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〔散文〕自画像にまつわる記憶について


画家にとって、もっとも身近な対象はじぶん。自身をモチーフに絵を描くならモデルへの支払いも必要ないし、いくぶん気楽でしょう、と言った。

皿の上のサラミをひっくり返すと、表と裏が逆になった。そもそもサラミに表裏なんてないのだけど、僕は無意識に、皿に触れていたほうを裏だと認め、そうでないほうを表だと認めていた。画家が皿の上のサラミをひっくり返すと、それまで表だった面が裏になり、裏だった面が表になった。

僕はこの発見と考察をエドマンドとジャンに話したかったが、フランス語での日常的な会話も覚束ない僕が、こんな複雑な——それでいて論理性の欠片もない——思いつきを共有できるはずがない。

静かに、胸にしまっておく。いつかこの発見と考察を参照すべきときが来るやもしれない。

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