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「あきがわナレッジストリーム2023」 を聞いて。ーあきがわアートストリーム2023 

2023年10月27日から1ヶ月の間、東京都あきる野市五日市と東京都西多摩郡檜原村にて、あきがわアートストリームという芸術祭が開かれていました。
秋川流域という舞台で、住民とアーティストが協働し、祭典を作り上げます。
あきがわナレッジストリーム2023は、アートを通じた地域おこしをテーマとした講演・座談会および一部の展示を解説つきで観ることのできる2日間のプログラムです。

1日目は、五日市にて、講演・座談会が開催され、そのあと懇親会が開かれました。聴衆は20名ほどで、五日市、檜原村、日の出町のほか、西多摩地域外からも訪れていました。

2日目は、1日目の講師に加え、檜原村長である吉本氏も同行し、檜原村の会場である「赤い家」と、第1回「あきがわアートストリーム」の頃からメインの拠点となっている「アーツキャンプひのはら」を訪れました。

ファシリテーターは、あきがわアートストリームディレクターの岡田智博氏。 一般社団法人クリエイティブクラスター代表理事であり、東京藝術大学教養教育センターコーディネーターでもある。



1日目 フォーラム「藝術文化が新たな価値を開く地域の潜在力へ」

1.講演

(1)ファームコミュニティ「ヤマニファーミング」について

本講演は、らでぃっしゅぼーや 創設者の徳江氏が「ヤマニファーミング」への可能性を感じ、全国に広めていきたいとの強い思いがあり実現にいたった。
体験農園とはちがい、ヤマニファーミングのように消費者が農家となる農園は珍しく、全国的にも先進的な事例である。農地を持たない人が取得し、さらに農地として認定されることは非常にハードルが高いとされているからである。
農業において、山里川海の循環が大切である。川の上流でヤマニファーミングのような農家があることが重要であると同時に、今後は流域に広げていき流域連携をはかっていくことが大切になる。

講師
徳江倫明 一般社団法人フードトラストプロジェクト代表理事・らでぃっしゅぼーやファウンダー
清水孝之 五日市にてファームコミュニティ「ヤマニファーミング」を主宰


(2)徳島県神山町の地域おこしについて

条件不利地における地域づくりに携わってきたと自負している。※主な取り組みは以下に記載。
神山町では、地元の人、言い換えれば「土の人」のみならず、「○○・イン・レジデンス」(アーティストのほかにも、シェフ、ジョブなど実施)といった一時滞在者、すなわち「風の人」をも大切にしたことが地域創生に結びついた。

■講師
大南信也 学校法人神山学園(神山まるごと高専)常務理事(発起人)・認定NPO法人グリーンバレー理事(ファウンダー)

(3)別府におけるアートの地域おこし

別府にて、アートを通した地域づくりを推進し、2005年にはBEPPU PROJECTを設立(2006年にNPO法人となる)。アート、とりわけ現代アートの可能性を地域のあらゆる事業を通じて広げていくこと、市民にとってアートが身近になること、そしてクリエイターの活躍の場を増やすことを目的として取り組んできた。

講師
山出淳也
 Yamaide Art Office 代表・NPO法人BEPPU PROJECT ファウンダー

2.クロストーク(講師および中島あきる野市長による)

  • 自治体任せではなく、住民を相手にすること、そして、住民や自治体と一緒に地域を作っていくことが大切(岡田氏)

  • ヤマニファームの自然栽培を通じ、就労を増やせるようにしていきたい(清水氏)

  • 神山町は、江戸時代には外部から訪れた人を接待する機会が多かった。1990年代には夏にホームステイを実施しており50人ほど受け入れてきていた。そのような背景から、”異物”を見続ける風景があった。町民が変化する面白さを感じてきたことが地域創生の原動力となっていると感じる(大南)。 

  • 神山町のように、住民の受容力が高くなる現象は、檜原村でも起こっている。アートストリームについて、「今年はあれないの?」と聞かれたり、「村の知り合いの○○さんががアートを作っている」*という噂として広まるところまで認知され始めている(岡田氏)*実際にアートを制作するのはアーティストなので語弊があるが、村民がアートにかかわっていることが村内で広まっていることが分かる) 


