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ドラマ「探偵ロマンス」の魅力〜うつし世で追う夢はまことか〜

NHKドラマ「探偵ロマンス」を見ています。

とても面白いです。
1〜3話を見て、その魅力を3点にまとめてみました。
ネタバレ注意です。

隣にある命の危険と、色気

舞台は大正の帝都。
劇場「オペラ館」の音楽がその世界へ誘います。
初っ端から人が撃たれ、連続殺人犯が現れ、
その犯人は既にわかっているという謎解き感のないスタートでした。
しかし、もちろんそれで終わるはずはなく、
謎が謎を呼ぶ、常に安心できない世界です。

1話から印象的だったのは、登場人物全員が纏う怪しさです。
白井三郎(草刈正雄)、蓬蘭美摩子(松本若菜)、住良木平吉(尾上菊之助)、お百(世古口稜)はもちろんのこと、
初之助(泉澤祐希)、梅澤(森本慎太郎)、そして前述のラッパ(浅香航大)。
全員、敵でありそうで、
それでいて、次に殺されてしまいそうな危うさを持っています。
しかし、それがどこか艶かしくて色っぽい
必死で生きているのか、どこか諦めて生きているのか。
なぜそこに色気を感じてしまうのか。
今の私にはわかりません。
主人公の平井太郎(のちの江戸川乱歩・濱田岳)がお百に惹かれたように、
全員の不思議な魅力に目が離せません。

ワカラナイ、だからこそ、知りたい

太郎がよく言うセリフです。
「わからない、だからこそ、知りたい。
思い切って、他者の世界に飛び込んでみようと思います。」

物語が深まっていくほど、わからないことわかってきます。
でも、ひとつわかると、またわからないことが出てくる。
この募っていく感じが、もどかしくもあり、面白いのだと思います。
真実はやっぱり、知りたいです。
でも、知ることには覚悟が必要な場合があります。
また、どうしても知りたい人の気持ちは、
思い切って飛び込んでみても、わからないということもあると思います。

3話でお百が捕まった時、真実はひとつ、わかりました。
でも、犯罪に至ったお百のことを
「俺はどうすればよかったんだよ」とラッパが嘆いたように、
またひとつ、わからなくなるのです。
お百が欲しかった言葉はきっと、お百にもわからなかったかもしれません。

わからないって面白いな、とこのドラマを見ていると思います。
今は大抵のことは調べればわかりますが、
それは一体、真実なのでしょうか。
わからないものに想いを募らせながら、
期待外れに傷つきながら、
思い切って飛び込んで紐解いていくのも悪くないな、と思います。

「運命の鬼めは、甘い獲物を与えて、人の心を試すのだ。」

私には1話からとりわけ気になる登場人物がいます。
泉澤祐希さん演じる初之助です。
彼は太郎の良き理解者であるようですが、
身体が弱く、読み書きができず、
言動には出さないけれど、悩む表情が見られました。
勉強ができて交友関係も広げていく太郎を見るにつれ、
徐々にその鬱憤が大きくなっているように感じられます。

そんな初之助に住良木(悪いやつ)は、こんな言葉をかけました。
「あなたの物語が聞きたいです」
「あなたの苦しみはあなたのせいではない、世界のせいです」
この言葉を聞いてハッとしました。
この後初之助は、きっと利用される。
お百もきっと、この言葉を待っていて、この言葉に動かされたんだ。
なんでもない自分、苦しい自分、醜い自分。
そんな気持ちを利用しようとする甘い言葉は、弱った者に刺さるでしょう。

この構図は、ドラマの中に限ったことではないはずです。
現代社会だって、鬱憤を抱えて生きる人はたくさんいて、
格差、ジェンダー、労働問題、たくさんの問題が蔓延しています。
それを利用して金儲けをしようとする者もいれば、
利用されて犯罪を犯す者もいる。
そんな残酷な現実のなか、
正義で戦おうとする名探偵白井三郎が「夢」の象徴なのかもしれません。

でも、そこで諦めたくないなぁと思います。
「きっと時代は変わる。言葉は時代を作るから」
と太郎は言いましたが、
何かと「新時代」という言葉が流行る令和に生きている身として、
私のできる正義で世界を良くしたいと思うばかりです。

まとめにかえて

まだまだ始まったばかりの探偵ロマンス。
違う世界、違う時代の話ながら、
どこか迫ってくる問題意識が私を駆り立てます。
ドキドキワクワクで目が離せません。
最近NHK大阪への信頼が厚いです。

おまけ:音楽もええねん

今回、音楽を大橋トリオさんが担当しています。
銃の撃ち合いのシーンにどこか落ち着きを感じるBGMが流れていたりと、
音楽に注目しても面白いです。
主題歌「生きる者」もドラマの世界にぴったりです。

追記

まさかの4話が最終回だったんですね…名残惜しい…

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