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キャリアについて考えてみる

IT企業で人事の仕事をしながら、副業でコーチングのプロコーチをしています。また、ノンプロ研(ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会)でプログラミングの勉強もしています。

ノンプロ研の転職座談会のイベントで登壇させていただいたことがきっかけで、キャリアや転職についての個別相談をいただく機会が増え、キャリア形成についての関心が高まっていることを感じる日々。

週に1〜2回やっている副業のコーチングでも、9割ぐらい(感覚値)のクライアント様がキャリアや転職に関するテーマを持ってこられる。

とはいえ、「キャリアってどう考えるの?」ということに答えはないし、漠然としたイメージの人も多いのではないかと思う。

今回は「キャリアについての考え方」について、オススメの書籍も紹介しながら書いてみたい。

個人が主体となってキャリア構築することが重要視されるようになった背景

巷でよく言われるのは「人生100年時代になったから」というもの。

「人生100年時代」というのは名著ライフ・シフトに書いてあるので、まだ読んでいない方にはぜひ読んでみてください。

すっっっっごくざっくり要約すると、医療の進歩によって人の寿命が伸びる→「老後」と呼ばれる時間もすごく伸びる→引退して余暇を楽しむというよりは、老後も好きなことを仕事にしながら細く長く働いていく人生になりますよ、というようなことが書かれています。(かーなーり雑な要約です)

老後2000万円問題も話題になったけれど、少子高齢化・労働人口の減少が加速する日本ではまさに切実な問題。

60歳で定年退職して、潤沢な年金を受け取って、のんびり余生を過ごすというのは昔の話、もしくはごく一部の人の話。

平均寿命が90歳近くなっている今では、貯蓄や年金だけでは暮らしていけない。長生きすることもリスクという時代にすでに突入している。

終身雇用も崩壊しつつある現在の日本では、定年の60歳とか65歳まで一社で勤め上げるというよりは、自分自身でキャリアの軸を形成しながら、身体が元気なうちは働き続けるということが普通の時代になってくる。(もはやなりかけている)

これはお金の問題だけでなく、いわゆる「老後」という時間が長くなったからこそ、自分がやりがいや楽しみを感じられる仕事をやりながら自己実現しましょうね、というのが「キャリアは会社に頼らず、個人で構築していくべし」というような考え方が浸透してきた背景。

もう1点、「ジョブ型に移行していくから」というのも理由としてよく挙げられるけど、個人的にはあまりピンときていない。ジョブ型についてはそれだけでエントリー1つ書けるほどのボリュームになってしまうので、ここでは詳細には触れないが、日本の社会構造的にもメンバーシップ型でずっと働いてきた文化的にも欧米のようなジョブ型にはすぐにはシフトしないと思っている。

「ジョブ型とは何ぞや」ということを理解されたい人には以下の書籍をお勧めしたい。人事向け書籍に見えるけれど、日本と欧米の働き方の構造の違いがとてもわかりやすく、日本で働くビジネスパーソンなら読んでおいて損のない1冊だと思います。

「日本はジョブ型に移行していくから個人でキャリアを構築していくべし」は若干の論理飛躍があるように思う。人は働く期間が長くなって、社会の変化スピードによって企業の寿命は(おそらく)短くなっていく。だからこそ転職や副業やプロジェクト型で働く機会は必然的に増えていくので、キャリアのことを考えておこう、というのが私的にはしっくりくる背景説明だと考えている。

目指すべきゴールが明確になっていなくても大丈夫!キャリアの考え方とは

よくコーチングをしていると、「目指すべきキャリアやゴールが明確になっていなくて不安なんです」というクライアント様に出会う。

現在30代後半(年齢は濁す)の私が大学を卒業したときは「キャリア」なんていう言葉は知らなかったし考えもしなかった。就活時期は氷河期の終盤ぐらいで、就職できれば御の字だったし、就職留年する友人もたくさんいた。

今の20代ぐらいの方は、インターネットも普及し、情報が溢れ、インターンシップも当たり前になり、学生時代からキャリアの選択肢について考える機会が多かったのだろう。

私の会社に入ってくる新卒の子もキャリアプランをしっかり持っている人が多い。それはそれで素晴らしいことだと思うし、心から応援したい。

ただ、将来のキャリアプランがぼんやりしていたり、目指したいゴールが見えていなくても不安になる必要はないよと声を大にして言いたい。

1つの考え方として、キャリアには「川下り型(筏下り型)」と「山登り型」がある。

「川下り型」はゴールをきっちり決めず、偶発的に与えられる機会や経験に向き合い、人との出会いや縁を大切にし、短期的な目標をクリアしていくプロセスで、自分のキャリアの軸を見定めていく時期である。

