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夜ドラ「あなたのブツが、ここに。」を見ている

NHK夜ドラ「あなたのブツが、ここに。」を見ています。月曜日〜木曜日の夜、15分間の連ドラです。残すところあと1週(1時間)となってしまいました。今の感想を書きます。

舞台は2020年〜2022年の大阪。コロナでキャバ嬢としての仕事が激減してしまった上に、給付金詐欺に遭い一文無しになってしまったシングルマザーの山崎亜子(演・仁村紗和さん)が、宅配ドライバーに転身し、様々な人と出会い、多くの困難に立ち向かっていく物語です。
あらすじや相関図、見逃しはこちらから。↓

私はドラマをよく見ますが、こんなに、ヒリヒリするほどリアリティを感じるドラマは初めてです。このドラマの私的リアリティポイントを3点にまとめました。ここからはネタバレを含みます。

コロナ禍を描いている

ドラマって作り話やな〜って感じるものが多いです。特に私は関西人なので標準語のドラマにリアリティは感じません。普段はそれを楽しんでいるのですが、妄想やなって冷めてしまうこともよくあります。
コロナの時代になってから、もちろんマスクをしているドラマなんてごく一部で、今はできないような遊び方とか人間関係の作り方とかが描かれていると、余計に入り込めないこともよくあります。
でもこのドラマは、みんな本物の関西弁です!また、下のツイートにもあるように、今の私たちと地続きの、同じ世界線で起きている出来事のように感じます。

飲食業に携わる人は、緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置に営業を左右され、生活が苦しくなった人もいました。逆に物流は需要が増え、大忙しだったと思います。
子どもにマスクをしなさいと怒鳴る高齢者、その様子を見た•見られた小学生どうしのいじめ、中止になった落語の独演会。そんな中開催された東京五輪。
コロナ禍のリアルが、関西らしいギャグテイストで薄めながら描かれています。

それぞれの事情が見えそうで見えない

コロナ禍を宅配を通して描くことで、ドアの向こうにそれぞれの暮らしがあるということが強く意識されます。宅配のお客さんでいうと、女装をして出てくるおじさんや、指定時間を1分でも過ぎると怒りまくる女性、宅配の人が帰るか帰らないかのところで除菌スプレーを振りまくる人など様々な人がいます。その行為ひとつひとつの答え合わせはありませんが、ドアをひとつ隔てた世界で何が起きているのか、想像がかき立てられます。

もちろん宅配のお客さん以外にも、登場人物それぞれに事情があって、誰しも私の知らない過去があって人生があるということを改めて感じられるドラマです。
例えば、亜子のキャバクラ時代の元同僚は、亜子がキャバクラから離れて半年ほどたった頃、自殺してしまいました。彼女がなぜ自殺したのか、事情は結局、誰にもわかりませんでした。

全てがわからないことにモヤッとするけれど、これがリアルだと思います。ちゃんと話して初めてわかる。そんなに親しくない人のことは、なんだかわかった気になってるけどわからなくて、本当は知る必要もなくて、大抵のことは、答え合わせができない。

仕事をする上での覚悟

亜子は、コロナなんてすぐ去るやろ、と思って、宅配ドライバーの仕事を副業感覚でこなしながら、慣れたキャバクラを続けようとしていました。そんな「生半可」な亜子に苛立ちをぶつけてきた先輩ドライバー・武田(演・津田健次郎さん)の辛辣な言葉や、思っていたほど楽じゃなかった宅配の仕事に触れ、亜子は一度は辞めようとします。
でも、周りの人たちがもうすでに「コロナ禍を生きる」ことに腹を括っているとに気付かされ、プロになってやる、と決意して宅配一本でやっていくことを決めたのです。
初めの頃、失敗してしまったり、うまく謝れない亜子に、キツイ言葉で叱責する武田や、逆に「ええよ〜しゃーない」と(何も良くないのに亜子にやらせるよりマシだから)気を遣いながらフォローする他の同僚の姿を見ていて、恥ずかしくなったり情けなくなったりする亜子の気持ちを想像するのは容易でした。私も感じたことがあるからです。でも、働くってことは、そういう恥ずかしいとかみっともないっていうのも超えなあかんねやな、と思いました。
また、亜子が、同僚やお客さんのことを心配して入り込みすぎたり、私生活の不安を仕事に持ち込んでしまったり、いろんなことがある度に、武田は、「お前の仕事はなんや」「それはお前の仕事やない」と言ってくれます。キツイながらも武田の言葉は重要なところ、かなり痛いところを突いていて、私自身も色々と考えさせられます。
仕事の目的や役割を意識して、それを全うしている人がいるから、この世界は回っているのだと思いました。いろんな人に感謝の気持ちが湧いてきます。

まとめにかえて

このドラマを見ていると、生きることは必死になることなんだと思わされます。
毎日過ごしていく中でちょっと失敗して、歯車が噛み合わなくなってしまったり、バランスを崩してしまったりするのは案外簡単なんだという危うさを感じます。
別れた旦那が娘に会っていたことを知り、同僚が交通事故を起こして職場を離れてしまい、宅配の荷物は配り切れないほど増え、、亜子に困難が重なっていた時、配達中に車のタイヤがパンクしてしまいます。立ち往生し、クラクションを鳴らされ、早くなんとかしろと怒鳴られた時、亜子は耳を塞いで涙を堪えることしかできませんでした。しかし、そこに武田や同僚が駆けつけて対処してくれ、切れそうだった亜子の心の糸が切れずに済んだと感じました。
毎日いろんなことがあって、必死でなんとか保っている状態が、ふっと崩れてしまった時、仕事を辞めてしまうことになるかもしれないし、離婚してしまうかもしれないし、死を選んでしまうことも、もしかしたらほんの少しの狂いが戻せなくなった結果なのかもしれません。私たちは案外危うい世界を必死で生きているんだなあと感じます。

でも、同時に、案外大丈夫だな、とも思えます。
コロナ禍になって久しいですが、文句を言いながら、時間を無駄にしたりしながら、適当に毎日をこなしています。そんなに気負わなくても、今日は過ぎて明日はやってくる。おもろい人と出会えたりもする。向き合おうって真面目に考えすぎなくても、逃げても良いし休み休みやっていけば良いか。そんな気軽さも、同時に感じられるドラマです。このツイートを見て、なるほどな、思いました。↓

あとは、「あなたのブツが、ここに。」というタイトルの意味がまだわからないので、最終週を見て何か感じ取れたらなぁと思います。

おまけ

Aぇ担なので、佐野晶哉さんが出るので、知ったドラマですが、キャストがみんなおもろいです。晶哉(勝手に呼び捨て)、目だけで表情を魅せる演技めっちゃ素敵やん!!ミネケンみたいな可愛い同僚に懐かれたいな!?守谷日和さんめっちゃ良い味出てるくない??きつねのお二人はまり役やん!海原はるか師匠のフリーダイヤルは期待して良い!?平埜生成さんまさかのクズ役やったん!?仁村紗和さん、岡部たかしさん、キムラ緑子さん、毎田暖乃さん始め演技力に揺さぶられ泣かされ笑かされています。主題歌のバカサバイバーもこのドラマのためにあるんかいてぐらいマッチしてるしダンスも毎週楽しみです。あと少しで終わっちゃうのが寂しいけど、見届けます!!

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