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キュビスムってすごい

先週キュビスム展に行ってきた。
キュビスムはピカソくらいしかしらない私は、ぐちゃぐちゃした構図の難しい絵という印象を持っていた。しかし「キュビスム入門」という感じで、時代や作風の変化が理解しやすい大満足の展示だった。

キュビスムは、ブラックの絵画が「キューブ(立方体)」と評されたことに由来し、後の芸術に大きな影響を与えたという。事前知識はこれだけで、何も知らない状態で乗り込む。

西洋絵画の伝統的な技法であった遠近法や陰影法による空間表現から脱却し、幾何学的な形によって画面を構成する試みは、絵画を現実の再現とみなすルネサンス以来の常識から画家たちを解放しました。

国立西洋美術館 「キュビスム展」公式ページ

わくわくしながら展示室に入ると、最初にセザンヌの絵画が!!
キュビスムの源泉としてセザンヌ、ルソー、ゴーガンの絵画やアフリカの彫刻が展示されていた。キュビスムがどう影響を受けて、どう変化していったのかが理解できてとても面白かった。

ヨンベあるいはウォヨの呪物 (コンゴ民主共和国)

まず目を引いたのが、全身に釘を打ち込まれた彫刻。材料覧が「木、釘、金属片、小さな鎖、彩色の跡」と色々ですごい。釘の攻撃的なイメージとは反対に、実際は治療であったり平和が目的であったそう。ケース越しではあるけど一周ぐるっと見れるのが楽しい。
リンク先のポンピドゥーセンターのサイトでは銅像を様々な方向から撮影した写真や解説が書いているので復習にぴったり。

彫刻と絵画を交互に見ながら進んでいき、いよいよピカソの「女性の胸像」の前へ。

女性の胸像

強烈な色使いですごく引き込まれてしまった。まず赤と青の縞で描かれた鼻に目がいってしまったけど、頬まで鼻の線が伸びているのはなぜなんだろう。キャプションには「仮面のような縦長の顔のフォルム、頭部や鼻筋に見られる赤の描線などに」アフリカの像からの影響が見られると書いてあったが、一方で大きなボリュームのある衣服はセザンヌの影響らしい。
同時に、この絵を見てフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を思い出した。青と黄色の配置の仕方とか、振り返りの角度が似ているような気がする。

ここまででやっと3章。え、全部で14章ってかなり長くない!?
4章のタイトル「ブラックとピカソーザイルで結ばれた二人(1909-1914)」で、初期のキュビスムを進めていったふたりの作品が集められていた。

1910年半ば以降、ブラックとピカソの絵画は、対象を垂直や水平、斜めの直線によるグリッド(格子)に沿って解体し、周囲の空間と結び付ける表現へと変化します。こうしてキュビズムは、描かれている対象の識別が困難なほどに抽象的で難解なものになります。

キュビスム展 「みどころキューブ」

個人的にはこの章が一番好きだったかも。この時期の絵は彩度が低く茶色とか白黒中心でカクカクしている感じ、かっこいい。

女性の胸像

これもピカソの作品。さっきの作品とは作者も題名も一緒でたった2年違いなのに雰囲気が全く違うのが驚き。胸か腕のあたりにある三角形はどの部位を表しているんだろう。この表情はどういう表情なんだろう....と疑問ばかり。最初は微笑んでいるように見えたけど、だんだん悲しげにも見えてくる。

この章は特に複雑な絵が多いしまだ展示も前半だったので「難しいなぁ」という他のお客さんの声も聞こえてきた。ベンチもあるのでもうすこしゆっくり頭を慣れさせてもよかったかも。
撮影不可だったけどピカソの「裸婦」はスタイリッシュでかっこよかった。静物画・人物画両方でギターやヴァイオリンなど楽器のモチーフが多く使われていていたのも印象的だった。

ピカソとブラックが終わると、どきどきしながら階段を下り次の展示室へ。
打って変わってカラフルな絵や大きな絵が多くて楽しい。ポスターにもなっていたドローネの「パリ市」がドンと目に入ってきて圧巻だった。
他に印象に残っている作品はジャン・メッツァンジェの「自転車乗り」

キュビスムは固いイメージがあっただけに動きのある絵で驚き。カラフルなのにまとまっていて躍動感がもの凄い。そして、なんだか構図がポスターっぽい気がする。(埋め込みでも絵画の画像が表示されないのでぜひリンク先で見てみてください……)

都市 no. 2

こちらは「パリ市」と同じドローネの作。パリを描いていると最初は気づかなかったが、点描でエッフェル塔を描いているみたい。ところどころ点描になっているのがなんだかグリッチノイズみたいだなと思った。

8章からは再び展示室が変わってシャガールやクプカなど新たな作家たちやフランス以外の作家たち。そして13章と14章に第一次世界大戦とそれを経た作品の展示という構成だった。8章以降は章が小刻みで絵画だけでなく彫刻の作品も沢山あった。素敵な作品ばかりで紹介しきれないので駆け足で。

散歩:大通りのヴィーナス

ロシアではキュビスムと未来派が合わさり「立体未来主義」が生まれたそうで、この作品の足の多い表現のは未来派の影響。漫画の走る時に足ぐるぐるする描写みたいで面白い。

輪を持つ少女

今回の展示作品の中でも一番お気に入りかも。これもピカソでびっくり。
表情が読み取れないがかわいらしい感じがする。図形的だけど機械というより何かのキャラクターのような印象を持った。赤と青色が並置されているが、悪目立ちしていないのがすごい。隣にはマリア・ブランシャールの「輪を持つ子供」というピカソと題材が近い作品が展示されていて、見比べるのが楽しかった。

『バレエ・メカニック』

出口の近くでは映像が流れていて、お客さんがみんなで見ていた。ポンピドゥーセンターのサイトに映像そのものはないけどフィルムの画像が載っているので、よかったら見てください。球体や足のクローズアップなど不思議な映像がマリンバ(うろ覚え)の演奏と一緒にひたすら流れる......という感じで、シュールというか「何を見ているんだろう??」という気持ちになった。クローズアップによる身体の断片化という意味では、谷崎潤一郎ぽいなと思った。

あーだこーだ考えながら2時間ほど展示を見てへとへとだったので、途中まで映像を見て展示室を出ることにした。
「50年ぶりの大キュビスム展」と言っているだけあってキュビスムの概要を学べるすごい展示だなと思った。カラフルだったりシンプルだったり、絵画だったり彫刻だったりとボリュームたっぷりでとっても楽しかった。

キュビスム展は来年2024年1月まで国立近代美術館で開催した後、3月から京セラ美術館に巡回するそうです。ぜひ!

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