ロシアは水素を輸出したい-210604①

前回の続きです

ロシアが取り組んでいる水素戦略について考えてみましょう。



水素事業に乗り出したロシア、目指すは環境に優しい天然ガスをヨーロッパに提供すること(2019/2/7)

ヨーロッパに天然ガスを輸出するロシアのエネルギー大手ガスプロムは、炭素を一切排出せずに天然ガスから水素を製造し、その市場を2050年までに年間1530億ユーロ(約19兆900億円)規模にまで構築するにはどうすればいいのか模索中だという。
ガスプロムの幹部が2018年10月にベルギー・ブリュッセルで行ったプレゼンテーションで明かしたところによると、このプロジェクトが実現すれば、金額に換算すると1100億ドル(約12兆700億円)分になる2017年のヨーロッパ天然ガス供給量を超える市場規模となる。

2年前ですが、トラの狸の皮算用な感じです。しかし、2021年になると、あまり状況が変わっていなくても随分リアルになっているのが不思議です。


天然ガスはすでに、水素を商業的規模で製造する際の主原料として使われている。また、ヨーロッパのガス・パイプライン網には以前から、軽めのガスが、ごく少ない割合で混合されている。それらのパイプライン網に混合する水素の割合を徐々に増やし、その後、温暖化を悪化させない環境志向型の方法で、天然ガスから水素を製造しようというのがガスプロムの考えだ。

ロシアとしては資源として持っている天然ガスを使いたいのは言うまでもありません。


水素の製造技術は、水の電気分解を含めて、いくつか開発されつつあるが、ガスプロムが検討しているのは、「メタンの熱分解」として知られる方法だ。メタンの熱分解では、小型リアクター内で高圧をかけられた低温の非平衡プラズマのなかで水素を発生させる。

(参考)メタン(CH4)から水素(H2)と固体炭素(C)を直接生成へ プラズマ熱分解技術をリードする米国モノリス社に出資


「私たちは、ドイツがパリ協定の削減目標を達成するには、天然ガスが解決策であることを認識してもらうべく提案している。天然ガスによって、私たちは目標を達成することができる」(ガスプロム・ドイツの広報担当マクシミリアン・クーン)

ドイツに営業をかけていることがわかります。ヨーロッパとしては、ロシアとの関係性は良くないように見えますが、温暖化対策のために接近する可能性があると思います。


Thinkstepによると、いまのところ、ガス供給網に混合できる水素の上限割合は国によってまちまちだ。例えば、イギリスの場合はゼロだが、オランダは12%だ。大部分の施設では、水素の混合割合が最大で20%までなら問題がなく、インフラの変更も不要だとガスプロムは説明する。

水素をガスのパイプラインで輸送することについてです。輸送するためのインフラ投資が不要になるとかなりいいです。

日本の場合、オーストラリアから専用の運搬船で運ばないといけないのでコストを抑えるのが大変です(川崎重工ががんばっています)。

(参考)世界初、液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」が進水


欧州委員会のウェブサイトに掲載されている報告書を見ると、ロシアがCO2を排出せずにガスを供給することに積極的に取り組む姿勢を初めてヨーロッパに対して示したのは、8月にベルリンで開かれたワークショップの席上だったようだ。


まとめ

ロシアのとしては、大消費地であるヨーロッパに天然ガスや石油を販売できるよう、脱炭素に積極的になるでしょう。

水素をつくるコストをどこまで下げられるか、非常に難しい問題ですが、イノベーションを期待しましょう。

それは三菱重工なのか、ロシアの企業なのか、果たして。


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