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【コミュニティ】良質なコミュニティについての考察

いつもはGASについてのアウトプットが多いけれど、今日はコミュニティについて書こうと思う。

私はノンプロ研(ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会)に所属して、普段GASの勉強をしている。ノンプロ研のコミュニティ運営が秀逸だなーといつも感心しており、「会社でもコミュニティを作りたい!」という想いがフツフツと湧いてきたので、

良質なコミュニティとは何か
再現性を持たせるためにはどうするか

という考察をしてみた。

ノンプロ研のスゴイところ

ノンプロ研の概要は以下ご参照。↓

「ノンプログラマーでプログラミングを学びたい人」が集まる場です。

私が考えるノンプロ研の良いなと思うところは以下のとおり。めちゃたくさんある。

1. 意欲高い優秀な方がたくさん
2. 講座連動型で一緒に学べる仲間がいるので、心が折れにくい
3. わからないことを質問できるので学習を挫折しづらい
4. コミュニケーション量が半端ない
5. イベントや勉強会の数が半端ない(ほぼ毎日)
6. 飲み会の数が半端ない(ほぼ毎日)
7. 部活動が活発で楽しい
8. 本業では作りえない人脈を作れる 
9. 情報がオープンで安心感がある 
10. 過去イベントの資料や動画がストックされていて、いつでも閲覧できる 
11. 新規参入者が歓迎される雰囲気がある 等々

ノンプロ研は月5,500円(税込)の参加料がかかる。私はGAS初心者講座を申し込んだ今年の1月にノンプロ研にジョインして、「えー、高いなー🥺講座が終わって欲しい知識が得られたらすぐに退会しよ・・・」と正直思っていた(※講座を受ける場合はコミュニティも参加必須)。しかし、GAS初心者講座・GAS中級講座を受け終わっても在籍し続けている。

上に列挙したのはノンプロ研の魅力であることは間違いないのだけれど、違う場で再現するためにはHowをマネするだけではうまくいかないと思うので、コミュニティ運営の本質とは何なのかということを考えてみたい。

ノンプロ研が成功している本質とは何か

ノンプロ研がコミュニティとして非常に安心していられる場所で、しかも活発な場となっているのは、

①ターゲットが明確であること
②ターゲットのニーズを深く理解していること
③ターゲットのニーズに見合う価値を提供してくれる場であること
④コミュニティのカルチャー作りに成功したこと

この4点が肝なのではないかという考察に至った。

強み① ターゲットが明確であること

これはノンプロ研のコミュニティ名からしても明確。「ノンプログラマーであるけれど、プログラミングを勉強したい人」だ。さらにいうと、既述の通り、そこそこの参加料も必要なので以下のような要件を満たすと考える。

・学ぶ意欲や知的好奇心が強く、成長のための自己投資を惜しまない人
・月に5,500円払える経済的余裕がある人(おそらくほぼ社会人)

強み② ターゲットのニーズを深く理解していること

ノンプロ研に参加しているターゲットが持つ欲求は、おおよそ以下のようなものではないかと推察する。

・プログラミングをなんとしても習得したい
・一緒に学んでいける仲間がほしい
・独学では得られない知識を得て知的好奇心を満たしたい
・スキルアップしてキャリアを充実させたい
・人生が楽しく、豊かになるような人脈を増やしたい

強み③ ターゲットのニーズに見合う価値を提供してくれる場であること

ターゲットのニーズに対して、ノンプロ研は多くの価値を提供してくれる。特に私が秀逸だと思うのは、プログラミングという領域にとどまらない情報や知識にリーチできることだ。毎日のようになんらかの講座やイベント・勉強会が開催されていて、その資料や動画は全てストックされて、見に行けるようになっている。(※自身が申し込んでいない有料講座は閲覧できない)

・過去のストック型の情報資産
・現在のフロー型で溢れるほど提供され続ける良質なコンテンツ
・「ノンプロ研にいる限りこの状態が続くだろう」と思える未来への期待

これがノンプロ研のコアな価値だと勝手に思っている。

さらにコミュニティという形態を取ることで、ノンプログラマーという共通点はありつつ、バックボーンが異なる多様な人が集まっているからこそテーマの拡張性が高いし、人脈を広げることができる。実際に私も自分と同じようにコーチをしているコーチング仲間とも出会うことができた。

また、意欲高い常識的な社会人の方ばかりなので、会話していて噛み合わないということがない。困ったときに、良質なコミュニケーションがすぐに得られるのだ。有料であるからこそ、冷やかし目的の人が排除されていて、その辺りもノンプロ研の価値に繋がっているのだろう。

