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ライフスタイル本のつもりが働き方の本になっていた(かっこわるい編集後記)

本づくりの裏側には、いつだってドラマがあります。
でも、かっこいいドラマばかりあるわけではありません。
編集者は「作家さんといい本を作りたい」という想いだけ抱いて、愚直に仕事をしています。それは実はあんまり派手ではなくて、もしかしたらちょっとかっこわるく見える部分もあるかもしれません。
でも、本づくりって、けっこうそんなものなのです。

このコーナーでは、そんなかっこわるい部分もお見せした編集後記をお届けしてまいります。
なお、かっこわるさは編集者によって異なりますので、温かい目でお読みください。

第二回は、企画編集部の近藤純さんによる『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(堀内 都喜子)の「かっこわるい編集後記」です。

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<内容紹介>
読者が選ぶビジネス書グランプリ2021 
イノベーション部門賞受賞!
効率よく働くためにもしっかり休むフィンランド人は、仕事も、家庭も、趣味も、勉強も、なんにでも貪欲。でも、睡眠は7時間半以上。やりたいことをやりつつも、「ゆとり」のあるフィンランド流の働き方&生き方の秘訣を紐解きます。

『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』は、2020年の1月に刊行されました。えっ、1年半前に出た本の編集後記なの?と思われたみなさん、はい、わたしもどうなんだ!?と思いました。ですが、このコーナーのタイトルは「かっこわるい編集後記」。もしかしたら、ぴったりかもしれないと自分を納得させ、書いてみたいと思います。

さて、さかのぼること数年前、デンマークのライフスタイルの本が流行っていたこともあり、北欧をテーマに本ができないかなあとぼんやり考えていました。そんなとき、父から一冊の本が送られてきました。

父からは、頼んでもないのに、ときどき本が送られてきます。「なんだ、これ?」と読まない本もあるのですが、その本は、読んでみたら、面白かったのです。それが、この本の著者である堀内都喜子さんのデビュー作『フィンランド 豊かさのメソッド』でした。

当初は、フィンランドのライフスタイルについての本がいいかも、というふんわりした考えのもと、企画を立てました。けれど、しばらく経って、ふとまわりを見回してみると、あれ? デンマークのライフスタイル本は落ち着き、フィンランドのライフスタイルも流行る兆しがないぞ!? ということに気づいたのでした。

というわけで、企画を検討する会議の場では、「働き方改革と言われつつも、なかなか日本では働き方が変わらないので~」などと、したり顔で話した気がしますが、くるっと方向転換して、働き方についての本にすることにしたのです(原稿はぜんぜん進んでいなかったので、あっさり内容を変えることができました……)。

さて、こんなふうに、ふわっと始まった企画ですが、先日うれしいことがありました。読者が選ぶビジネス書グランプリイノベーション部門賞(2021年)を受賞することができたんです。が、これも、同僚のOさんがノミネートしてくれて(この賞は、出版社もノミネートできるそうです)、「受賞しました」というメールで、ノミネートしてくれていたという事実を知る体たらく……。

さて、ここまで読んでくださった方のなかには、フィンランドの働き方ってどんな感じなの? と思われる方もいるかもしれません。まずは、こちらの数字をご覧ください。

有休消化100%、在宅勤務3割(コロナ後は6割)、一人あたりのGDP日本の1.25倍。そう、フィンランド人は、有休をすべて消化します。そしてタイトルにもなったように、午後4時になると、みんなどんどん退社して、残業しないのが当たり前なのだそうです(朝8時に出社する人が多いので、日本よりも朝は早いのですが)。そして、平均睡眠時間は7時間半以上、幸福度ランキングでは、4年連続で世界1位です(ちなみに、2021年、日本は56位でした)。

なんか、羨ましくなりますよね……。国の規模や制度が違うのに、日本で参考になるのか、と思われるかもしれません。

でも、わたしは、原稿を読みながら、さわやかな風が吹いてくるように感じました。というのも、ありきたりな言葉ではあるのですが、わたしが「常識」と思っていたことが、フィンランドではそうではなく、こんな考え方もあるんだ、こんな働き方もあるんだ、と気持ちが軽くなったんです。

堀内さんは、個人のレベルでできそうなことも、たくさん書いてくださっています。わたしは、原稿を読んでから、できるだけメールのCCをしないようにしたり(フィンランドでは、効率よく働くために、あまりCCをしないそうです)、17時に仕事を堂々と終えるようになったり(在宅勤務が増えて、やりやすくなったこともありますが……)、夏休みは2週間とってみるぞ!と思ったりしています(←これはまだ実現していませんが……。ちなみに、フィンランドの夏休みは1カ月が一般的なんだそうです)。

もちろん、フィンランドも、パーフェクトではなく、課題もあり、堀内さんはそのこともちゃんと書いてくださっています。読まれる方によって、感じることも違うと思います。

でも、自分の働き方をあらためて考えるうえで、ヒントになることがひとつ、ふたつぐらいは、きっとあるのではないかなと勝手ながら思っています。働き方が変わると、暮らし方、生き方も変わっていく。ちょっとおおげさかもしれませんが、そんな風にも思います。わたし自身がそうであったように、もしこの本が、どなたかのヒントになることができたら、こんなに嬉しいことはありません。



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