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M山木の*怪盗(4)

(註)本文に登場する地名、人名、団体は実在のものとは一切関係ありません。

読者の皆様こんばんわ愛しの*です。皆々からはア怪と呼ばれているわ。
それにしても。随分と老けこんだわね張形の野郎は。笑いを抑えるのに必死だったわん。本家が偽物の手段を真似てちゃっかり短歌を詠んでみたけれど上手くいったかしらん。答え合わせなんて野暮なことはしないでおくわ。推理小説なんてものは概して作者の思うがままだもの。

面白くない。フィクションだろうと現実だろうと美しいのは無垢な男子学生くらいだわ。快楽の味を知ったときのあの表情といったら。
紐解いてあげて教えてあげて赤ちゃんのように溺れて会得した本能の如き野生の技。でもね。覚えてしまったら価値は下がっちゃうの。
決して私は性に飢えた獣なんかに用はない。
真実を知ってしまったら用済みよ。其れが誰にも分からない。

未熟だから美しい。不完全だから美しい。可愛いとは違うのよ。混同している奴は幼い人。可愛いとかなんて適当に符合合わせて見下していい気になって愛でてればいいのよ。所詮はその場しのぎの言葉。
其れが世に定着したっていうんだから怪盗稼業も捗るというものだ。

お宝の希少価値を最大化するのが怪盗の役目。
はじめての経験。其れは二度と訪れることのない替えの効かないひととき。怖がっても強がっても一人の人間には変わりない。

欲望の欲するままに望んで。さあ。新しい扉が彼方を待っている。

独り言をぶつぶつと呟きながら、ア怪は夜の街に溶けこんでいった。

断捨離を推し進めた結果、男の子が寄ってこなくなりました。