強み④ コミュニティのカルチャー作りに成功したこと

ターゲットが明確で、その人たちのニーズを理解し、ニーズに応える価値を提供するという①〜③までのポイントに加えて、コミュニティという形態であるときにもう1点重要だと感じたのがカルチャー作り。

ノンプロ研を主催されているタカハシさんが意図して作ったのかわからないけれど、私が感じるノンプロ研のカルチャーの強みは「心理的安全性」「クイックレスポンス」「透明性」だ。

心理的安全性

Googleさんが心理的安全性という言葉を世の中に出して、よく聞くようになったけれど、コミュニティ運営でもとても重要なキーワードだと思う。

心理的安全性とは「居心地の良さ」ではない。「誰もがどんな発言をしても無視されたり、拒絶されたり、罰せられたりすることがないと思える空気感」である。

ノンプロ研は、プログラミングの初心者から数年勉強した上級者まで混在しているので、特に初心者にとっては心理的安全性が重要だ。プログラミング初心者からすると、数十行のコードはアラビア語のように理解不能。それについて「こんな簡単な質問をしても良いのだろうか」「理解できていないのは自分だけではないだろうか」と、初心者はみんな不安になる。

実際に私もGASの勉強をし始めた頃に、どうしても解決できないことが出てきて、質問しようかかなり悩んだことがある。ノンプロ研では「15分調べてもわからなければ質問してもいい」という暗黙の(?)ルールがあり、小心者の私は15分調べるぐらいでは質問しづらく、1日調べてから思い切って質問してみた。「5,500円払っているし、この場を活用するために質問してみよう」とそっと自分で自分の背中を押した。

結果としては、15分以内に3人くらいの人が反応してくれてすぐに解決したし、質問することへのハードルが一気に下がった。(誰も反応してくれなかったらノンプロ研は退会していたかもしれない)

みんな常識的な社会人ばかりなので、全く調べずに無邪気に質問するようなことはない。そういう共通認識があるので、他の人の質問に対しても、親切に丁寧に一緒に考えて最適解を探そうという雰囲気が醸成されている。

また、私自身がGASの学習を進める中でわかってきたことは、質問に答えることは時間の無駄ではなく、知識の再整理になるし、コミュニティへ貢献できたと思えるし、純粋に喜んでもらえて人の役に立てたと実感できるし・・と答える側にもメリットがある。

質問して答えてもらった人が良い体験をして、答える側になっていくという好循環が自然発生的に生まれているのだ。

クイックレスポンス

コミュニティに参加している人がみんな運営当事者のような姿勢で、早く反応するカルチャーができ上がっている。私が初めてGASについて質問したときのエピソードもそうだし、とにかく反応が早いし多い。

(コミュニティについて、Slackでつぶやいたときの反応↓)

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測定してみたのだけれど、90分で17件のレスポンスと20個以上のスタンプが返ってきていた。「いつでも誰かが反応してくれる」という空気感が、上述の心理的安全性にもつながるし、「自分も他の人の発言に対して積極的に反応しよう」という主体的な参画につながっていく。

透明性

ノンプロ研のカルチャーとしてもう一つ良いなと思うところが透明性。「オープンさ」とも言い換えられる。

ノンプロ研では、主なコミュニケーションツールはSlack、講座や勉強会はZoom、ちょっとした口頭でのコミュニケーションはDiscordを使っている。私が驚いたのは、基本的にほぼ全てのコミュニケーションツールがオープンになっていることだ。Slackチャネルはほぼ全てオープンで、誰でも好きなチャネルに参加できる。コミュニティを運営している皆さんのチャネルすらオープンなのだ。お仕事チームというノンプロ研を運営してくださっている皆さんがいるのだけれど、そのお仕事のミーティングも公開されていて、誰でも見学することができる。

もちろん、金銭に関わることやトラブルについての対応等(そもそもトラブルは少なさそうな集団だけれど)は、DMやプライベートチャネルでやりとりされているのだろうけれど、参加している側からするとフルオープンに見えて、全ての情報にリーチできるため、自分が疎外されていないと思える安心感につながっているように思う。

良質なコミュニティ運営の省察と転用

長くなってしまったが、まとめると良質なコミュニティ運営を異なる場や異なるテーマでも再現するためには以下のようなことがポイントだと思われる。

①ターゲットを明確に定めること
②ターゲットのニーズを深く理解すること
③ターゲットのニーズに応える価値を提供する場を設計すること
④意図してコミュニティのカルチャーを醸成していくこと

ここまでの省察を一旦仮説として正しいものとし、私がやりたい社内でのコミュニティ運営にどのように転用していくかを考える。

コミュニティを作る目的

まずは、ターゲットを明確に定めることが重要であるが、ターゲットを明確にするためにはコミュニティの目的とゴールを先に整理する必要がある。コミュニティの立ち上げは手段であり目的ではない。コミュニティを立ち上げるために、コミュニティを立ち上げるわけではない

