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「ドイツ縦断ひとり旅」(26)さよならハーメルン 列車内でのハプニング

2019年9月25日(水)雨
6:30。今朝は早起き。ヘルガが9:15に、私を迎えに来てくれるから。 雨が降っていて肌寒い。

7:20、朝食。8時から荷造り。9時にノックの音。ヘルガだった。スーツケースをホテルのオーナーに運んでもらえるよう頼んでくれた。本当にいいホテルだった。「お世話になりました。またここに来たいです。」と言うと、彼は「アリガトウ!」と、日本語で返してきた。まあ、驚いた! 裏庭でタバコを吸っていたスタッフにも、”アウフ・ヴィーダーゼーン!”と言って手を振った。

ハーメルン駅の地下通路

小雨の中をヘルガと歩いて駅へ。たったの10分しかかからなかった。   「いいこと、今度からはね、駅に着いたら左の通りを行って、まっすぐ歩くと墓地に着くから、そうしたら分かるわよね。タクシーは回り回って行くから、歩いた方がいいのよ。」と、ヘルガ。わかった。次回は歩いて行くね。


駅の案内所で、列車が遅れていないかどうか、乗り継ぎがスムースにいくかどうか、確認してくれるヘルガ。まったく、何にでも気が利き、実にテキパキとやってくれる人だ。「ああ、彼女は先生だからね。」と、ディーターさんが言っていたっけ。

駅の案内所

2番ホームには、ハノーファー行きの列車が既にいた。発車まで20数分ある。ヘルガは「ちょっと座っているわ。」と言った。「バスの時間に合わせて、5、6分ね。」 お互いに写真を撮り合った。 今夜9時に、ホテルの部屋に電話するって。私が無事に着いたかどうか、ホテル側に何の問題もないかどうか確かめたいのだ。私がオーバーアマガウで、ひどい目に合ったから。

ありがとう、ヘルガ!ーーー 胸がいっぱいで、言葉が出てこない。さまざまな思いが次々に頭の中を駆け巡っているのだが、声を発することができない。
彼女は私の両手を取り、「無事にミュンヘン空港に到着してね。そして、無事に日本へ帰り着いてね。あなたのために祈っているわ。」と言った。
「ありがとう、ヘルガ! 元気でいてね!」 「ええ、今度会えるその日まで、お互い元気でいましょうね!」

去っていく彼女を列車の窓から見送った。悲しくてたまらない。生きてさえいればまた会える、とは思うけれど・・・。別れが辛いほど大好きな人に巡り会えたのだから、私は幸せ者だ、と思わなきゃね。

田園地帯を列車は行く。 10:35、ハノーファー到着。11:01発のICEに乗り換える。ニュルンベルク到着は、14:24の予定。
次の駅で、6人グループのおじいさん、おばあさんが乗り込んできた。私がスーツケースをどけようとすると、「いいのよ、いいのよ。」と、金髪のおばあさん。さらに次の駅で、そのまた次の駅で、お仲間が乗り込んできて、10人を超えてしまった。ワアワアしゃべって楽しそう。

ドイツ人は旅行好き。友人のハンネローレも季節ごとに外国旅行。国内は毎月のようにグループ旅行をしている。年金がしっかりしているから、心にも余裕がある。時間を楽しもうというエネルギーに満ちている。

定刻通りにハノーファー中央駅に到着。私が下りようとすると、若い男性(たぶん大学生)が、さっとスーツケースを下ろしてくれた。ドイツっていいなあと思うのはこういうとき。日本人は他人と少しでも触れ合うのを避ける傾向がある。というより、周りを見ていない。

11:01発のICEはミュンヘン行き。明日は私もミュンヘンへ。オクトーバーフェスト開催中のミュンヘンは、世界中からやって来た人々で賑わっていることだろう。ミュンヘン中のホテルが、空港ホテルでさえも全て満室なのだから。
ヘルガは言った。「いい、K子、4時間前に空港に着くくらいに考えていた方がいいわ。3時間前では不安だわ。」

ICE787号は30分も遅れた。しかも、すごい人! 座れない! ニュルンベルクまで3時間23分も立ちっぱなしはきついけど、仕方がない。
12:35、ゲッティンゲン到着。12:54、カッセル到着。すぐ傍に空席ができたので座る。

60歳近い女性車掌がやってきて、後部座席の後ろのスペースに置いていた私のスーツケースを指差し、「このコッファーは誰の?」と、大声。「私のです。」と言うと、「どけなさい!」と言う。「荷物は棚に上げるように決まっている。」 えーっ、さっきまでこの場所に2個あったのに。

「私は背が低くて、棚には持ち上げられません。もし上げたとしたら、絶対下ろせなくなります。」 みんなの視線を感じながら、私は必死だった。 「だめ!規則は規則だから!」 通路の邪魔をしている訳じゃないのに・・・。「私はドイツを愛してる! あなたの国にはるばるやって来て、お金を落としている。大目に見てくれてもいいじゃないの!」と言おうと思ったけど、火に油を注ぐ結果になると思い、やめた。


 


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