キャリアの軸がなんとなく見えてきたら、長期的に向かいたい方向(山)を定めてそこに向けて能力開発や経験開発をしながら、「山登り型」へ移行していく。(※キャリアの軸については後述)

日本はまだまだメンバーシップ型雇用(職種が固定されず、様々な仕事を経験しながらジェネラリストとして能力開発していく)が主流なので、多くの人が川下り型からスタートするし、それで不安に思うことはない。日本では、くっきりとキャリアのゴールが見えている人の方が圧倒的に少数派だから。

この「川下り型(筏下り型)」と「山登り型」のキャリアデザインの考え方については、以下の書籍に詳細に書かれています。


キャリアの軸(キャリアアンカー)を見極める

とはいえ、ずっとゆらゆらと川下りをしていれば良いというわけではない。波に乗っているだけでは、自分が意図したキャリアは作れず、環境要因によって決まってしまう。

川下りの時期は、自分のキャリアの軸(キャリアアンカー)を見極め、自分なりに登りたい山を考えていく時期である。

キャリアアンカーとは、個人がキャリアを形成する際に自己の内面で大事にしたい不動となる要素のことで、川下りの時期には以下の3つの要素を明らかにしていくと良い。

①能力:自分の得意なこと(不得意なこと)
②欲求:自分がやりたいこと(やりたくないこと)
③価値:自分が価値を見出せること(見出せないこと)

この3つの要素が重なる職種や役割の仕事につけると、まさに「自分らしいキャリアを歩める」と言えるだろう。川下りの時期は様々な経験を通じて、①②③について深掘りし、自己の内面を知っていく時期になる。

ちなみに、上記3つの要素は8つのキャリアアンカーのカテゴリーに分類されると言われており、そちらもご紹介しておく。

<8つのキャリアアンカー>
専門性:特定分野で能力を発揮し、自身の専門性や技能が高まることを重視
コントロール:責任のある役割を担い、影響を与えていくことを重視
安定:一つの組織に忠誠を尽くし、社会的・経済的な安定を重視
創造性:クリエイティブに新しいものを創り出すことを重視
自立・独立:自分のやり方で、自身が責任を持って仕事を進めることを重視
社会貢献:社会的に意義のあることに貢献できることを重視
ライフバランス:自分自身や家族と、仕事とのバランスを重視
挑戦:高い目標の達成や困難な問題に挑戦するすること自体を重視

個人的には、人間の価値観は多様なので、8つのキャリアアンカーのどれかにピッタリ当てはまるというのは単純化しすぎではないかと思っているけれど、特に重視する要素は何かという観点で考えてみる1つの類型として参考になればと思う。(ググるとキャリアアンカー診断などもたくさん出てきます)

進みたい方向性を見定める

川下りの時期を経て、自分なりのキャリアの軸が見えてきたら、ざっくりと進みたい方向性を見定める。

例えば
・業種や職種
・スペシャリストかジェネラリストか
・組織の一員としてキャリアを積んでいくのか、独立するのか
というようなこと。

変化の激しい今の社会で、長期的に詳細な計画を立てることにはあまり意味がない。育児や介護など、ライフイベントにおいても自身でコントロールできない変数も多い。

ただ、あくまでもざっくりとで良いので進みたい方向性を思い描いておくことで、環境に左右されすぎず、自分らしいキャリア・自分らしい人生を歩める意思決定ができるようになると思うし、自分らしくないキャリアになっていると思ったら転職や独立など、環境を変えていく行動も取れるようになる。

それでも方向性が見えなかったら

いろいろ書いたけれど、言うは易く行うは難し、というのがキャリアの言語化。自分自身の内面を知るということは想像している以上に難しい。

だからこそ、このキャリアに対する関心の高まりと相まって、コーチングも徐々に流行ってきているのだろう。コーチングはコーチから視点を変える質問をたくさん浴びることによって、1人では難しい自分自身の内面を言語化することを少しは楽にしてくれる。

コーチングを受けずとも、キャリアのゴールを思い描く手助けとして、こんな質問を投げかけたい。私がキャリアがテーマのコーチングで、たまに投げさせていただく質問の1つ。

「あなたが仕事を引退する日に、どんな人にどんな言葉で見送られたら最高にハッピーですか?」

この質問への答えには、仕事に対する価値観や願望がきっと表れると思う。

たくさんの関わった人から「私の人生を良い方向に変えてくれてありがとう」と言われるシーンが思い浮かんだ人であれば、関わった人に対して良い影響を与えたいというようなヒト志向の価値観を持っているのではないかと推察できる。

「社会の課題を大きく解決するような事業を生み出してくれてありがとう」と言われるシーンが思い浮かんだ人であれば、社会への影響や貢献をしたいというコト志向の価値観を持っているのではないかとも思える。

あなたはどんなふうに見送られて引退したいですか。

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