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「クルミの殻+ロウソクゴケ」でメリー・クリスマス!~じいちゃんの小さな博物記⑱
「クルミのろうそくをつくったことがありますか?」と谷本さん。
拾った野生のオニグルミで、クルミのろうそくをつくってくれました。
黄色い色は、街路樹に発生するロウソクゴケ。かわいくて、意外ともちのいいろうそくができたようです。
『草木とみた夢 牧野富太郎ものがたり』(出版ワークス)、『週末ナチュラリストのすすめ 』(岩波科学ライブラリー)などの著者、谷本雄治さんの「じいちゃんの小さな博物記」第18回をお届けします。
谷本雄治(たにもと ゆうじ)
1953年、名古屋市生まれ。プチ生物研究家。著書に『ちいさな虫のおくりもの』(文研出版)、『ケンさん、イチゴの虫をこらしめる』(フレーベル館)、『ぼくは農家のファーブルだ』(岩崎書店)、『とびだせ!にんじゃ虫』(文渓堂)、『カブトエビの寒い夏』(農山漁村文化協会)、『野菜を守れ!テントウムシ大作戦』(汐文社)など多数。
野菜のタネをまこうと土を耕していたら、意外なものが出てきた。「花さかじいさん」の畑からは大判・小判がわんさか出てきたが、自然大好きじいちゃんの家でひょっこりと顔を出したのは、数個のクルミだった。
そういえば果肉を腐らせようと、そのあたりに埋めておいた。それをすっかり、忘れていたのである。
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夏の終わりになると毎年、クルミ拾いに出かける。国内には数種あるが、ねらうのはたいてい、オニグルミだ。観光地などで売られる栽培種のテウチグルミ(カシグルミ)に比べると殻がかたく、いかにも野生種という感じがする。太いひものような雄花と赤みを帯びた柱頭を持つ雌花が咲いたあと、大粒のブドウみたいな実が房になってぶら下がる。
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それは、飛んできた花粉を紫外線から守る知恵だという指摘がある
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分厚い果肉に包まれ、見た目には青梅にそっくりだ。そのうち、ぼとぼとと落ちてくる。それがクルミの実だと知らない人が増えたのか、食べるまでの処理が面倒だと思うのか、地面にいくつも転がっている。果肉の中にあるタネが俗にいう「クルミ」で、かたい殻の中にある「仁」の部分を食用にする。
ところが腐りかけた果肉を手で取り除こうとすると、油みたいにべたついて大変だ。タンニンを多く含むためらしいが、土の中に埋めておけば果肉だけ自然に分解する。
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タンニンを多く含む果皮を手で取り除こうとすると、べたべたになる
果肉がとれてきれいになったクルミを網の上で焼いたり、フライパンでから煎りしたりすると、殻にかすかな裂け目ができる。そこにマイナスドライバーを差し込んで、こじ開ける。
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食用にする「仁」は、つまようじでほじくり出す
「へえ、こうやって食べるんだあ」
数年前、初めて野生のクルミを食べさせたとき、つまようじでタネをほじくりながら孫が言った。じいちゃんは、えへんとばかりのドヤ顔だ。
割れた殻は接着してひもを付け、ペンダントにした。目と足を付け、人形にしたこともある。殻を捨てるのはもったいないから、何かに利用できれば拾う楽しみが増す。
そのほかに使い道はないかと考え、新たに思いついたのが「クルミのろうそく」だ。殻のへこみにろうを流せば、かわいいろうそくになるだろう。
でも、市販のろうそくを溶かして入れるだけでは、いまひとつ物足りない。
「そうだ。ロウソクゴケで色をつけよう。黄色いクルミろうそくだ!」
ロウソクゴケは地衣類の一種で、とくに珍しくもない。ほんのひと手間加えれば、黄色いろうそくに変身するはずである。
近所の街路樹を見て歩くと、ロウソクゴケはすぐに見つかった。太い幹に、びっしりと。ほんの少しだけ、削らせてもらった。
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これだけあれば、少しぐらいいただいてもいいだろう
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あとは手づくりチョコの要領だ。鍋で湯を沸かし、市販のろうそくと粉状のロウソクゴケを空き缶に入れて湯せんした。はしでかき回すこと数分。黄色っぽく溶けたろうをクルミの殻に流し込んだ。
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ときどきかき回せば、黄色く染まったろうができあがる
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灯芯は、もとの白いろうそくに付いていたものを使った
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もうすぐクリスマス。ことしの聖夜はこれでサンタクロースを迎えるとしよう。
サンタさん、気に入ってくれるといいな。
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