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ぽっぺのひとりごと (1) ポオ詩集

予約していたポーの詩集が「入りました」と図書館から連絡があり、さっそく借りてきた。
「在りし昔のことなれども
わたの水阿の里住みの
あさ瀬をとめよそのよび名を
アナベル・リーときこえしか」
これだ、これだっ! 高校生の時、学校の図書室で見つけた本と同じ訳。
文語のリズムが心地良くて、何度も暗唱しているうちに覚えてしまった。

テレビでエドガー・アラン・ポーの生涯を追ったドキュメンタリー番組を観たことがきっかけとなり、映画『推理作家ポー 最期の5日間』(2012年)を借りて観た。事実とフィクションを織り交ぜた作品で、ジョン・キューザックのポーが適役だった。
『黒猫』『アッシャー家の没落(崩壊)』『赤死病の仮面』など全作を読み直してみた。が、詩集が無い。司書さんはポーが詩人だということを御存じない。

でも、今はインターネットという強い味方がいる。出版社も翻訳者も分からなくても、「エドガー・アラン・ポー」で検索すれば、出てくる、出てくる。大好きな『アナベル・リー』の英語の原詩を見つけて、ノートに書き写すこともできた。ありがたい。

図書館で『ポー詩集』を取り寄せてもらう。楽しみに待っていたが、最初に借りたA出版の訳は気に入らなかった。B社の訳も違う。
そして、見つけた、創元社。昭和25年発行の初版本!
へえ、日夏耿之介(1890~1971)という方の訳だったのか。英米文学者であるのみならず、この方自身が詩人だったのか。

古い詩には七五調が似合う。音読したときのリズムがいい。

大喜びしたのも束の間。『ヘレンに』と『ユーラリイ』の訳が私の記憶と違う。さらにネットで探す。

突き止めた! 島田謹二(1901~1993)訳『エドガア・ポオ詩集』(1950年)。多分これだ。しかし、どの図書館も所蔵していない。出版社すら存在していない。もしも古書店で見つけたとしたら、2200円くらいで購入できるらしい。

まるで探索者のように、この3週間、エドガー・アラン・ポーを追っている。

昨日、『アナベル・リー』をまた調べていたとき、ジョーン・バエズ(1941~)の顔のアップが出てきた。再生ボタンを押したら、前奏に続いてバエズの歌声が流れてきた。
まさか! バエズが『アナベル・リー』の詩に曲を付けて歌っていたなんて!

目頭が熱くなり、涙が止まらなくなった。
ポオの人生があまりにも悲惨で、哀れだから?
『アナベル・リー』に描かれた愛があまりにも美しいから?
バエズの歌声があまりにも感動的だったから?
そう・・・それらが合わさった上に、不意を突かれたからだ。たぶん。

さあ、今日も捜索だ。

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