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謎が散りばめられた「地獄が呼んでいる」
最近、Netflix韓国ドラマの勢いがすごいですね…私も例に漏れず色々なドラマや映画を楽しんでおります。本作も配信されてすぐ鑑賞しました。
世界観とかストーリーとか、かなり好き嫌いが分かれそうですが、私はめちゃめちゃ好きでした!
あらすじ
この世のものではない”何か”が突然現れ、人間たちを地獄へと突き落とす…。人々が恐怖におののく中、この現象を神の裁きだと主張する宗教団体が台頭し始める。
なぜ人々が地獄へ突き落とされるのか?
1話しょっぱなから、ストーリー全体のキーになる「裁き」が行われるのですが、これがまた絵面としてもまあまあ衝撃的。一気に世界観に引き込まれました。何より衝撃的なのは「神の裁き」とは言えないほど乱暴である事。謎の使者が現れて、対象人物が燃やされる=地獄へ堕とされるのですが、もうやってる事は集団リンチ。逃げる人を捕まえて、投げて殴って、逃走意欲がなくなったところで燃やされるという。そこまでせんでもええやん!と思ってしまうほどでして。最初の人は逃げたからまあ…と思わなくもないけど、2人目のパク・ジョンジャに関しては、逃げも隠れもしていないじゃないですか…なのにわざわざ痛めつけるというのが、やっぱり「リンチ」的要素を感じたし、現実世界での矢じりの動きも集団リンチであって、うう〜ん、色々考えさせられる構図でした。
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行き過ぎた正義と恐怖政治
前述した「集団リンチ」というワードは監督も色々なインタビューで言っていて、そう感じるのは正解の様なのですが。その後に描かれる世界がまさに現代社会でも問題になる「行き過ぎた正義」。前半部分からほんのりと気配はありましたが、後半はまさに。新真理教と繋がっている矢じり達はなんでもやっちゃうヤバすぎる団体。新真理教が表立って手出しできない汚れ仕事を担当しているんでしょうけど、彼らはそれを正義と信じて疑わない。ソドの協力者である教授を殺めてしまうシーンもありますが、あくまでも矢じりの原動力は正義。現代社会でもそうですが、そういう原動力で暴走している場合って止めるのが強烈に難しいんですよね…
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それから恐怖政治。この言葉が合っているのかは分かりませんが、後半部分で「宣告を受けて地獄へ堕とされた人の家族は後ろ指さされて生きていけない」「だから隠れてこっそり裁きを受ける」「そのこっそりを手助けするソド(ミン・へジン弁護士率いる団体)」「こっそりも許さない新真理教」という図式が、フランスの恐怖政治を思い出しました。最初はそんな事なかったはずなのに、裁きを受ける=罪を犯しているという方程式が完全に出来上がってしまったから…子供に「お父さんは罪を犯しました」って涙ながらに喋らせるシーンはえぐいなあ…と思いました。
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強烈なキャラクター達
登場するキャラクターはみんなアクが強くて、役者さん達の底力も感じる魅力的なものでした…これだけ謎ばかりの作品で、ちゃんと世界観の中の人だったもんなあ。すごい。
新興宗教の代表、チョン・ジンス議長を演じたユ・アインの、何を考えているのか分からない感じが末恐ろしくて良かった。
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3話ラストに刑事に真実を告白するまではまじで何考えているんだ?という感じで、薄ら笑いを浮かべた顔が怖かった…「バーニング」でのユ・アインの姿とあまりに違うので全然気付きませんでした。
前半でノーマークだったのにめちゃめちゃ良かったのは、刑事の娘チン・ヒジョンを演じたイ・レ。議長に洗脳されて、母を殺した殺人犯(懲役終わって出所済)を殺める事になるのですが、その時の笑顔…人間ってこんな顔ができるのか、と衝撃でした。
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刑事と同じく、新真理教を信じず戦おうとする弁護士ミン・へジンを演じたキム・ヒョンジュも良かった。唯一、全編通して登場するキャラクターですが、どちらの時も正義感に溢れる強い女性ではありつつ、後半では影があってなりふりかまっていられない、という前半とは違う強さも持ち合わせている様に見えました。
