きと精力に関しては右に出るものはいないと言われた明痴先生のことですから遊学中も性財界の事情に通じ安楽椅子探偵ならぬ回転木馬探偵として情報収集には余念のないことだったでしょう。召し物を給仕に預け新聞を速読した明痴は頭を櫛で撫でてみせた。小林青年は明痴の土産話はそっちのけで嬉しそうに卑猥な怪盗の話をしてみせるのでした。

「ほおア怪ですか」
明痴先生の辞書には知らないことなどないかのようです。
「経験済みです」
明痴の一言に小林青年の目の奥の輝きが更に増してきました。
「実に詰まらない取るに足らない人物でした」
明痴先生の手に掛かれば天下の大怪盗も敵ではありません。小林青年の熱量に圧倒されて歩柴青年は突き物が落ちたような顔をしています。

「歩柴くん」
明痴先生は小林青年の抱擁から手を振り解いて歩柴青年の顔を覗いた。
「きみア怪に会ったでしょう」手に取るようにわかるんですよ私はね。
歩柴青年は明痴の言っていることが理解出来ないでいました。
「お仕置きが必要ですね」歩柴青年の耳元で囁くいたときだった。

「明痴先生ですね」
眼鏡をかけ髪型を七三に分けた気難しそうな男が明痴を呼び止めた。
「ええ、私が痴の巨人、明痴ですとも」「遊学帰省の折に失礼致します」
外務省主任分析官の光満と申します。男は名刺を明痴に差し出した。
「実に面白いですね」
名刺を受け取ると明痴は男の顔をまざまざと見つめた。
「ご内密にお耳にお入れしたい事項がございます」車を待たせております。明痴は小林青年に耳打ちすると男は迎車の札が覗く車に明痴を乗せた。
「また後で」明痴は二人の青年に手をふって別れた。

断捨離を推し進めた結果、男の子が寄ってこなくなりました。