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チームブレストから作る「小説」と、幻のボツ企画案とは――? 『うしろむき夕食店』企画決定の裏側を大公開!

キリンビール公式note×ポプラ社一般書通信×新人作家・冬森灯 
業界を超えた異色のチームが贈る『うしろむき夕食店』プロジェクト、ついにスタートいたします!

ポプラ社一般書通信でもお知らせしてきましたが、
「乾杯の瞬間」「つながる温かな想い」を小説の形で届ける試み「うしろむき夕食店」が、いよいよキリンビール公式noteさんで連載開始となりました。

(▲「うしろむき夕食店」第一話はこちらから)

連載を始めるにあたって、キリンビール公式noteの担当さん、冬森灯さん、ポプラ社の編集者で打ち合わせを重ねてきました。
どんな設定がいいか、盛り込みたいポイントはどれか、絶対に外せない要素はなにか、どんな舞台だったら自分たちが読みたいか――。

まずはざっくばらんに話し合おう!とホワイトボードを書き散らかした結果、色んなキーワードが出ました。

「乾杯」の「喜び」
飲まない人も含めた多様性
土着性
大切な人と乾杯すること
誠実さ
料理のメニューが手書き
レトロ感
食と人がつながる物語
お店のロゴへのこだわり
いろんな人が交わるということ
のれんの綺麗さ=手間をかけているということ

(▲実際にあがったキーワード例)

いつも小説を作る時は、作家さんと編集者で打ち合わせをして作っていきます。
作家さんから書きたいテーマを提示されることもあれば、編集者がお題を出すこともあります。
基本的に二者で膝を突き合わせて詰めていくのですが、今回はキリンビールさんも参加してのブレスト。

キリンビールさんがふっ、と口にした食や飲み物についての言葉から、冬森さんがイメージを膨らませてアイディアを出し、それをポプラ社編集が補強したり……。
会議室でわいわいやっていると思いもつかない言葉も飛び出したりして、異業種だからこその化学反応が起きた気がいたします。

化学反応があったからこそ、その欠片をまとめる責を担った冬森さんは、本当に大変だったと思います。
しかし、冬森さんはそのプレッシャーに負けず、素敵な企画案を出してくれました。

それは、二つありました。

二つ……ということは、片方はボツになった企画です。
本来ならばお蔵入りということで、日の目を見ることはないのですが、せっかくの機会なので幻の企画案を大公開!
ぜひみなさんも二つの企画を見比べてください。

※実際に冬森さんから送られた企画案原文です。

<企画➀>
『贈りもの食堂』 タイトル保留

思わず「アパルトマン」と呼びたくなる、古いビルの中にあるビストロ・カドー。店を営むのはショートカットが素敵な、小柄できびきびと動く年齢不詳の美魔女マダムと自称・フランス人の和顔の青年。
この店を訪れるためには、ひとつだけ条件がある。
それは「誰かからの贈り物の食事であること」。
お祝いや、誕生日や記念日など特別な機会だけでなく、ちょっとしたお礼の機会や、もちろん、日々の食事としても訪れることができるが、食事自体は誰かからの贈り物。 店の名前であるカドー cadeau は、贈り物、という意味。
路地裏の分かりづらい場所にある ビストロ・カドーへの道案内役は、路地の片隅にある珈琲店の老紳士。
古ビルの大家さんでもある彼は、 「ビストロ加藤」「ビストロ・ガトー」など、名前すらあやふやなまま訪れるお客さんたち を案内してくれる。
気張った料理店ではなく、気軽な価格で食事を楽しむことができるが、枠にとらわ
れない自由なカジュアル・フレンチ と 、チャーミングなマダムの気さくな接客に、心からくつろげるような居心地の良いおもてなしを受けることができる。
食事の最後には、マッチ箱に入った贈り主からのメッセージ(スペシャリテ)が、 サーヴされる。
<企画②>
『うしろむき夕食店』

下町のステンドグラスが美しいレトロモダンな洋風建築の建物「うしろむき夕食店」。
町のひとたちが、第二の自宅のような気分で気さくに訪れる。
はじめてのお客さんも「おかえりなさい」と迎え入れ、出るときには「いってらっしゃい」と送り出してくれるのは、うしろ= 昔をなつかしみ愛す、 懐が広く時に厳しい元芸者の おばあちゃんと、 銘仙などのカジュアル着物マニアでおっちょこちょいの孫娘。おばあちゃんのその日の気分で決められる献立は、和食も洋食もそのときどきで異な る 家庭の夕食みたいなおおらかであたたかい、なつかしい食事ばかり。
毎日のように店に通うお客さんも、はじめて立ち寄るお客さんも、同じようにくつろいで過ごすことができ、女性の一人客の姿もちらほら。晩酌気分でお酒やビール、リキュールを楽しむ人も、カフェ気分で孫娘考案の飲み物を 楽しむ人も。お店の名物は、「料理 おみくじ」。
もともと、メニューを決めきれない優柔不断なお客さん向けに、料理の書かれたおみくじを用意したのだが、偶然まかせがかえって楽しいと人気が出て、おみくじ を目当て に訪れるお客さんもいる。
時には、おみくじが示したなつかしい 食べものが、食べたひとの 過去の思い出(=うし ろ をよびさまし、今の悩みにヒントを与え、明日への一歩を踏み出すちからをくれる。


いかがでしょうか。

どちらも魅力的な企画で、たいへん悩みました。

ふたたびチームで議論しましたが、
「うしろむき夕食店」というタイトルが素敵でドラマが広がってくること。
「料理おみくじ」という設定もとても楽しそうで、キャラクターが生き生きしていること。

などが決め手となり、満場一致で「うしろむき夕食店」と決まりました。

「贈り物食堂」も優しさに満ちた企画でオシャレなお店が目に浮かび、とても訪れてみたいのですが、またいつかの機会に……。

こうして企画が決定した『うしろむき夕食店』ですが、小説を書く前にもう一つ過程があります。
それは「プロット」です。

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(実際のプロット。お披露目の日も近い…かも?)


「プロット」とは小説の設計図のようなもので、話が具体的にどう展開していくのか、大まかな流れを把握するために作ります。
ぜひプロットもお見せしたいのですがネタバレになってしまうので、小説が公開された後にお披露目できればいいな、と思っています。

ついにスタートする「うしろむき夕食店」
はてさて、いっぷう変わった料理店を舞台に、どんなドラマが繰り広げられるのか――。


小説「うしろむき夕食店」はキリンビール公式noteで連載中です。
ぜひ、お楽しみください!


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