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後半で良かったのは、新真理教のユジ執事を演じたリュ・ギョンス。うつろで生気のない目、新真理教を否定する人たちを徹底的に排除しようとする容赦のなさ、低い静かな声、冷静かと思いきやラストでタガが外れてしまう感じ、何をとっても良かった。(因みに、これを見た後に梨泰院クラスを見てリュ・ギョンスのファンになりました笑)
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こうやって考えると主要キャストはごくごく少なくて、意外にもシンプル。シリーズ通してずっといるのは、弁護士ミン・へジンだけなのです。前半での刑事や刑事の娘チン・ヒジョンとかはどうなったのか気になるんだけどなあ〜。
そして何も解決しない
たった6話で、1エピソードあたりも1時間弱である時点で察しがつくかもしれませんが、この全6エピソードでは何1つとして解決も謎解きもされないという衝撃事実。いや、逆にここまで潔いとなんだかもう笑えてくる。
ひたすら謎が深まり「天使が死の宣告にやってきて、時間通りに地獄の使者によって裁きにあう」という事実だけがそこにあるという。そんな超自然的な事はあるわけない、と刑事や弁護士が立ち向かいますが、刑事はどうなったのか分からないし、弁護士ミン・へジンも、一応は糸口を見つけたっぽいけどまだ何も解決していないし…ラストのタクシーでのシーン、運転手が刑事だという説もある様ですが目元がずいぶん違った様な?でもストーリー展開的には、あの運転手さんは刑事であってほしいな。
後半でキーになってくる「生まれたばかりの赤ん坊が宣告を受ける」という部分については、新真理教も「あれれ?」ってなってるし、やっぱり「罪を犯した人が裁きにあう」説は正しくない=新真理教は間違っている、と考えられるわけですけども。赤ん坊の両親(パク・ジョンミンとウォン・ジナ演じるペ夫妻)が身を挺して守る事で、まさかの宣告を受けていない2人が亡くなってるのも不可解だし。物理的に人間が覆いかぶさる事で守れるくらいの火力ではないと捉えていたんだけど…1話での街中の裁きシーンを見る限り、地獄の使者もなりふり構わず誰でも攻撃するってわけではなさそうだし。そして最大の謎!2話で裁きにあったパク・ジョンジャが生き返ったわけですよ。生き返ったと表現して良いのかどうかも分からないけど…
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本当に中身はパク・ジョンジャなのか?中身も本人だとして、なんで戻ってこれたのか?地獄も懲役制度とか?なら初代議長もいつか戻ってくる?いやいや、さっき地獄の使者が赤ん坊1人を連れて行く予定が両親2人連れてっちゃったから1人お返しした?このシーンに関しては、何の説明もされず唐突に挿入されるシーンなので最後の最後にハテナマークが一気に増えました。シーズン2につながる要素なんでしょうけど…個人的には、パク・ジョンジャはソドのミン・へジン弁護士側にはつかず、新真理教側についちゃって新たな神みたいな存在になって崇められてしまうのではないか…と思ったりしています。そして対抗するのが、ソドのミン・へジンと生き残った赤ん坊という図式。でも、一応は「罪人」とされていたパク・ジョンジャが教祖になるのは無理があるかな…
今回のシリーズの続きとしては、原作同様ウェブトゥーンで描く予定だと監督が仰っているそうですね。ぜひそのままNetflixシリーズとしてシーズン2も描いてほしいなあと思います。ウェブトゥーンから映像作品へ、というのは韓国に限らず日本でもよく見られるパターンですが、めちゃめちゃうまくいっているパターンと残念なパターンがある訳で…本作は、ウェブトゥーンの原作者が映像作品の監督であるというとても稀有なパターンで成功していると思うので、ぜひともシーズン2でまた映像として見せていただきたいです。
正直、謎が深まりすぎ&何も解決しないというところから、感想らしい感想も出てこないし、考察するほど読みも深くないのであれなんですけど…何も考えずに世界観に没頭できたら楽しめるかもしれません。言葉にはならなくても色々感じる部分や考えたくなる部分があるはず。
公開後に監督や出演者が色々なインタビューを受けていて、YouTubeにも動画が上がっています。納得できる部分もあれば、先が余計に気になる発言もあったり。日本語字幕もついているのでぜひ鑑賞後に見てみてください。
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