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「ドイツ縦断ひとり旅」(24) ハーメルンの思い出 どんぶりポテトスープ ヘルガとの出会い

2019年9月24日(火)晴れ
「ねえ、ヘルガ。ウチに買って帰りたい物があるの。クノール社の野菜スープの素。どこかで売ってないかしら?」「ああ、それなら任して。」 市街地を通り抜け、郊外のショッピングモールへ。

わあ、すごくデッカイ! わあ、何でもある! カフェテリアにはスシがあった。なぜか、占い師のブースが3か所も。 食品売場も広い、広い。目当ての粉末スープ、重いのは承知の上で、ホワイトアスパラガスやブロッコリーなど6種類も買った。何と、日本のインスタントラーメンも売られていた。ヘルガに説明すると、「今度買ってみよう。実に興味深いわ。」だって。

ヴェーザー川に沿ってぶらぶら歩いて行った。ランチしようということになり、再びオスター通りへ。 「おなか空いてる?」と訊かれ、「朝たくさん食べたから、そんなに空いてない。」と言うと、カフェに連れて行ってくれた。

ヘルガはごく薄いキノコのピザを、私はジャガイモのスープを注文した。 「スープくらいなら」と思っていたら、メチャクチャ大きな陶器のボウルがドーンと置かれた。うそ! ありえない! これじゃ、丼じゃないの!

食べても、食べても、減った気がしない。おいしいんだけど、苦しい。「ピザは半分あなたのよ。」と言われても、スープが・・・。く、苦しいよー。結局、ヘルガはピザを残し、残したくない私は完食。

素敵な路地


ミュンスター教会


マルクト教会


はち切れそうなお腹をさすりながら、ミュンスター教会やマルクト教会(どちらもプロテスタント)の傍を通り、素敵な路地を抜け、市民公園へ。



緑の多い広い公園。チェスをしている人達。少し離れた所ではペタンクに興じている。ベンチで本を読んでいる人。大きなシャボン玉を作って飛ばしている人。みんな思い思いに楽しんでいる。

ハーメルン劇場

客席数約700のハーメルン劇場。その隣の美術館では、絵画展が開催中だった。二人で入った。ヘルガの好きそうな繊細な風景画。ゆっくりと観て回った。



ヘルガはギムナジウム(大学進学を前提とした7年制、または9年制の学校)で上級生に数学を教えている。英語も堪能で、文法も完璧。趣味は旅行と絵画鑑賞。 すらりとした彼女は長い脚でサッサッと歩く。私は少し急ぎ足でついて行く。

街角にも笛吹き男の絵が

信号機の手前で、「見て、ハーメルンの信号! まだ撮ったことがないなら、今がチャンスよ。」 わお!信号まで笛吹き男だった!

一緒にヘルガのお家に帰る。今夜は友人のディーターさんがやって来る。彼は日本にツアーで訪れたことがあり、日本の友達が来ていると聞いて、会いたいと希望したらしい。

夕方7時ごろ、ディーターさんがやって来た。ごつい体格の、いかにもドイツ人って感じの人。悠々自適の年金暮らし。3人でテーブルを囲み、ヘルガ特製のキッシュと野菜サラダを頂く。

ディーターさんは3年前に、日光、箱根、京都、大阪などを観光したとか。写真を見せてくれたけど、20数枚しかなかった。ヘルガが一言。「遠い日本まで行って、たったの20枚!? K子は1400枚も撮ってるわよ!」
あまりにピシャリとした言い方だったので、ディーターさんが気の毒になった。彼は大きな身体を小さくして、何か言おうとしたがやめた。そして、私に向かって笑いながら言った。「ヘルガは先生だから、よく怒られるんだよ。」おやおや。

ディーターさんの質問。「君たちはどうやって知り合ったの?」 「あの夜のことは忘れられないわ。」と、ヘルガ。「友人とレストランのテラス席で食事をしていたら、小柄な日本人が、キイキイ音のするスーツケースを押しながらやってきたの。疲れ切った様子だった。」

そう、もう20年になるかなあ、私はあの時、ハーメルンの駅からずっと宿屋を捜しながら歩いてきたのだった。長いこと列車に乗り、やっと辿り着いたけれど、真っ暗で人も歩いていなくて、疲れと不安でいっぱいだった。食事中のカップルを目にした時、「助かった!」と思った。ドキドキしながら、「すみません。この辺にホテルはありませんか?」と尋ねた。すると、金髪の美しい女性が、「この近くにはないけど、ちょっと待ってくれたら連れて行って差し上げるわ。もうコーヒーを飲み終わるところだから、少し待ってね。」と言ってくれたのだ。

それがヘルガだった。彼女はお相手と別れ、自転車を押しながら歩いてホテルまで案内してくれた。空室の確認もしてくれた。私は彼女に感謝の言葉を述べ、自転車に乗った彼女に手を振った。

翌朝、朝食を取っていたら、支配人が、「お手紙が届いています。」と白い封筒を手渡してくれた。宛名は「日本のレディーへ」となっていた。昨夜の親切な女性だと、すぐ分かった。便箋には「よくお休みになりましたか。もしよろしかったら、今日の午後、一緒にお茶しませんか。大通りのスーパーの前に、ショッピングバッグを持った大きなネズミが立っています。その前で3時にいかがですか。来られなくても私は気にしませんから、あなたも気になさらないでね。」と書かれていた。


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