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M山木の*怪盗(2)

(註)本文に登場する地名、人名、団体は実在のものとは一切関係ありません。

読者の皆様ご機嫌様麗しの*です。皆々からはア怪と呼ばれているわ。
それにしても。嗚呼、雅ぢゃない。予告状なぞというけったいな物を新聞社に送り付けるなんて。愚か者にも程が在る。ア怪がそんな事する訳無いのに。不束者は何処。身を弁え給え。枡でもかいて満足してろというのだ。

嗚呼、許せない。嘆かわしい。阿呆の極み此処に有り。言葉を尽くしても突き倒しても未だ足りない。こんなの怪盗の美学に反するわ。
此れは罵倒ぢゃないの怒りの鞭なのよ。無知に対する憤り。実行犯は恥ずかしくないのかしらア怪を名乗っておいて。やだやだ。気がおかしくなっちゃいそうだわ。逆転本塁打を打たれた気分。自分でも訳が判らなくなってきた。気が動転しているのだわ余りにも疎かな行為だったから。

うちかて職業花魁になるのを断固拒否して、怪盗として生計を立ててるのに。腹立たしいたらありゃしない。おっ建てるのは一物だけで勘弁よ。
清清清清。ああ。如何しようかしら。美しくないわ。まるで排泄物を垂れ流している気分。落ち着かないと。鉛筆の濃さはえいちびー。鎮まれ。己の精神。頼みます。私の心の生殖器たち。
一旦気を休めることにするわ。是以上、罵詈雑言を続けても私の株が下がるだけで考えものね。大人気なかったわ。今日はこの辺で勘弁してやるわ。

M山木に*怪盗あり——
先祖代々大怪盗を生業にしてきた*にとって、大切な屋号を己の野望と欲望の為に使う野郎のことが、自分が凌辱されているようで許せなかった。

幾多の青年を虜にしてきたその美貌
古より伝わりし熟練の魔術
研ぎ澄まされた精神と体技
溢れるばかりの慈悲の祈り
すべては世のため人のため
愛と真実の嘘を見破る
獣の如き本能を徳とご覧あれ

*は更年期障害を患っていた。
前口上を口にしないと生きていけない躰だと自分でも気づいていた。
「今夜も男の子の貴重な経験を奪いに行きますか」*は重い腰を上げた。

断捨離を推し進めた結果、男の子が寄ってこなくなりました。