2日目「もうひとつのTOKYOからはじまる懐かしい未来へ」


檜原村の大自然。紅葉が始まりかけている。

2日目は、岡田氏、大南氏、山出氏(オンラインでの参加)、そして、檜原村の吉本昴二村長とともに、檜原村のアート会場のうち、「赤い家」、「アーツキャンプひのはら」を巡った。

1.「赤い家」訪問

たまにしか使われていなかった民家を、持ち主が片付けてくれたことにより、今回のアート会場として使われることができているそうです。檜原村での暮らしが感じられます。

赤い家には、動物の民話から着想を得た動物の木彫りの彫刻(多摩林材を使用)が飾ってありました。奥の部屋には、かつて民家で使われていたキューピー人形やタンス、お菓子の缶などが展示されていた。過去を懐かしく振り返ってほしいというアーティストの想いが込められていると、岡田氏から解説がありました。

民話にはこれまで少しおどろおどろしいイメージがあったが、彫刻の鹿からは、妖精のようなかわいらしさを感じ、民話にもきっと動物や自然への愛が込められているということに気づかされました。

赤い家について、展示期間後は、民家の持ち主がおもてなしの場として使っていくとのこと。親子でキャンプ、音楽会など、関係人口の場として活用するそう。

2.「アーツキャンプひのはら」訪問
アーツキャンプひのはらは、ごく最近まで人が住んでいた民家をアートが展示できるスペースとして生かした建物である。かつて蚕を飼っていた建物ということもあり、2階の天井は高くなっている。 

入ってすぐの部屋には、マスクを使ったコスチュームや、コスチュームの動画が流れていた。奥の部屋は照明が落とされていて、ベテランのアーティストたちがバーベキューをしながらアートと街づくりの関係を語らう動画が流れていた。

2階を訪れると、障子ほどの大きさのキャンバスに迫力のある油絵が描かれていた。10枚ほど展示されており、推測する限りであるが、サーカスの光と闇が描かれている。作者は、18歳という史上最年少で岡本太郎現代芸術賞(通称TARO賞)を受賞した大西茅布氏。

アーツキャンプひのはらでのクロストーク

  • 檜原村の「人里」は「へんぼり」と読む。「幸福をもたらす人の里」という意味があるらしい。私自身も、人里地区には針葉樹ではなく広葉樹を植えて、人々が幸せの気持ちになれるような「もみじの里」を作れるよう活動をしている。村民も外から来る方々も自然を享受できる地域にしていきたい(吉本氏)

  • 神山町でも、山の中にアート展示を行うという取り組みを行った。アートの展示場所の確保にあたっては、アーティスト自身が木の手入れをするという条件を提示し、山の持ち主から許可を得ていた。展示場所は手入れが行き届いていない場所ということになり、手軽に観に行けるアート展示とは異なる(大南氏)

  • 国東半島でアート展示を行った際には、敢えて、展示場所を崖のような岩の近くに設置したりと、「体力を使わないと観に行けない」ようにした。来場者数を目標としておらず、体力を使って見に行くことで地域とのつながりができることを目的としているからだ(山出氏)

  • 檜原村でのアートは、自然はもちろん、民家での暮らしの息遣いをそのままアート空間として見せたり、赤い家のように、住民と協力して作品を作るという過程まで、見る人に楽しんでもらえるようにしている(岡田氏)

  • 神山町では、町内の人限定で町内のバスツアーを行い、外部の人がいない状態で気後れせずに自分の町について知る機会を作っている。マスコミや広告といった外から知る発信だけでなく、町民が中から知っていく手段を作ることも必要だ(大南氏)

  • 地域活性化においては、集客数や観光化を目的にすることが正しいとは言えない場合がある。地域によってはキャパがないこともあるからだ。それよりも、継続的に活動していくための組織が存在しているかといった観点の方が大切である。別府でのアートにはその仕組みがあるが、国東半島ではまだ十分とは言えず課題であると感じている(山出氏)


アーツキャンプひのはら
アーツキャンプひのはら

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