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M山木の*怪盗(15)

(註)本文に登場する地名、人名、団体は実在のものとは一切関係ありません。

パコパコリーナ パコリーナ
パコパコリーナ パコリーナ
秘密の国からやってきた

蓄音器から猥雑な響きが流れる。低音の音声に合わせて拍が刻まれる。心臓に突き抜けるような感覚を小林青年は楽しんでいた。

「十分に泳がせましたからね〜」小林青年の声が鏡に反射して屈折する。
「そろそろ溺れさせよう」助けを求める老害が見たいなあ。
蓄音器の側に立てかけられた表紙には人がうつっている。腫れぼったい化粧を上塗りした人が虚空に目をやる様に小林青年は苦笑する。
陳腐な歌を自主演出して美人きどりなのが可笑しくてたまらない。

「ははははははは」小林青年の笑い声は発作のように続いた。
「美魔女という言葉さえ勿体ない。あいつは塵だ。膣でさえ奴にとっては褒め言葉になる」

性への興奮。若さへの羨望。美貌への執着。
醜い妖怪を生むための必要な土壌が揃った。ア怪は怪盗ではない。情念の塊だ。正しく解凍して着ぐるみを剥がしてあげないと。

小林青年は指を鳴らした。暗闇のなかの壁面が照らされる。
壁面に現れた盤上の駒を小林青年は手でなぞってひとつ進めた。

断捨離を推し進めた結果、男の子が寄ってこなくなりました。