何のために私がコミュニティを社内で立ち上げたいと思ったかをツラツラと書いてみたい。

一言でいうと社内の「組織開発」のため。「組織開発とは何ぞや」を語りだすと文字数がとんでもなくなってしまうので割愛するけれど、専門的にいうと「弱い紐帯(ちゅうたい)」をたくさん創り出したいから、というのがコミュニティを立ち上げたいと思った理由。

「弱い紐帯」とは簡単にいうと、社内の組織やレポートラインを超えた偶発的な細い繋がりのことだ。

紐帯

強い紐帯とは、組織内の密度濃いネットワークのことを指すことが多く、現場マネジメントがコントロールして醸成していくもの。

一方で弱い紐帯とは、偶発的に組織を超えてできるネットワークのこと。福利厚生で部活動制度を作っている会社もあるが、こういった弱い紐帯を作ることを意図していると推察される。

弱い紐帯は偶発的にしか生まれないからこそ、意図して生まれる機会を創っていく必要があると個人的には感じている。

会社内で弱い紐帯がクモの巣のように張り巡らされている状態を作っていくことを目指したいと思ったのが、コミュニティを立ち上げるに至った理由だ。

コミュニティによって実現したいこと

組織開発はコミュニティという1つの施策によって劇的に変わるものではない。組織開発領域に限らないが、人事施策は効果がすぐに出るものではないし、ROIを簡単に測れないことの方が多い。地道に地味に時間をかけて取り組んでいき、ボディブローのようにじわじわと効いてくる。

私がなぜこのタイミングで社内にコミュニティを作りたいと思ったかというと、コロナの影響でリモートワークが恒常化し、組織開発の課題感が大きくなってきたと実感しているから。

業務上の役割やレポートラインを超えて社員同士が繋がれる場がなくなってきたというのはリモートワークを導入している多くの方が感じているだろう。オフィスで顔を合わせる機会もめっこり減って、私の会社も部活動制度はあるけれど、オフラインでの活動はほぼ凍結している。

コミュニティによって「弱い紐帯」をたくさん作ることで、以下のようなことを実現できる一つの手段になると良いなと思っている。

各現場でそれぞれの課題を解決するのでなく、各組織やチームにちらばっている共有できるはずのナレッジを流通できるようにしたい
業務で直接関わりがなくても、刺激をGive&Takeできる仲間を増やして会社をもっと好きになってもらいたい
何かつらいことがあって辞めたくなっても、この会社には自分を大切にしてくれる仲間がいると思えるようになってほしい
細い偶発的な繋がりがたくさんある魅力的な会社になって、優秀な仲間が居続ける会社にしたい
優秀な仲間が居続けてくれることによって、事業が成長し、もっと社会に貢献できる会社にしていきたい

とても青臭くて恥ずかしいけれど、本当にそのように思っている。

このコロナ禍での組織開発課題については解が見つからず、1年ぐらいずっと考えてきたけれど、このタイミングで偶然個人としてノンプロ研に参加して、コミュニティというのは1つの有効な手段なのではないかと考えた。

コミュニティのゴール設定

コミュニティを作ったからといって、事業や会社が成長するというのはロジックが飛躍しているし、結果論としてそうなったとしてもその因果関係は測れない。

なので、最終的には事業や会社を成長させていくという大目的はブラさない前提で、上述のような理想の状態に近づいていくと信じ、「コミュニティを活性化していくこと」を立ち上げ期のゴールとしたい。ここはロジックよりも、運営する側としての信念を持ち続けられるかが大事だと思っている。

では、「コミュニティを活性化していく」とはどのような状態なのか、自分なりの定義を考えてみた。ここはノンプロ研の運営が大いに参考になる。

・頻度高く業務内外の会話が発生している
・頻度高くターゲットのニーズにマッチするイベントが企画/実施されている
・退会者が少ない
・一定割合のコアメンバーが存在している
・口コミや紹介によってジワジワと入会者が増える
・在籍メンバーの満足度が高い

具体的な数値目標は追々考えていきたい。

組織開発は足の長い取組みなので、実現したい理想の状態についてその風景が思い浮かぶほどリアルに描き、コミュニティの立ち上げ初期メンバーと握ることがとても大事だと考えている。

そうしないと、会話や企画を生み出すことやメンバーを増やすこと自体が目的化してしまい、やる意義がだんだん見出せなくなったり、ネタが尽きた時点でモチベーションを保てなくなると思われる。

