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M山木の*怪盗(7)

(註)本文に登場する地名、人名、団体は実在のものとは一切関係ありません。

張形警部は貸家の軒先で葉巻に火を点けた。煙が風に揺れて立ちのぼる。
面倒事は御免だ。指紋教授に響子医師。K都府警にまともな人間はいないのか。張形警部は片手で頭を掻きむしりお茶を立てるように一服を決める。

ア怪は次々と童貞学生を襲っていく。残酷なようでいて職人気質でもある。予告状まで出された挙句に失態が続いては我々の面目も丸潰れだ。
悔しい。張形警部は喉元まで出かかった言葉を葉巻で押し込めた。

府警ではア怪慎重論者もいるという。被害が増えても我関せずとばかり芸能記者と変わらない評論家ぶりには呆れてものもいえないと張形警部は思う。
特別警戒態勢の札も毎日掛け続けていると特別ではなくなる。屁理屈を捏ねくり回すくらいなら一層のことア怪と心中してでも決着をつけねば。
張形警部がア怪に並々ならぬ執念を抱くのには訳があった。

こちらも手段を選んでいてはいられないか。
張形警部は葉巻を地面に落とし小型無線機を取り出した。局番を慎重に合わせる。騒々しい音が途切れやけに生々しい喘ぎ声が聞こえてきた。

「しこしこ〜、Kです」無線機の先からは舌足らずで無邪気な声がした。

断捨離を推し進めた結果、男の子が寄ってこなくなりました。