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M山木の*怪盗(24)

(註)本文に登場する地名、人名、団体は実在のものとは一切関係ありません。

●前回までのあらすじ●
M山木に*怪盗あり——
年齢不詳、容姿端麗、神出鬼没。
先祖代々大怪盗を生業にしてきた*怪盗ことア怪が盗むのは、無垢な男子学生の初めての経験。明痴探偵を出迎える青年達の前に現れた外務省の人。
ア怪とK都府警、聖年探偵団に明痴探偵を交えた性の交錯はどこを目指して進むのか。

●主要登場人物●
https://note.com/potaro/n/nd1841ffbe7df

明痴を乗せた車は繁華街から市街地へと移動し景色は徐々に静けさを増していく。

「君は主任分析官といったね」
「国際事情に通じ国益に資することを」明痴は珍しく光満氏の話を遮った。
「分析ということは要はANALYSTということだよね。つまりはANALは君の得意分野ということだよね」
「はあ仰るとおりでございますが」
「先ほど俺の耳にお入れしたい事項があるといった。私はね入れられるよりも入れるのが専らの性分でね」
「話の道筋が見えないのですが」
「ねえ運転手さんどちらまで私を運ぶつもりだい」
「へえ帝都旅館まで」
「帝都旅館ねえ」明痴はにやけた顔を光満氏にぶつけた。
「ええと何分内密な話ゆえ密室でお話したいと思った次第でして。大浴場もある帝都随一の老舗です」
光満氏は早口になって言葉をつないだ。髪が幾分脂ぎってみえた。
「大欲情ねえ。君は何に欲情しているんだい」
光満氏は下の話題は不得手とみえ言葉を失っているようだった。車は市街地を過ぎ新緑のなかを進んでいく。二人は無口になって視線を外に投げている。僅かばかりの時間が経過すると車は帝都旅館に到着した。

帝都旅館の入口で車を降りると明痴は徐に話出した。
「世間では魑魅魍魎が跋扈しているとか。私はね粗の輩と対峙したことがありますが実に詰まらないずっこんばっこんでしたよ」
「なんの話でしょうか」明痴は驚いた表情で光満氏を見つめた。
「おわかりにならない。読み物でみた二十面相とかいう怪人と違って手下もいない根暗な変態怪盗だったという話ですよ。先ほどの運転手も大方金で買収したんだろう」
明痴は少し間をおいて光満氏の顔に接近した。
「反れとも誑かしたというのかい稚拙な技で」
久しぶりだねア怪。明痴はすかさず光満氏の股の部分に手をかけた。
途端に光満氏の口から「はあん」という姿に似合わぬ悲鳴とも悦びともつかぬ言葉が発せられる。光満氏は眼鏡を脇に投げ捨て明痴に背を向けた。
「私はねどんな殿方も一度と決めてるの人生は有限だから。ただ貴方だけは別格よ明痴。虚ろな瞳で一心不乱に腰を振り続ける様は物理法則のように慣性がきいていて未完成でありながらも完成された極上のESPRITだったわ」「忘れ去りたい低俗な記憶だ」
まあいい中に入ってやる。明痴は光満氏ことア怪とともに帝都旅館の暖簾をくぐった。

断捨離を推し進めた結果、男の子が寄ってこなくなりました。