ターゲット選定

目的・ゴールが定まったので、次はターゲット選定。私が作ろうとしているのは社内の職種別コミュニティなので、その職種の社員全員がターゲットになるけれど、「ターゲットは明確に」という考察から、もう少しシャープにしておきたい。

考えたターゲット像は以下の通り。

会社へのロイヤリティが高い人
仲間やチームワークを大切に考える人
自身のスキルアップや事業成長への貢献への意欲が高い人

ターゲットのニーズを考える

上記のようなターゲット層は何を求めているか考える。本来は目星となる人たちへのアンケートやヒアリングを実施すれば、Factを得られて、より手応えが得られるだろうけれど、同じ会社で一緒に働いている人たちなので、おおよそ推測はできる。

業務上の課題を最適な手段で早く解決したい
事業運営に関わる知識やスキルを得たい
社内で高め合える仲間を増やしたい
組織や会社への貢献実感や、自身の成長実感を持ちたい

おそらく上記のようなことがターゲット層のニーズだと考える。

これらのニーズを満たせるような企画や情報流通が生み出されるコミュニティとして立ち上げていくことが重要だろう。例えば、「単なる業務外の雑談をする場」ということでは、ターゲットのニーズは満たさないので、「参加者のニーズに応える場になっているか?」という問いを、自分自身に問い続けていく必要がある。

立ち上げ期

コミュニティの立ち上げ期(創成期)は、自分たち自身が運営者でもあり、コミュニティの最初のメンバーでもある。目的とゴールはブラさないようにしつつ、自分たちが存分に恩恵を受けられていると思える場作りをしていけば良いだろう。立ち上げ期は、次のコアメンバーが出てくるまで、地道に活動を続けていくだけだ。

拡大期

立ち上げメンバーの次に入ってきてくれるのが第2コアメンバーとも呼べる人たち。企画を自発的に立ててくれたり、コミュニティを盛り上げてくれたり、今後の活動の要となっていく人たちだ。

運営メンバーがボールを持ち続けすぎず、第2コアメンバーが出てきたら、「一緒に運営しない?」「この企画一緒に考えない?」などと言って、ボールを渡していくことが重要だと考えている。

会社もそうだけれど、創成期から拡大期にシフトしていくときにネックになるのは創業者のキャパシティ。社長がいろんなボールを持ちすぎて、パツパツになり組織拡大のボトルネックになる。コミュニティも仮想的な組織と考えると同じだろう。

社長の右腕的な人を見つけ、早々に権限を委譲していくことが次のフェーズへの移行のキモになると推測する。

ノンプロ研でもタカハシさんが全てを仕切っているわけではなく、多くの運営メンバーが役割分担をしながら分業し、コミュニティが運営されている。

そしてこの拡大期にシフトしていくフェーズで、コミュニティのカルチャーをしっかり定めていく必要があるのではないかと思っている。なぜなら人が増えていくことに伴い、コミュニティの目的や理念を知らない人の方がマジョリティになっていくからだ。

コミュニティのカルチャーづくり

コミュニティのカルチャーづくりにおいて、望ましい言動は促進し、望ましくない言動は抑制するというコントロールが求められるだろう。この辺は組織のマネジメントと同じではあるが、コミュニティは上司・部下というような指示命令できる関係性ではないし、運営メンバーの声が大きすぎると一気にシラけてしまう。

意図してカルチャーを作りつつ、そうは見えないような自然体の運営をしていく高度なスキルが求められる。

例えば、望ましい言動の促進として私がイメージするのは「新規参入者へのウェルカム感の醸成」。コミュニティに新しく入って、早期退会になる要因として、先にジョインしているメンバーの内輪ノリや疎外感ではないかと推測している。思い出話で盛り上がることは大いに結構だけれど、新規メンバーに十分に配慮するといったカルチャー作りが大事ではないかと勝手に想像している。

逆に望ましくない言動の抑制としては、経営や会社や他者に対する愚痴を言うなどのネガティブ発言。これを許容してしまうと、コミュニティが掃き溜めのような雰囲気になっていってしまう。望ましくない発言があった場合は優しく注意を促しつつ、このコミュニティで求められるカルチャーを見えない規律として浸透させていくことが重要だと考える。

どんなカルチャーのコミュニティにしたいか、というのはコアメンバーで認識合わせをしておくと良いだろう。

現状と今後について

今は、10月からの立ち上げを目指し、初期の運営メンバーを探して集めているところ。私以外にとても頼れるメンバーが2人参画してくれることになった!

ここまでの仮説が正しいのかはやってみないと分からないけれど、ここまでにまとめた自分なりの考察を活かして、ノンプロ研のスゴイところを再現できる社内コミュニティを作っていきたいと思う。













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