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「フォロー・ミー」は私の映画
映画についてのお話を大好きな、というより愛おしい、
この作品から始めようと思う。
それは1972年製作のイギリス映画「フォロー・ミー」。
「落ちた偶像」「第三の男」のキャロル・リード監督の遺作。
ジョン・バリー作曲のテーマが流れてきただけで、まぶたが熱くなってくる。
ロンドンの公認会計士チャールズと、カリフォルニアからやってきた
気ままな旅行者から彼の妻となったベリンダ、そして、チャールズに雇われた私立探偵クリストフォルー。この三人が繰り広げる愛の追いかけっこ。
まず、キャストが最高!虚飾を嫌い、真っすぐに自己を表現する妻にはミア・ファロー、上流階級の、教養人を気どるオカタイ夫にはマイケル・ジェイストン、そして、全く型にはまらない、自由人の探偵役はトポルという、これ以上は考えられない配役。
ピーター・シェイファーの見事な原作・脚本も、この三人だから生きたと思う。
一日中、外出している妻に、もしや浮気相手が・・・と疑う夫は、探偵に調査を依頼する。愛人なんてとんでもない、ベリンダが愛しているのはチャールズただ一人。結婚した途端、二人で過ごす時間がなくなり、一人ぼっちで、家族も友人もいない彼女は、何とか孤独を癒やそうと、ロンドンの街をさまよっていたのだ。
自分が調査されているとは知らず、いつも自分の行く手に現れる、人なつこい笑顔の、白いコートと白い帽子の男との、言葉を交わすことのない触れ合い。尾行したりされたりの二人が案内してくれるロンドンが楽しい。
ロイヤル・オペラ・ハウス、ナショナル・ギャラリーといった有名な場所だけでなく、ミルク通り、ベーコン通り、,胡椒通り、プデイング小路、ガチョウ広場、ビネガー広場・・・といった、観光客の知らない場所へも案内してくれる。えっ、ロンドンって、食べ物に関係したストリートやレーンがこんなにあったの?と、ウキウキしてくる。
ハンプトンコート迷宮園でピクニックをする二人。ゆで卵は同時にオデコで割る。このシーンになると、いつも泣いてしまう。H君と私はピクニックで、決まって同じ動作をしていたから。
31歳でこの世を去ったHくん。この映画を一緒に観て、「まるで僕たちのようだね」と言っていたHくん。私の人生の扉を開けてくれた彼には、心から感謝しています。思い出すと悲しくてたまらないけれど、彼と出会えて本当に幸福でした。
・・・という訳で、私はこの映画を客観的に観ることができない。
映画はハッピーエンド。本当に大切なものは仕事よりベリンダだと悟ったチャールズは、クリストフォルー直伝の秘策を授けられ、彼女と再び心を通わせるべく努力する。
人間の心理を深くえぐった、サスペンスフルな作品で知られるキャロル・リード監督が、最後に、こんなに愛らしい小品を遺してくれたことに感謝!!
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