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ラララさよならラパンちゃん


車を買うなら、ラパンだと決めていた。

子供の頃、真ん中にうさぎマークが飾られた赤色の車を見た時、私は大人になったらアレに乗る!と決めたのです。


そうして大人になって、免許を取得して気付きました。

私は運転が好きじゃない。
そして、結構下手っぽい。

本当は、教習所に通い始めた段階ですぐに気付いていました。しかし、ここは岡山県の田舎寄り。車でしか行くことのできない場所だらけ。通勤にも免許・車必須な場合が多い。車を持たないと言う選択肢は、当時の私にはほぼ無かったのです。


ーはい、ここでストップ。右側から何が来る可能性がある?
ーえっと、鹿ですか?あと狸とかそういう、、
ー自転車だよ!!

私の運転の下手さに常時不機嫌だった教官も、この時の回答には爆笑していたからこのやり取りは今でも鮮明に覚えている。そんな具合に教官に呆れられながらも、下手なだけで危ない運転をする訳ではなかったので無事に免許を取得。(S字クランクはいつも半泣きでした)

私も私の家族も、私がきっと車を削るだろうという確信はしていたので、最初は父の友人から数万円で買い取った軽四自動車に乗ることに。案の定、私は縁石や自宅の壁で数回車を削りました。ぶつけるというより削るという表現が正しい。


なんやかんやで2年程の月日が経ち、その頃には私も車削りをしなくなっていました。その年、車好きの父がディーラーさんからラパンの冊子を持って帰ってきたんです。「新型が出るらしいで。」

この子は、、、顔も可愛い。後ろ姿もいい感じ。内装もこの上なくタイプ!!!運転は好きじゃないし車には全く興味がないけれど、お金を出して乗るなら、自分の気持ちが上がる車に乗りたい。これはもう、乗るしかない。


「これにする!!買う!ラパン買う!!!」

ローンを組むことにも一切の迷いはなく。
試乗なんて、する必要もなく。

だって、ラパンだから。
ラパン以外、興味ないから。

少しだけ、ベンツのゲレンデも好きだなあとか思っちゃった時期もあったけれど、あのサイズは削る可能性が高いし、お値段も高い。ラパンこそ、私にとってパーフェクトだ。


そうして私の元へやって来たラパンちゃん。

はじめまして、よろしくね。ああ、可愛い。
実物は思った通りの可愛さで、憧れのうさぎマークが誇らしい。スーパーの駐車場に佇む姿を見つけては、やっぱりうちの子がいちばん可愛い、という感情になってみたり。

しかし、ラパンちゃんがどれだけ可愛くても、やはり運転は好きじゃない。片手でハンドルをくるくる回しながらバック駐車とか、ビーチでくつろいでるのかってくらいシートをリクライニングするとか、そんな余裕は一切ない。

渋滞王国岡山県で運転しようものなら、渋滞による肩凝りはもちろん。遠出なんて自分の運転でしたいと思ったことはなくて、ドライブに行くならDJを担当してBGMを選びつつ歌っていたいタイプの人間である。加えて、洗車もこまめにしないタイプの怠惰な私。珍しく洗車したと思えば雨が降るのはお約束。

でも、そんな持ち主と今日まで一緒に走ってくれたラパンちゃん。本当はもっと、遠くまで走りたかったかもしれないね。


毎日の通勤、休日の美容院、スーパー、友達の家、祖父母の家、片手で足りる回数のプチ遠出。今日までずっと、私のひとりカラオケをひたすら聴き続けてくれた。本当は、何度も何度も道を間違える私に対して、時々舌打ちでもしてたかもしれない。運転は相変わらず好きだとは思えなかったけれど、ラパンちゃんの中でひとり過ごすプライベートな時間は、落ち着くものでした。

このラパンちゃんがあまりにも私好みだったので、他の車に買い替えたいなんて思ったことは一度もなく。今回の引っ越しがなければ、修理も不可能な程に壊れるまで乗っただろうなと思います。

とは言え、車を持たない生活は私がしたいと思っていた暮らし方のひとつ。思い切って動く時は、何かを手放して身軽にならなきゃいけないの。これまで元気に走ってくれたことに感謝して、君とはお別れします。(売りに出します)


さよならラパンちゃん。

ラパンに乗りたいと願った子供の頃の私の夢を叶えてくれてありがとう。元気に走ってくれてありがとう。素敵な経験をありがとう。これからは、他の誰かに、きっと愛されてね。



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